「どんなアクションでもポイントがたまるポイントポータルを目指す」ちょびリッチ齋藤社長


 「Eビジネスマイスターに聞く!」では、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」と称し、Eビジネス研究所代表理事の木村誠氏がさまざまな話をうかがいます。今回は、株式会社ちょびリッチ代表取締役の齋藤利春氏に話を伺いました。


Eビジネスマイスター:齋藤 利春
株式会社ちょびリッチ 代表取締役


1972年生まれ。専門学校卒業後、電線メーカーの財務部にて8年間経理業務に携わる。退職後、個人事業として「ちょびリッチ」をスタートさせ、04年に法人化、現在に至る。


―斎藤さんのこれまでの経歴を簡単に教えていただけますか。

齋藤氏
 僕は木村さんと同じ、長野県出身で、実家が温泉地で飲食業を営んでいたのですが、将来自分自身も何か事業をしたいというのと、そして数字が好きだったということもあって、高校卒業後、東京の簿記の専門学校に入学しました。2年間学校で学んで、地元に戻ってから光ファイバーなどを扱っている電線メーカーで経理担当として勤務しました。


―サラリーマン時代には、何かビジネスをやっていたのですか?

齋藤氏
 サラリーマンとして働いていたころは、週末に企業のチームで社会人サッカーを楽しんでいたくらいで、その間は一切自分でお金を稼ぐような事業はしていませんでした。ただ、実家が飲食業をやっていましたので父親と食材の仕入れなどに行き、その際に商売のレクチャーは受けていましたが…(笑)。

 起業はしたいという気持ちは持っていたので、「このまま会社で働いていてもいいのだろうか」と漠然としていましたね。ただ、投資などで起業資金はコツコツためていました。サラリーマンとして7年くらい働いたころ、ある程度資金がたまってきたということと、2002年日韓共催W杯を全試合見たいと思って、全部見るなら会社員じゃないほうがいいなというのもあって、2001年に退職しました。


―退職してから起業するまでの経緯を教えてください。

齋藤氏
 退職後は3カ月くらい中国を中心に単身で旅行しました。もともと中国に興味があって会社を辞めたら絶対行こうと決めていたし、中国向けのビジネスが何かできないかと起業のネタ探しも兼ねて旅行することにしました。でも、中国から戻ってきてすぐ起業したわけではなくて。会社のしばりやしがらみがなくなって何かやろうという意識は出てきたのですが、いろいろとビジネスモデルを考えながらもブラブラしていました。ただ、そういう日々を送っていると、世の中に何も貢献していないことに対してどんどん怖くなってきて、とりあえず地元でアルバイトを始めました。夜はスーパーマーケットで働いて、昼は今のサービスの立ち上げ準備をしていました。


―どうやって起業に踏み切ったんですか。

齋藤氏
 当初は個人ビジネスをやろうとしていました。サラリーマン時代、海外の企業に投資していたこともあり、AmazonやeBayといったネット系の企業はすごいなと思っていました。そういった海外の企業に刺激を受けて今のビジネスモデルを考えました。それに僕は何か手に職を持っているわけではなかったので、インターネットで小資金・少人数でできる事業をやろうと決めました。


―起業当初を振り返っていただけますか。

齋藤氏
 最初は自宅で個人ビジネスとして始めました。インターネットビジネスをはじめるにあたって、僕は何もできなかったので、プログラムを書ける人とページを作れる人をSOHOサイトで探しました。カナダ在住の日本人にページデザインをお願いして、プログラムは神奈川在住の人に作ってもらって現在の「ちょびリッチ」の原型を作りました。


―なぜ、「ポイントサイト」を作ろうと?

