米FileMaker社長、「表計算ユーザーにFileMakerのよさを伝えたい」


米FileMaker社長のドミニク・グピール氏(左)とファイルメーカー代表取締役社長の石井元氏(右)

 ファイルメーカーの日本法人社長に、3月30日付けで石井元氏が就任した。「日本法人には日本人の社長が必要。最適な人材が見つかった」と、米FileMaker社長のドミニク・グピール氏が語れば、石井新社長も、「日本には、ファイルメーカーの製品の素晴らしさを知らない人がまだ多い。市場拡大のチャンスは大きい」として、事業拡大に意欲をみせる。今後、日本において、ファイルメーカーの存在感を高める施策が相次ぐことになりそうだ。

 一方、同社は、4月7日からFileMaker Pro 11日本語版を発売。新製品では、グラフ機能の強化やコラボレーション機能の強化、新たに搭載したクイックレポート機能などの特徴を訴求する。「やりたいと思ったことをすべて詰め込んだ製品。満足してもらえる製品に仕上がった」とグピール社長も自信をみせる。グピール社長、石井社長に話を聞いた。


ファイルメーカーの存在感をさらに高めていく

―3月30日にファイルメーカー日本法人の社長に石井元氏が就任しました。グピール社長は、石井新社長にどんなことを期待しますか。

米FileMaker社長のドミニク・グピール氏

グピール氏
 日本法人のトップは、やはり日本のことを熟知した日本人が務めるのが最適だと考えています。日本の市場は、ファイルメーカーにとっても全売上高の20%の規模を誇る重要な市場です。石井新社長には、これまでのIT産業における経験を生かしてもらい、日本において、ファイルメーカーの存在感をさらに高めてもらいたい。石井社長は思慮深く、いいリスナーでもある。また、短期間に多くのことを学ぶことができる人材であり、それを経営に生かしてくれると信じています。


―どうやって石井氏を口説いたのですか(笑)。

グピール氏
 いや、最終的には石井氏の判断に委ねました。私からは、ファイルメーカーにおける日本市場の重要性などについて説明し、それを理解してもらった。変革するにはどうするのか、次のフォーカスをどうするのか、一緒に考えていきたい。


―石井社長は、ファイルメーカーのどこに魅力を感じたのですか。

石井氏
 ファイルメーカーの成長やビジネスチャンスの大きさに魅力を感じました。また、明るい社風であることも大変気に入りました。着任する直前に、米国本社を訪れたときが、ちょうど金曜日の夕方で、社員が集まって、ピザとビールでパーティーをしていた。そこで普段顔をあわせることがない開発者とマーケティング担当者、あるいは経営陣とが情報交換を行うというシーンを見ることができた。こういう風土も大変気に入りました。


―社長着任直前にあったグピール社長は、「ビール片手に」ということですか(笑)。

石井氏
 そういうことになりますね(笑)。

グピール氏
 ちゃんと節度を持ち、コントロールされた環境下でのパーティーですから(笑)。

石井氏
 実は、正直なところ、前職の仕事も楽しくて、離れがたいところがあった。だが、この誘いを断ったら、一生後悔するだろうなという気持ちが一方でありました。それだけファイルメーカーという会社に魅力を感じました。


―昨年9月からの半年間、日本人社長が不在の状況が続きました。この状況はどんな影響がありましたか。

グピール氏
 強い体質が構築されていましたから、半年間という期間であれば、ビジネス上の問題はなかったと考えています。

 昨年10月には、日本では初めてとなるユーザーカンファレンス「FileMaker Conference 2009」を開催し、500人以上のユーザー、開発者が参加しました。この場で多くの日本のユーザーおよび開発者が相互に情報交換を行えたことは、大きな成果だったといえます。

 また、その間、兼務で日本法人社長を務めたエプリング氏は、CFOでもあり、経営の観点から多くの経験を持っており、またグローバルの経験もありますから、日本のチームに対して、短期間ながらも新たな視点で考えること、グローバルの感覚を強く取り入れることなどのメリットを及ぼしたのではないでしょうか。


―石井社長は、3月30日に日本法人社長に就任してから、まずどんなことやりましたか。

ファイルメーカー代表取締役社長の石井元氏

石井氏
 最初の1週間は日本法人の社員全員と個別に面談をする時間をとりました。一人あたり1時間から1時間半の時間を費やし、ファイルメーカーという会社をどうすべきか、どうやって新たな製品を広げていくかといった意見を聞いた。

 感じたのは、ファイルメーカーの社員は明るくて、まじめな人が多い。また外資系企業には珍しく、長年、ファイルメーカーに勤務している社員が多く、プロフェッショナルが多い。その点では大変心強く思いました。また、社員の言葉を通じて、ファイルメーカーにはコアなファンがいること、ファイルメーカーが好きで、長年にわたり開発をしているパートナーがいることをあらためて感じました。


―社長第一声として、社員に対しては、どんなことをいいましたか。

石井氏
 これは私のモットーでもあるのですが、コミュニケーションを重視する経営をしていきたいということを話しました。

 まず、社員と1対1の面談を行ったのも、その姿勢の表れととっていただいて結構です。私は、一人ではなにもできないと考えています。組織として力を発揮することが成長への近道であり、そのためにコミュニケーションを重視することが必要です。

