日立の2010年度連結決算、前年より大幅に改善も1069億円の最終赤字

2011年度は営業利益68%増で最終黒字を見込む

 株式会社日立製作所(日立)は5月11日、2009年度通期(2010年3月期)の連結決算を発表した。売上高は前年比10%減の8兆9685億円、営業利益は前年比59%増の2021億円、税引き前純利益は、前年の2898億円の赤字から3534億円改善した635億円の黒字に、純損失は前年の7873億円の赤字から6803億円改善したものの、依然として1069億円の赤字となっている。

連結損益計算書決算のポイント

 部門別では、情報・通信システムの売上高は前年比12%減の1兆7055億円、営業利益は前年から438億円減の945億円と減収減益。

 そのうち、ソフトウェア/サービスの売上高が前年比11%減の1兆1396億円、営業利益が同28%減の771億円。内訳はソフトウェアの売上高が同6%減の1526億円、サービスの売上高が同12%減の9870億円。国内景気の低迷によるIT投資抑制などの影響を受け、減収になった。営業利益では、ソフトウェアが堅調に推移したものの、サービスが売上高の減少に伴って前年を下回ったことから、全体としては減益になっている。

 一方、ハードウェアは、売上高が前年比14%減の5658億円、営業利益は同45%減の173億円となった。このうちストレージの売上高は、前年比11%減の3040億円。

 HDDが含まれるコンポーネント・デバイスは、売上高が前年比23%減の7548億円、営業利益は46億円減の11億円。HDDは、売上高が前年比21%減の4517億円、営業利益が122億円減の92億円と、IT投資抑制の影響を受けて減収・減益となったほか、携帯電話やゲーム機器向けのディスプレイも減収となっている。

情報・通信システム部門の実績コンポーネント・デバイス部門の実績

 デジタルメディア・民生機器の売上高は前年比16%減の9292億円、営業損失は事業構造改革の進ちょくにより1033億円改善したが、72億円の赤字が残った。薄型テレビでの、パネルの外部調達への切り替えや海外販売チャネルの絞り込み、人員規模の適正化といった、事業構造改革が効果を発揮したほか、光ディスクドライブ関連製品が増益となって、営業損益は改善し、2009年7~9月期以降は黒字化しているという。

 電子装置・システムは、前年比2%増の9986億円、営業損益は309億円悪化して52億円の赤字。日立国際電気と日立工機の連結子会社化によって増収となったが、日立ハイテクノロジーズ、日立メディコ、日立工機は減益という。

 これら以外の各部門の業績では、電力システムの売上高は前年比2%増の8821億円、営業利益は185億円増の220億円。社会・産業システムは、売上高が前年比6%減の1兆2502億円、営業利益は76億円増の420億円。建設機械は、売上高が前年比19%減の5836億円、営業利益が336億円減の176億円。

 高機能材料は、売上高が前年比20%減の1兆2493億円、営業利益が191億円増の444億円。オートモーティブシステムは、売上高が前年比6%減の6388億円、営業損失は前年より550億円改善したが54億円の赤字。金融サービスは、売上高が前年比5%増の4196億円、営業利益は18億円増の85億円となった。

部門別の売上高部門別の営業損益
執行役副社長の三好崇司氏

 こうした部門別の状況について、同社 執行役副社長の三好崇司氏は、「おしなべて厳しい状況で、実質的には電力システム部門のみが増収。ただし、まだ赤字が残っているものの、構造改革、原価低減などを推し進め、オートモーティブ、デジタル民生機器では前年に比べて大きく改善した」とコメント。全社において、固定費は3300億円の削減、資材調達費は3100億円の削減を実現しており、それぞれ目標から、200億円、100億円の積み増しを達成しているという。

 なお、国内売上高は前年比9%減の5兆3137億円、海外売上高は同12%減の3兆6547億円。海外では北米が前年比19%減の7296億円、アジアが同11%減の1兆6990億円、欧州が同9%減の8246億円、その他の地域が同5%減の4012億円と、いずれの地域も前年を下回った。



2010年度は増収増益で黒字化を見込む、純利益は1300億円を計画

 また日立では、あわせて、2010年度の業績見通しを発表している。

2010年度連結業績の見通し

 2010年度の売上高は、前年比3%増の9兆2000億円、営業利益は同68%増の3400億円、税引き前純利益は2514億円改善した3150億円の黒字、当期純利益は2369億円改善し、1300億円の黒字化を見込む。三好氏は、「事業売却や大きな赤字が減ったことで、税引き前純利益3150億円を確保。純利益も1300億円の黒字化を計画する」とした。

 各部門別では、情報通信システムの売上高は前年比1%増の1兆7300億円、営業利益は54億円増の1000億円。情報通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高が同2%増の1兆1600億円、営業利益は49億円増の820億円。ハードウェアは売上高は同1%増の5700億円、営業利益は7億円増の180億円を想定する。

 「2010年度は足元も厳しいが、後半から少し増収を見込んでいる。ストレージ、コンサルティング、データセンターの各事業を軸としたグローバル事業の展開や、クラウドにおけるソリューションメニュー拡充を図るほか、日立ソフトと日立システムの統合による開発力の強化、特に中堅企業向け事業の強化を目指す」(三好氏)とした。

 コンポーネント・デバイスでは、売上高が前年比15%増の8700億円、営業利益が528億円増の540億円と、大幅な増収増益を見込む。これは、特にHDD事業における市況の回復、コスト削減効果などが見込めるためで、三好氏は「サプライチェーンの改善、プロダクトミックスの最適化といった収益の向上、コスト削減につながる施策を引き続き行うほか、売り上げの拡大に向けた設備投資も行っていく」と述べた。

 電力システムは、売上高がほぼ前年並みの8800億円、営業利益が69億円増の290億円。社会・産業システムは、売上高が前年比13%減の1兆900億円、営業利益が50億円減の370億円。電子装置・システムは前年比7%増の1兆700億円、営業利益が332億円改善して280億円の黒字。建設機械は、売上高が前年比23%増の7200億円、営業利益が173億円増の350億円。

 高機能材料は、売上高が前年比12%増の1兆4000億円、営業利益は375億円増の820億円。オートモティブシステムは、売上高が前年比6%増の6800億円、営業利益が224億円改善して170億円の黒字。デジタルメディア・民生機器は、売上高が前年比1%減の9200億円、営業利益が142億円改善して70億円の黒字。金融サービスの売上高が、前年比14%減の3600億円、営業利益が64億円増の150億円を、それぞれ見込んでいる。

 「社会産業システムは、設備投資が厳しい状況にあること、また車両の需要が端境期に入ることで減収の想定だが、それ以外は増収を計画している。特に、エレクトロニクス関係、自動車関係、建設機械は、足元も非常に良くなっており、増収が見込めるだろう。また全体としては、社会イノベーション事業を中心にグローバル事業をやっていく。新興国への展開にあたっては、新興国の企業との競争も激化するため、さらなるコスト競争力の向上にも努力したい」(三好氏)。

部門別売上高の見通し部門別営業利益の見通し



(石井 一志)

2010/5/12 00:00