いよいよビジネスの年に! 収益化に動くTwitter


 世界中でマイクロブログブームを巻き起こしたTwitterは、サービス開始から3年半たった今も収益モデルを確立していない。だが、ここに来て、この巨大なサービスをマネタイズしようとする動きが目立っている。1800万とも2500万ともいわれるユーザーを抱えるTwitterの次の戦略は――。

 Twitterは3月1日の公式ブログで、「FireHose」と呼ぶ“フルフィード”の提供を拡大すると発表した。これまでFireHoseの提供を受けているのは、昨年10月に発表したGoogleとBing(Microsoft)、それに今年2月に発表したYahoo!という大手検索サービスに限られていた。

 今回、提携したのは、Ellerdale、Collecta、Kosmix、Scoopler、twazzup、CrowdEye、Chainn Searchの7社。Twitterをベースにしたリアルタイム検索の小さなベンチャーが名を連ねている。Twitterは、さらにこうしたパートナーを拡大していく考えだ。

 FireHoseとは、更新情報をクライアントに送り出すサービスの一つである。Twitterは、一度接続したクライアントに継続的に情報を流す「Streaming API」というAPIを持っている(2010年1月正式版開始)。Streaming APIではTweet(つぶやき)の投稿データを無料公開しており、これを利用したアプリケーションは現在5万種類を超えるという。

 ただし、通常、Streaming APIを通じて公開している情報は、検索データなどをフィルタリングしたあとの一部に限られている。これに対してFirehouseは、制限なしでデータを提供し、パートナーは全投稿の関連情報にアクセスできるようになる。FireHose(消火ホース)という名前は、非常に大量のデータが流れてくるのが、高水圧の消火ホースに似ていることからついた名という。

 サードパーティのサービスが、Firehouseの提供を受ければ、例えば、Tweetの本格的なリアルタイム検索などが可能になる。検索サービスで争っているMicrosoftとGoogleがいち早く、Firehouseの提供を受けたのは、このためだ。

 そして、MicrosoftとGoogleとの提携が、Twitterにとっての初の大きな売り上げをもたらした。BusinessWeek誌が昨年12月に伝えたところによると、Googleからは約1500万ドル、Microsoftからは約1000ドルの計2500万ドルを得たという。

 一方、Yahoo!との契約は、Tweetのリアルタイム検索に加え、Yahoo!のサービスとの統合が盛り込まれており、内容的にも額的にも先の2社とは異なる。今回のベンチャー7社へのFirehouse提供も、それぞれの規模に合わせた条件でライセンスするとしており、契約額は公表していない。だがTwitterが、こうしたパートナーを増やすことで収益を上げようとしているのは間違いない。

 登録も利用も完全無料、広告でまかなっているのでもないTwitterが、どういうビジネスモデルをとるのかは、ずっと関心を集めてきた。

 同社は2009年1月13日に「It's Business Time!」というタイトルのブログで、サービスの収益化を宣言したが、その後も具体的なプランは示していない。さまざまな憶測が出る中で、11月には日本発で「サービス有料化」のニュースが流れ、日本向けサービスを担当するデジタルガレージが、あわてて否定するという騒ぎもあった。

 だが最近になって、Twitterの自社広告プラットフォームの開発が進んでいることがはっきりしてきた。

 今年2月下旬、ネット広告業界団体Interactive Advertising Bureau (IAB)の年次ミーティングで開かれたパネルディスカッションでは、「われわれは広告プラットフォームに取り組んでいる。ただし、まだテストフェーズにすぎない」(Twitterのプロダクトマネジメント&マネタイゼーション責任者のAnamitra Banerji氏)という発言も出ている。

 Banerji氏は、新広告プラットフォームについて、多くを語らなかったが、All Things Digitalが関係者から入手した情報によると、1)Twitter検索結果へのキーワードと関連する広告の表示、2)広告フォーマットはTweetと同じ140文字以内、3)Twitter自身が代理店業務を行う、というものだという。つまり、GoogleのAdSenseのようなシステムということになる。

 この広告プラットフォームについて、All Things Digitalは、いくつかの疑問を投げかけている。すなわち、「広告主はGoogleのようなCPC(Cost per Click)で広告を買うのだろうか?」「Twitter検索は人気はあるが、かなり未成熟。ユーザー向けに洗練されたものにできるのか?」「Twitterは自社のユーザーについて、Googleのようにデータを持ってはいない。ターゲティングを有効にするためのデータをどう集めるのか?」などなど。Twitterが広告で成功するには、多くの課題がありそうだ。

 一方、気になる数字もある。HubSpotはユーザー数の伸びが急速に鈍化していると報告している。同社のレポートによると、2009年3月のピーク時で13%増という驚異的な成長を見せていたユーザー数が、10月には3.5%増までペースダウンしている。爆発的にユーザーを増やしてきたTwitterにも、ついに頭打ちの時が来たようだ。

 ただし、このレポートでは同時に、平均アクティブユーザーが増加していることも指摘している。昨年7月と今年1月のユーザーの利用状況の比較では、平均フォロー数が47から172に、平均フォロワー数が70から300に、平均総Tweet数が119から420へと増えていた。個々のユーザーが、よりTwitterを活用するようになったことを示しているのだ。

 Twitterのサービスは新しいフェーズに入った。同時に、どうビジネス化するかがいや応なしに迫っている。



(行宮 翔太=Infostand)

2010/3/8/ 09:10