「paperboy&co.発のサービスで世界にチャレンジ」paperboy&co.佐藤社長
「Eビジネスマイスターに聞く!」では、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」と称し、Eビジネス研究所 代表理事の木村誠氏がさまざまな話を伺います。今回は、株式会社paperboy&co.代表取締役社長の佐藤健太郎氏に話を伺いました。
Eビジネスマイスター:佐藤 健太郎 株式会社paperboy&co. 代表取締役社長 1981年鹿児島県出身。2003年、paperboy&co.設立時に入社。カスタマーサポート、マーケティング、広報など多岐にわたる業務に携わる。その後、経営企画室長を経て2008年に代表取締役副社長に就任。2009年より代表取締役社長に就任し、代表取締役2名体制で経営のかじを取っている。 |
―まずは、社長就任おめでとうございます。社長に就任されてからどのくらいになりますか。
佐藤氏
ありがとうございます。正式に社長に就任してからは約2カ月がたちましたね。上場したころから、前社長(現・同社代表取締役CCO(最高クリエイティブ責任者))である家入のほうから「もっとサービスの開発やデザインに注力したい」という話があり、私が経営全般を担当することになりました。
―佐藤さんご自身は学生のころから、ITやWebには関心があったのですか。
佐藤氏
私は鹿児島出身なのですが、福岡の大学に進学しました。経営工学部で、ITを使った経営などを勉強していました。そういう勉強をしていたということもあり、「いつか個人でビジネスをやりたい」と思っていました。また、学生時代から自分自身でホームページを作っていました。
―家入さんとの出会いについて詳しく教えてください。
佐藤氏
家入とは私が大学生だったころにネットで知り合いました。家入も当時福岡に住んでいて、Web制作会社に勤めながら自分でホームページを作っていました。私がたまたま家入のホームページを見て掲示板に書き込んだのがきっかけで仲良くなりました。そのうち、家入が偶然自分の家のすごく近くに引っ越したのを機に、ますます仲良くなりましたね。
―佐藤さんから見た家入さんはどんな方ですか。
佐藤氏
面白いものやこれからはやりそうなものに対しての「嗅覚」がすごいです。クリエイターとしての思想をきちんと持っている人間ですね。
―どういった経緯でpaperboy&co.に入社されたのですか。
佐藤氏
家入はその後また引っ越して合資会社を立ち上げました。しばらくネット上のみで連絡を取っていたのですが、その合資会社が軌道に乗ったので福岡で有限会社を立ち上げるという話になり、私もお手伝いをすることになりました。私は当時大学4年生で卒業を控えていたころです。ただ、起業したいとは思っていたものの、就職も何も考えていませんでした。そういったこともあり「これはいい機会だ」と、会社設立と同時に入社しました。
―入社後はどんなことをされていたのですか。
佐藤氏
入社後はまずユーザーサポートをメインに担当していました。その後、会社が大きくなるにつれてマーケティングや広報、その後経営企画室を作って上場準備をしたり、人事部門を担当したりと、バックオフィス系の統括をしていました。
―御社のサービスは「個人」をターゲットにされていますが、何か工夫をされていることはありますか。
佐藤氏
実は、私が入社したときにユーザーからのメールが3000通くらい返信できずにいたんです。ただ、これをきっかけに、これまでお電話やメーラーで対応していたユーザーからのお問い合わせや申込時の開設作業を「Webで完結しよう」と自動化するシステムを自分たちで構築しました。メーラーを使っての対応だと、タイムラグがあり負担をかけてしまうこともありますし、個人ユーザーは請求書や領収書など細かい書類を必要としないので、そういったものを排除してWebでも十分に対応できるシステムを作りました。自動化したことでユーザーの利便性も上がりました。
―御社のサービスはどれをとっても「安価なサービス」が特徴ですが、なぜこのような価格帯でサービスを提供できるのでしょうか。
佐藤氏
一番大きいポイントは「ターゲットを個人に割り切って展開している」というところですね。初期投資がかからないように大規模なシステムを最初から用意せず、規模が大きくなるに従ってシステムも拡大していくという形をとっているところが大きいと思います。そして、ユーザーからのお問い合わせやサービスの申し込みなどもすべてWebで完結しているところも、低価格帯のサービスを展開できているポイントだと思います。
―これまでにうまくいかなかったサービスもあるのですか?
