LPI-Japan、「Linuxサーバー構築標準教科書」を無償公開


LPI-Japan理事長の成井 弦氏

 Linux技術者認定機関のNPO(特定非営利活動)法人LPI-Japan(エルピーアイジャパン、Linux Professional Institure Japan)は、教育機関向けにLinuxサーバー構築のための教科書「Linuxサーバー構築標準教科書(Ver1.0.1)」を制作。6月22日、クリエイティブ・コモンズライセンスにより無償公開する。

 「Linuxサーバー構築標準教科書(Ver1.0.1)」は、LPI-Japanサイトで簡単なアンケートに入力することで無償ダウンロードが可能となる。また、希望があれば、製本した冊子も1冊1200円で提供する。

 LPI-Japanでは、2008年にLPI-Japanの認定試験である、LPICレベル1の内容を総合的に勉強できる教材として「Linux標準教科書」を公開。今回の「Linuxサーバー構築標準教科書」は、LPICレベル2の内容に対応する教科書となる。LPI-Japanの認定試験はレベル1、レベル2、レベル3とあるが、レベル3については今後の要望などを見て、標準教科書を制作するかどうか決めるという。

 今回公開された「Linuxサーバー構築標準教科書」はサーバー構築がテーマのため、指導者が1人、学習者は2人いて、それぞれがサーバーを構築し、2台のサーバー間でデータ通信を行うという内容になっている。履修時間は12時間を想定。大学の授業であれば、1コマ90分で8コマで修了することを想定している。

 LPI-Japanでは、「多くの教育機関からの要望にこたえて、Linuxのサーバー構築技術を基礎から学習するための教材として開発した」という。LPIC受験ではかなり広範な知識を要求されるが、そうした知識を総合的に学ぶ教材として作られている。ただし、「LPIC受験のための問答集のような内容は含まれていないため、そうした教材については市販のものを利用してほしい」としている。

 2008年に公開した「Linux標準教科書」のダウンロード数は30421件(冊子での頒布数は含まず)。ダウンロード時のアンケート結果の集計によれば、業種は、「ソフトウェア企画・設計・開発」23%、「情報システムの保守・運用管理」16%、「コンピュータシステム企画・設計・開発」12%の順で、ソフトウェアおよびハードウェアに関わる現場の技術者が非常に多くなっている。大学生によるダウンロード数は3329件で、大学別に見ると、東京大学、つくば大学、京都大学、東京工業大学、慶應義塾大学の順で利用が多かった。

 発表会で、LPI-Japan理事長の成井 弦氏は、「オープンソースの教育で重要なのは、能動的に自分から行動する技術者を育てることだと思っている。これまでは、言われたことをやるという受動的な開発スタイルがメインだった。技術者はオープンソースの中に首を突っ込まないと能動的に動くということが、実感としてわからないのではないか」として、技術者の多くが受託開発スタイルに慣れている現状を変えていくためにオープンソースに触れる必要性を述べた。

 また成井氏は、「LPI-Japanでは、無料の上に実現する有料のビジネス(FEE ON FREE)というのをキーワードにしている。いまのビジネスというのは無料の検索エンジン、無料のAPIなど無料のサービスの上に有料のビジネスを構築している。Androidになると、OSまで無料で配布される。オープンソースに首を突っ込んでいると、こうしたパラダイムシフトが、実感として理解できる。技術者が理解すると、その技術者の所属する企業も、いまの時代にマッチしたビジネスが展開できるのではないか」と述べた。

 なお、「Linux構築標準教科書」および「Linuxサーバー標準教科書」は、誰でも参加できるWikiサイトとメーリングリストによってフィードバックおよび改訂が行われている。


(工藤 ひろえ)

2009/6/19 16:11