Windows 7ベースの最新組み込みOS「Windows Embedded Standard 7」

Media Centerを新搭載、デジタルサイネージへの展開を強化


マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティングマネージャの松岡正人氏

 マイクロソフト株式会社は5月7日、組み込み機器向けOSの最新バージョン「Windows Embedded Standard 7」を6月1日より提供開始すると発表した。この発表に合わせて、組み込み市場における戦略について記者説明会を開催した。


Windows 7をベースに、Media Center機能も新搭載

 「Windows Embedded Standard 7」は、Windows 7のテクノロジーを備えており、高度にカスタマイズできるコンポーネント化された形態で、組み込み機器の開発・製造ベンダー向けに提供される。これにより、OEMメーカーは、エンタープライズ向けのシンクライアントやデジタルサイネージ、産業用制御システム、コンシューマ向けのセットトップボックスやインターネット接続端末、デジタルテレビなどの組み込み機器上で、Windows 7 OSと同等の性能や親和性、信頼性を実現できるとともに、Windows搭載PCやサーバー、オンラインサービスとの接続性を強化することができる。

 特に今回の最新バージョンでは、Windows Media Center機能を新たに搭載しており、インターネットやテレビ放送、ソーシャルメディア型ポータルやパーソナルフォトライブラリ、音楽や動画など様々なソースのマルチメディアコンテンツを家庭内のメディアセンターに統合し、Windows搭載PCや各組み込み機器の間で簡単に情報共有することが可能となる。


エンタープライズ領域では、デジタルサイネージへの展開を強化


エンタープライズ領域での展開

 同社では、「Windows Embedded Standard 7」の事業戦略として、エンタープライズとコンシューマの2つの領域をターゲットに市場拡大を進めていく方針。まず、エンタープライズ領域への展開について、OEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティングマネージャの松岡正人氏は、「エンタープライズ領域では、小型端末からキオスク端末、大型のデジタルサイネージまで、幅広いバリエーションの端末にWindowsテクノロジーを組み込むプラットフォームとして提供している。すでに多くの組み込み端末に採用されている実績をもつが、今後はリテール分野で急速に普及が進んでいるデジタルサイネージへの展開を強化していく」と説明する。

 今年1月には、インテルと共同でデジタルサイネージの新たなコンセプトを発表しており、「われわれは、情報を流すだけの端末と、ユーザーとの相互作用が発生する端末を融合したものが本来のデジタルサイネージだと考えている。そして、これを実現するプラットフォームとなるのがWindows Embedded Standard 7であり、顧客に最適なコンテンツをオンライン配信するなど、デジタルサイネージに新しい価値をもたらすことができる。今後、さまざまなイベントやセミナーを通して、リテール分野に向けて新コンセプトのデジタルサイネージを積極的に提案し、新たな市場の創出を目指す」(松岡氏)と意欲を見せている。


コンシューマ領域では、Media Center搭載によるメリットを


コンシューマ領域での展開

 一方、コンシューマ領域については、「海外を中心に携帯端末やゲーム機など幅広い組み込み機器で採用されているが、日本ではセットトップボックスやカーナビで使われていることが多い。Windows Embedded Standard 7では、Windows Media Center機能の搭載によって、PCの機能を組み合わせた今までにないセットトップボックスが実現可能となり、コンシューマ領域においても、さらなる市場拡大が見込める」としている。

 その背景として、「たとえば、PCで利用しているInternet Explorer 8やWindows Media Player 12などの機能の一部を切り出して、セットトップボックスやHDDレコーダーで利用することも可能になる。これによって、PCでは使えるが、セットトップボックスでは使えないという機能がなくなるため、特にサービスプロバイダにとっては大きなメリットになるはずだ」と述べている。

 また、松岡氏は、Windows Embeddedパートナープログラムの取り組みについても触れ、「パートナーは、組み込み製品を開発を支援するための各種サービス、ミドルウェア、アプリケーション、トレーニングを提供している。現在、世界では800社近くまでパートナーが拡大しており、日本でも70社近くに達している。今後も、パートナーとの連携を強化することで、組込製品開発のリスク低減、開発期間の短縮を図っていく」との考えを示した。

Windows Embeddedの製品ラインアップWindows Embeddedの製品ロードマップ

 なお、今後のWindows Embeddedの製品ロードマップとして、今年末にWindows CEの次期バージョンとなる「Windows Embedded Automotive 7」と「Windows Embedded Compact 7」をリリースすることもあわせて発表された。




(唐沢 正和)

2010/5/7 17:46