「エンタープライズCMSをSaaSで提供」コネクティ服部社長
「Eビジネスマイスターに聞く!」では、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」と称し、Eビジネス研究所 代表理事の木村誠氏がさまざまな話を伺います。今回は、株式会社コネクティ 代表取締役社長 兼 コーポレートエグゼクティブフェローの服部恭之氏に話を伺いました。
Eビジネスマイスター:服部 恭之 株式会社コネクティ 代表取締役社長 兼 コーポレートエグゼクティブフェロー 1998年 神戸大学経済学部卒業後、ソニー株式会社就職。本社人事部配属後、商品企画部、戦略部などの多様な職種を経て、2005年12月にソニー株式会社を退職。 経営者発掘プロジェクトを経て株式会社コネクティを創設。 Blog/大企業から転進組の社長日記 :http://yaslog.connecty.jp/ |
―まずは、コネクティを作ったときの話をお聞きしてもいいですか?
服部氏
大学卒業後、98年にソニーに入りました。8年間働いてから、2005年にコネクティを設立する、というのがざっくりした経緯ですね。
―では、この事業を始めようとしたきっかけは?
服部氏
起業のきっかけは、「一人シリコンバレー創業プロジェクト」をたまたま知ったことです。BtoB部門で新規事業担当をしていたので、ベンチャー系のニュースっていうのは結構見ていたんですね。いったいどんなことをやるのかと思って聞きにいったら、ミイラ取りがミイラになったというか…(笑)。
―自分で面白くなっちゃったと。
服部氏
ええ、個人的に面白いかなということになって応募してみたら、トントントントンと進んで優勝してしまったんです。
―そのときに何かプランは持っていたのですか?
服部氏
ええ。SaaSのビジネスをやるというプランは持っていました。
―ずいぶん早いですよね。
服部氏
早いですね。当時SaaSっていう言葉自体がほとんど日本になかったですね。そのころ私は新規事業をやって、海外でやっとちょっとずつ出てきたセールスフォース・ドットコムに目をつけていました。こういったものがくるなと。それを日本でもやりたい!というのが事業計画の骨子になりました。
「SaaSは絶対来る」という気持ちがあったし、ソフトウェアが結構好きなので、メイド・イン・ジャパンのソフトウェアを作って海外に輸出する側に回りたいなと。ソフトウェアのほとんどが輸入じゃないですか。マイクロソフトもそうだし、オラクルも多くのIT製品は海外のものを輸入していた。
でも私自身メーカーにいて、基本良いものは日本で作られ、世界中で日本の良いものが利用されるのを十分理解していたので、ソフトウェアもできないはずないだろうと思っていました。だからチャレンジしたいなというのが思いとしてあったんです。
―起業しようと思ったのが先なのか、それともビジネスをやりたいと思った結果、辞めたのかどっちなんですか?
服部氏
起業はほんとにもう最後の最後ですね。ビジネスをやりたいっていう思いが本当に強くなって、最後の手段としてチャンスを活用させてもらいました。
―コンテストに優勝して、その後起業までは?
服部氏
優勝してもお金をくれるかどうかは、別のジャッジが必要でした。計画書としては1位だけれども、見込み客を1カ月で20社連れて来ないと、起業のバックアップや資金提供はしないと。
―え?1カ月の間に?
服部氏
はい、1カ月の間に(笑)。私はまだ会社員でしたので、昼間は使えないですから夜と土日に、名刺もないし商品もないんですけど、見込み客を集めにいきました。
―すごいですね!
服部氏
むちゃな要求出されて、夜とか土日かけずりまわりました。「こういう商品を考えていて会社を作る、半年ぐらいたったらできると思うから、できたら買ってくれ」というようなプレゼンをして、分かったっていってもらえるお客さんを30社連れて来ました。それで、合格したんですよ。
―20社っていわれて、30社連れてきたんですか?
服部氏
そう、もうコネとツテを使って。でもそんなにあるわけないので、ツテで紹介してもらった人からまた紹介してもらってってことを繰り返して…。
―すごい営業マンじゃないですか。
服部氏
ええ。でもやっぱりそのとき(コンテストの主催者に対して)むちゃくちゃいうなぁと思いながらやっていましたけど、会社作ってみると、結局その人たちが実際に買ってくれたおかげもあって、1年目に収益が出たので…。
―その人たちっていうのは声かけた人たち?
服部氏
そうです。会社を作る前に30社声をかけた人たちの中で、実際半年後に持っていくと、デモは少なくともみんな見てくれますし、見てくれた人から、じゃあ買おうっていってくれたわけで…。よく考えれば、会社はそうあるべきかもしれないと、後付けで思った感じはありますよね。勢いで作るよりは、やっぱり事前にある程度に見込み客とか集めることは大事ですね。
開発する前に顧客の声を聞いているので、会社設立した後、顧客の要望を踏まえて開発が早いわけですよ。こういうものも必要だと思いましたね。
―製品なんですけど、初めから今のサービスを見据えて作っていらしたのか、それとも、一つ一つ積み上がっていって最終的に3年かかって作った成果なんですか?