 そして、その一方で、日本法人の責任は私がすべて取る。そうしないと、社員が安心して力を発揮できない。コミュニケーションを通じて生まれる関係をもとに、自由に力を発揮してもらう環境をつくるのが私の役割であり、そこに私の経営手法があるといえます。


―これからどんなことに取り組みますか。

石井氏
 就任第2週目には、新製品のFileMaker Pro 11が日本で発売になりましたから、そのための活動に力を注ぎました。そして、その翌週にはパートナーを訪問したいと考えています。最初の1カ月は、とにかく会社の内外をしっかりと理解することに時間を費やしたいですね。社員ひとりひとりの能力を知り、組織としてどんな力を発揮できるのかを知りたい。

 その後の2カ月で会社がどの方向にいくべきかを考え、本社との合意の上で、日本で具体的な事業拡大に向けた活動に乗り出したい。ファイルメーカーのユーザーやパートナーに対して、どんなことができるのかを真剣に考え、うまく行っていることは、さらにその仕組みを大きくすることに力を注ぎたいと考えています。

 ファイルメーカーの製品には大きなポテンシャルがありますし、日本においても、まだまだ多くの人に使ってもらえる製品であると感じています。名前を知らないという人もいますし、FileMakerの素晴らしさを知らない人もいる。私も経験があるのですが、営業などの現場では、基幹データを入手したあとに、自分が使いやすいように表計算ソフトでデータを置き換えて作業をしている例が多い。

 私は、かつて、5000件の顧客を営業マンそれぞれにアサインするための作業をしたことがある。これが大変な作業だった。そのときFileMakerを知っていれば、そんなに苦労しなかったのにという思いもあります。こうした経験からも、FileMakerを多くの人に知っていただきたいと思います。

 認知度を高めていくには、まずは草の根的な活動が必要でしょう。昨年秋に開催した「FileMaker Conference」は、今年もぜひ開催したいと考えていますし、FileMaker Pro 11の発売にあわせて、全国5カ所のセミナーも開催するといった取り組みも行います。いまはスプレッドシートしか使っていない人に対して、データベースのイメージを再定義し、日本において、多くの顧客に対してリーチできる環境を作りたいと考えています。


高機能・高性能と使い勝手の良さを両立した「FileMaker Pro 11」


―FileMaker Pro 11が、いよいよ発売になりました。今回の製品に対する満足度はどうですか。

グピール氏
 搭載したいと考えた機能はすべて搭載できましたし、それでいて、初めてFileMakerを使用する人にとっても使いやすい操作環境を実現でき、高機能、高性能と使い勝手の良さを両立できたと考えています。

 すでに米国では発売から1カ月が経過していますが、グラフ作成機能は、従来から求められていたものであり、これに対する評価は高いものがあります。また、新たに搭載したクイックレポート機能は、スプレッドシートのような形式で簡易にレポートを作成することができ、これも利用者の間からの評価が高い。さらに、クイック検索機能もユニークなものであり、ビジネスシーンでの活用をより進化させることができた。

 初心者には優しく、簡単にといった機能を提供する一方、プロフェッショナルに対してはよりパワフルな機能を提供できる製品に進化したといえます。使いやすさとパワーを両立したソフトウェアがFileMaker Pro 11なのです。これらの新たな機能の追加や改良については、ユーザーからの声、パートナーからの声、社内の意見を集めて、取り組みました。私はフランス人ですが、フランスの小学校などでは20点満点で評価することが多い。あえて点数をつけるとすれば18点でしょうか。


―18点という点数はどうしてですか。

グピール氏
 20点満点といっても、15点以上は優秀なレベルで、18点以上というのはほぼ獲得するのが難しい、不可能に近い点数です。平均点は、10点~11点といったところです。これを当てはめれば、18点というのは極めて優秀な点数です。米国では、ある専門誌がFileMaker Pro 11に対する評価を、5点中4.5点という採点をしました。この点数から逆算しても、18点というのが妥当なのではないでしょうか(笑)。


―特に、日本のユーザーに勧めたい機能はありますか。

グピール氏
 グラフ機能の強化は、世界的にも高い評価が集まると考えていますが、ここに搭載したカラーコーディネーション機能はぜひ使っていただきたい。日本のユーザーは、グラフの見栄えなどにかなりこだわりますから、その良さがわかっていただけるはずです。

 私は、FileMaker Pro 11を多くの人につかってもらいたい。特にこれまでスプレッドシートを使っていたユーザーに、FileMaker Pro 11を体験していただき、その良さを知っていただきたい。また、多くの人に使っていただくだけでなく、使っていただく頻度も増やしてもらいたい。デベロッパーにも、FileMaker Pro 11の良さを、さらに語っていただけるような製品になったと考えています。FileMaker Pro 11は、これまでで最高のソフトウェアに仕上がっています。

 米フォーチュン上位100社のうち70社がFileMakerの導入実績を持ち、年間100万本の出荷を記録するパーソナルデータベースとして、さらに進化したFileMaker Pro 11は、初心者からプロフェッショナルまでの幅広い要求に応えることができた製品だといえます。





(大河原 克行)

2010/4/23 00:00