iPhone対抗馬の本命? 新世代Android端末「Droid」


 Androidを搭載した最新スマートフォン「Droid」が好調なようだ。MotorolaとVerizon Wirelessが投入した年末商戦の重要商品で、新バージョンのAndroidを搭載し、デザイン的にも従来のAndroidスマートフォンよりあか抜けてきた印象だ。スマートフォンの分野で依然強い支持を得ているiPhoneへの挑戦で、どこまで伸長するかに注目が集まっている。

 Droidは、昨年10月にT-Mobile USAが発売したAndroid第1号機「G1」(台湾HTC製)から約1年で登場した新世代端末だ。大きさは、iPhoneとほぼ同じで、幅がやや狭い60ミリ、厚みが少し厚い13.7ミリ、重さが34グラム重い169グラムとなっている。ハード的には、ディスプレイ部をスライドさせると現れるQWERTY配列の物理キーボードや、動画に対応した500万画素カメラを備える。

 スマートフォンの最重要コンポーネントである液晶ディスプレイのサイズは3.7インチで、iPhone(3.5インチ)とあまり変わらないが、解像度はFWVGA(854×480)で、iPhone(480×320)の2倍以上ある。マルチタッチ操作に対応し、指で機能メニュー操作や入力、ブラウザーのスクロールなどができる。Webページの拡大、縮小はiPhone独特の「ピンチ」とは異なり、「ダブルタップ」で行う。

 目玉は、10月末にリリースされた新バージョンのOS、Android 2.0に基づく新機能だ。高解像度への対応もその一つで、ほかに、マルチタスク、Exchange対応、マルチアカウント、コンタクト管理の改善などが盛り込まれている。もちろんGoogleの各種サービスに対応しており、Android 2.0と同時に発表されたモバイル向けのGPSナビサービス「Google Maps Navigation」を最初から利用できる。

 Droidは、“ホリデーシーズン”(米国人が最も買い物をする年末時期)入りを目前に控えた11月6日に発売された。メディアなどでの評価は高く、TIME誌が毎年行っている「The Top 10 Everything」(なんでもトップ10)の2009年版ガジェット部門でiPhone 3GSを抑えて第1位に選ばれるという快挙を成し遂げた。

 TIME誌はDroidを「iPhoneの輝きや仕上げを持たない、重く頑丈なメタル製の怪物だが、見逃せない製品」と評価。特にタッチ式ディスプレイのシャープさと明るさ、Verizonの3Gネットワークで使えることを挙げ、「iPhoneに確かに挑戦しうる初めてのAndroid端末」としている。

 またCNETのレビューでは、よい点として「ゴージャスなディスプレイと、高速なWebを含むAndroid 2.0の利点」を、悪い点では「キーボードやダイヤルパッドの操作感や音楽機能のモノ足らない点」を挙げた。全体としては、「デザインの問題や、いくつかの機能がないことにもかかわらず、Droidはこれまでで最もパワフルで速いAndroidデバイスだ」と高い評価を与えている。Droidに対しては「過去最強のAndroid端末」との呼び声も多い。

 Verizon Wirelessは派手なマーケティングを展開しており、年内に100万台のDroid販売を目指している。まず発売に先だって10月から「iDon't」というティーザー広告のテレビCMを展開して前評判をあおった。

 このCMは、「iDon’t have a real keyboard」(iにはリアルキーボードがない)、「iDon't run simultaneous apps」(iはアプリケーションの同時実行ができない)、「iDon't allow open development」(iはオープンな開発を認めない)などなど、「ない」づくしのメッセージが次々に表示され、最後に「Droid DOES」(Droidはできます)と来る。もちろん「i」はiPhoneのことで、米国ではおなじみの比較広告だ。

 さらに別タイプのCMでは、ステルス戦闘機の編隊から射出されたカプセルが米国のあちこちに落下。住民たちが息をのんで見守るなか、なにかが出てこようとしている――というSFっぽいものも放映した。ドロイド(ロボット)という硬質で頑丈でメカニックなイメージを重ねたものだ。

 こうして、今四半期にDroidにつぎ込んだ広告キャンペーン費は、Fortune.comのブログBrainStorm Techなどによると、1億ドルにのぼるという。MotorolaとVerizonは、“おしゃれで洗練された”iPhoneとは違ったターゲット層を設定して、取り込みを図っている。

 年内100万台という目標の達成については、アナリストの意見も分かれている。投資ニュースのBarrons.comのブログTech Trader Dailyの11月末のまとめでは、「11月中にすでに70万台から80万台が売れたとみられ、四半期に100万台は達成可能」(RBC CapitalのアナリストMark Sue氏)、「計画からやや遅れており、四半期の販売で75万台程度になる見込み」(OppenheimerのアナリストIttai Kidron氏)といったところだ。

 Droidは、今後、個性的なAndroid端末が続々と登場することも予感させる。Gartnerは、2012年までに、40機種以上のAndroid端末が市場に登場すると予想している。これらは当然、Googleのサービスとの親和性が高いものになる。画像による検索サービス「Google Goggles」のような画期的な機能が、より使いやすいとなれば、Android端末群が市場を席巻する可能性も高くなる。

 さらに12月12日付のThe Wall Street Journalは、消息筋の話として、Googleが自ら設計した携帯電話「Nexus One」を来年に投入する計画を進めていると伝えた。Androidは次々に“本命”を送り出してくるかもしれない。



(行宮 翔太=Infostand)

2009/12/14/ 09:00