Red Hat Enterprise Virtualization 2.2は「あと2週間で登場」


 米Red Hatから、セールス部門プレジデントのアレックス・ピンチェフ氏と、プロダクト部門プレジデントのポール・コーミア氏と、両部門トップが来日し、日本法人であるレッドハット株式会社が5月13日に記者説明会を開催した。

 説明会では、クラウド分野でRed Hatの技術が多く使われていることが語られ、Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)次期バージョン2.2についても言及された。

 

 

「Red HatはIaaSもPaaSもサポートする」

米Red Hatセールス部門プレジデントのアレックス・ピンチェフ氏

 ピンチェフ氏は、Red Hatの好調の成績を上げつつ、「なぜクラウドでRed Hatが採用されるのか」について語った。

 まず、Red Hatが不況下でも成長を続けているというデータを上げ、特に日本ではソフトウェア産業の成長率が5.1%のところ、Red Hatの成長率が58.5%と著しいという数字を紹介した。

 それを受けて「オープンソースビジネスは誰でも参入できるが、重要なのは顧客に付加価値を与えること」と語り、実例として東京証券取引所のアローヘッドなどのミッションクリティカル分野で導入が進んでいる例を紹介した。そうした中で、Red HatがLinuxのOSだけではなく、仮想化技術KVMやミドルウェアJBoss、管理技術などを統合的に持ち「インフラのソリューションを提供する会社になってきている」と説明した。

 これがRed Hatがクラウドで使われる理由だ、とピンチェフ氏は言う。ピンチェフ氏によると、クラウドでいうIaaS(Infrastructure as a Service)はつまり仮想化であり、PaaS(Platform as a Service)はつまりミドルウェアである。Red Hatはこの両分野をサポートし、クラウドという言葉のなかった2003年から「Any Application, Anywhere, Anytime」(すべてのアプリケーションに、どこでも、いつでも)という「これこそクラウド」というメッセージを掲げてきた、とピンチェフ氏は述べた。

サブスクリプション数と国別の成長率IaaSとPaaSとRed Hat

 

 

「クラウドまでの段階をサポートするのはRed Hatだけ」

米RedHatプロダクト部門プレジデントのポール・コーミア氏

 コーミア氏は「Unlocking the value of the cloud」と題し、社内の物理インフラからプライベートクラウド、パブリッククラウドまで、シームレスに使えるソリューションが重要だと語った。また、管理技術を含むRed Hat Enterise Virtualizationの新版についても説明した。

 コーミア氏は、アプリケーションをクラウド化するステップを3つの段階に分けて説明する。まず第1段階はサーバーを仮想化して柔軟性や統合化を進める「Consolidate」。これを十分にサポートするのはRed HatとVMware、マイクロソフトの3社のみだとコーミア氏はいう。

 第2段階は、プライベートクラウドを構築してスケーラビリティや自動化を進める「Automate」。ここで、PaaSを実現するのに十分なミドルウェアを持たないVMwareが条件から外れるとコーミア氏は語る。

 第3段階はパブリッククラウドを利用する「Utility」。ここで、自社のプラットフォームのみをサポートするマイクロソフトが条件から外れるとコーミア氏は述べる。そして、顧客にとっては物理的な環境からクラウドまでアプリケーションを書き直すことなくシームレスに利用できることが重要であり、これをサポートするのはRed Hatだけだと主張した。

 管理技術も重要だ。Red Hatの仮想化プラットフォームRHEVは、新バージョンを「あと2週間でリリースする(日本ではそれより後)」とのことで、仮想デスクトップ(VDT)のサポートも含まれる。

 また、Amazon EC2をはじめクラウド事業者はそれぞれ独自のインターフェイスを持つが、それに対しインターフェイスを変換する「Cloud Engine」技術が開発中であることが明かされた。なお、Red Hat Summit 2009で、クラウドの違いを抽象化する「Deltacloudプロジェクト」が発表されている。

 最後に、顧客にもISVパートナーにもシステム簡略化を進めて「管理する能力を提供する」のがRed Hatの戦略だとまとめた。

クラウドへの3段階パブリッククラウドとRed Hatの関係

(高橋 正和)

2010/5/14 06:00