服部氏
後者ですね。基本的にはポータルしか見てなかったんですよ。その中でそのCMSの可能性に気づいて、エンタープライズCMSに進もうとなったので、実際には後付けというか…。
―エンタープライズCMSに気づいたのはいつごろですか?
服部氏
今から1年ちょっと前ぐらいです。
―そのころは企業内ポータルっていうのを作っているとき?
服部氏
そうですね。企業内ポータルとか、スマートポータルとかをやっていたころです。
―それは現場のニーズからとか? それとも発想ですか?
服部氏
当時ビジネスの伸び具合を見ていて、ポータルで伸びる領域があまり伸びない。このままじっくりやっていけば、今そのときの社員で食っていけるなというところまで来たんですね。でも成長は緩やかな感じなんですよ、ポータルのビジネスって。
しかし、こうやって自分たちで食っていける分だけ稼ぐっていうのは中小企業だ。ベンチャーっていうのは、急激に成長しないとベンチャーじゃないと。やっぱりわれわれは急激に成長する企業を作って、規模感を作って社会に貢献する!このままやっていたらだめだと思いました。
そのときに、すべて捨てても次のモノを作らなきゃいけないだろうと考えました。でも結構議論が分かれました。今もやっていけば食っていけるじゃないかと、何でわざわざ冒険するんだと…。でも、全部無駄にするととんでもない投資額になるのが分かっていて、人もかなりの数そこに割く。
―それがベンチャーだと思ったんですか?
服部氏
はい。人もかなりの人数をそこに割きました。当時進めていたポータルの開発も営業も止めて、全部エンタープライズCMSをやると決めました。今まで開発した人間全部そっちにつぎ込むので、もう売上は横ばいどころか本当に落ちるかもしれない。そこまで理解していたけれど、でもやるなら今しかないと思いました。
そう1年前に決断して株主に説明し、1年間かけて作ってきたんです。
―ところで、CMSって世の中にたくさんあると思うんですが、どのくらいあるんですかね。
服部氏
200~300種類くらいあるんじゃないかなというくらいありますね。
CMSは大きく2つに分けられています。ブログ型というか、Movable Type、WordPressも含めたような簡易型のCMS。これはどちらかというとサイトの更新ツールですね。
もう少し上位にエンタープライズCMSがあります。これは基幹系のシステムに近くWeb運用の業務基盤として使われますね。しかし、エンタープライズCMSの多くは海外製品なんです。そこでエンタープライズCMSの分野でメイド・イン・ジャパンの良い製品を出しましょう!ということを1つ目のコンセプトにしました。
それからエンタープライズCMSっていうのは価格帯がワンパッケージ大体500万からスタートなんですね。企業は大体1000万~2000万円かけて導入します。それをSaaSモデルで提供することによって、月額レベルにして中小企業でも導入しやすい形にしていく!というのを2つ目のコンセプトにしました。実はエンタープライズCMSと呼べる製品でSaaS専業でやっているのはわれわれしかいないんです。
―そうなんですか!意外と!
服部氏
いません。特に海外のパッケージ、アプリケーションは単独でサーバーを別に用意してくださいという形でエンタープライズCMSをメインで提供しています。CMSはWebのコントロールをするソフトウェアなので、本来であればインフラとの相性が非常にあるんですね。むしろインフラとセットになっていることによって、今までほかのCMSができなかったことが標準としてできるようになります。SaaSは単純に価格が安くなるということだけではなく、SaaSによって今までできなかったことができるようになります。そのことを十分に理解して、SaaS型のエンタープライズCMSにこだわっていたというのはありますね。
今回のキーワード:SaaS(サース) Software as a Servicesの略。従来ソフトウェアはパッケージとして販売され、自分のコンピュータにインストールするソフトウェアを使用する形態だが、SaaSでは、ユーザーはソフトウェアを提供する側のコンピュータにインターネットなどのネットワーク経由で接続しソフトウェアを起動して使用する。サービスとしてソフトウェアを提供するシステムである。パッケージソフトウェアの場合、ユーザーから見たときにあまり使用しない機能がある場合も多いが、SaaSとして提供される場合は使用した期間・時間・機能などで料金が課せられるため低コストであり、短期間での導入もしやすいという利点がある。 |
5月25日に開催される第99回「Eビジネス研究会」のEビジネスマイスターとしてコネクティの服部社長が登場します。詳しくは、こちら。
2009/5/21/ 09:00