佐藤氏
SNS「キヌガサ」を立ち上げたのですが、これは他社に負けてしまいましたね。最初はmixiよりも勢いがありましたが、「本気度」が少し足りなかったのだと思います。そのサービスをメインに展開するのではなく、片手間でやってしまったところが敗因です。自分たちもメディア運営をできると勘違いしていたところがあったのかもしれませんね。自分たちは「こういうサービスがいいだろう」と思って提供していましたが、われわれの思いだけでユーザーがついてきませんでした。弊社のサービスの中でもユーザーの声をしっかり聞いてそれが反映できているサービスはうまくいっています。
今は、新しくサービスを立ち上げるのであれば「一番になれるサービスにする」という方向性を打ち出しています。それがどうしても難しい場合はどの時点で撤退するのか、そういった基準も設けています。自分たちができないものをずっと提供していても、ユーザーに迷惑をかけることになると思いますので。
―最近リリースされたサービスについて教えてください。
佐藤氏
5月13日に「グーペ」というホームページ構築ASPをリリースしました。ブログ感覚で手軽に飲食店のホームページが作成できる、飲食店向けのホームページ構築ASPです。個人で飲食店をやっている定食屋さんやパン屋さんでホームページを作りたいと思っている方は少なくないですが、かといってレンタルサーバーを借りて自分たちで作るのはかなり敷居が高い。それを月額1000円で簡単にできるツールになっています。店の前の黒板にメニューを書くような感覚で、気軽にホームページが作れます。
―昨年12月に上場されましたが、上場する決め手は何だったのですか。
佐藤氏
GMOインターネットグループの傘下に入るころぐらいから、上場も視野に入れていました。それまでは上場をあまり考えてこなかったのですが、チャレンジできるものが目の前にあったらチャレンジしていくというのがわれわれpaperboy&co.としての考え方なので、だったらチャレンジしてみようかと。弊社のサービスのファンの方から「上場するような会社になってほしくない」と言われることもありましたが、逆にそこを裏切りたいとも思いました(笑)。
それにやはり「会社の知名度」をあげたいというのも大きかったです。上場して、弊社を知ってもらうことで、弊社への信頼も高まると考えました。
―上場されるまでにはご苦労もあったのでは?
佐藤氏
上場準備を始めてから上場するまでに4年かかりました。ここまで時間がかかったのは市況の問題も大きかったですが、企業の不祥事などで特に審査が厳格になっていた新興市場への上場を目指したことも要因の一つですね。当時は上場することで新しいサービスを提供するスピードが遅くなってしまうようなことになるのではと懸念していましたが、上場後の今も、より良いサービスをスピーディーに提供するという弊社のスタンスは変わっていません。
―今後の御社の展開について教えてください。
佐藤氏
われわれは基本的には「個人」をターゲットにしていますので、インターネットを使って自分を表現したり、自己実現したり、ネットを使って何かをしたい人のためにこれからもサービスを提供していきたいですね。これがひいてはサービスの規模や会社の規模を大きくすることにつながると考えています。
現在はレンタルサーバーサービスの「ロリポップ」とドメイン取得サービス「ムームードメイン」が売上の約6割を占めていますが、これから頑張っていきたいのは「EC関連サービス」です。オンラインショッピングモールの「カラメル」は4月から従量課金にしました。それによって0円からでも出店できるようになり、より多くの方々に気軽にモールへ出店していただくことが可能になりました。
そして、世界に出せるようなものを「paperboy&co.発」として出していきたいです。既存のサービスも充実させつつ、新しいサービスも作り出していくことで、世界でも競争できる会社にしていきたいですね。
―佐藤さんご自身の夢は何ですか。
佐藤氏
やはり「paperboy&co.」を世界的な企業にすることですね。日本のWeb系の会社でまだまだ世界に通用する会社はないので、ぜひわれわれが先駆者になりたいと考えています。
今回のキーワード:個人向け自己表現・自己実現市場 インターネットが普及した昨今、一個人がホームページやブログを通して世界に向け情報発信することで、自己表現、自己実現欲求を満たすことが可能となった。近年ではホームページ開設にとどまらず、ドメイン取得やイーコマースへの参入など、個人向けの自己表現・自己実現市場は年々拡大している。 |
7月29日に開催される第100回「Eビジネス研究会」のEビジネスマイスターとしてpaperboy&co.の佐藤社長が登場します。詳しくは、こちら。
2009/7/9/ 09:00