齋藤氏
 サラリーマン時代に投資をしていたころ、アメリカではアフィリエイトが始まっていて、「アフィリエイトであれば自分が営業しなくても売れたらお金が入るからこれはいいな」と思っていました。ただ、単なるアフィリエイトだとユーザーが一度商品などを購入するとそのあと戻ってこないので、「ポイントを付与してリピートを促そう」と考えました。僕自身、日本初のポイントサイトを作ったという自負はありますよ(笑)。


―スタート当初からうまくいっていたんですか。

齋藤氏
 創業初月は本が1冊売れただけで、成功報酬は13円。これはおかしいなと思いましたね(笑)。やはり甘くないなと。なので、2カ月目からは、ショッピングで成果報酬を得るというものだけでなく、クレジットカードやキャッシングカードを作ったら何ポイントあげますというサービスも追加しました。そうすると成果が上がってきて、2カ月目は30万円くらいもうけましたね。その後、利用者が増え、会員が増えたこともあり、2年目には月商300万円になりました。一人でやって、かつ自宅でやっていたので家賃もかからず、人件費もほとんどかかりませんでした。ただ、ずっと家にこもって仕事をしていたので、なかなか周囲から理解してもらえませんでしたね(笑)。


―いつ東京に進出したんですか。

齋藤氏
 2004年に東京に進出しました。単純に東京で遊びたいなということもあったのですが(笑)、やはりネット関連企業は東京に集中しているので、東京に行かないと難しいと思っていました。東京に進出してからは、取引や打ち合わせがしやすくなり、事業も大きくできました。東京に進出してから初めて社員を入れるようになりました。


―起業してから「何か苦労したこと」ってありますか。

齋藤氏
 これといった苦労は、あまり思い出せないですね(笑)。もともとあまりお金がかからないビジネスで、固定費が少ないことがよかったかもしれません。ただ、2006年くらいに大々的に広告展開をしたことで多額のお金を借りました。広告はどういう反響や効果があるのかを知りたくて、マス広告をやるにはどうしてもお金が必要だったんです。結局、新聞、雑誌、ラジオと展開して、ある程度の効果はありましたが、それ以上に借りたお金の返済は大変でしたね。田舎者だったんで広告というものをあまりわかっていませんでしたね(笑)。


―「ちょびリッチ」はかわいいキャラクターが印象的ですけど。

齋藤氏
 もともとうちのサイトはまじめな銀行っぽいサイトだったんです。実は、現在弊社の役員である前野が部分的にサイトのデザインを担当していて、ある日ちょびリッチのキャラクターを勝手に作ってきたんですよ(笑)。そうされるとほかも直さざるを得ないですから、自然とキャラクターがメインとなった今のかわいいサイトになっていったんです。


―他のポイントサイトとの違いはどういうところにあるとお考えですか。

齋藤氏
 やはり「ちょびリッチ」が一番に考えているのは「顧客重視」であるということですね。具体的には、会員さんが飽きないように新しいコンテンツを追加することや、大量の広告メールを会員さんに送らないといったことです。あとは、少人数なので小回りが利きスピード感があるところですね。ほかのポイントサイトの中には自分たちがもうけることしか考えていなくて、会員さんに毎日のように広告メールを送り続けていたり、顧客のことを考えていないところもありました。一時期ポイントサイト数が急激に増えましたが、今は数社に淘汰(とうた)されてきましたね。


―ユーザー数の推移など、「ちょびリッチ」ユーザーについて教えてください。

齋藤氏
 一時期マス広告をうったこともあり、当初、会員数は月5万人ずつくらい増え、年間でも倍増していました。現在は、基本的には口コミやリスティング広告・SEOで集客していて、それでも月で1~2万人くらい純増しています。「ちょびリッチ」は1ポイント=0.5円で換金できる日本初の換金サイトですが、中には10~20万円位稼ぐ会員さんもいらっしゃいます。ネットショッピングもダイレクトにECサイトで購入するのではなく、ポイントをためるためにうちのサイトを経由してから購入される方も多いですね。傾向としては、女性はショッピング等でコツコツポイントをためるのが好きですが、男性はクレジットカード申し込みなど高ポイント狙いでため方がアグレッシブですね。また、今、不況ということもあり、節約特集とかの取材を受けることも多く、「お小遣い稼ぎ」といった検索ワードからの流入が多くなりましたね。


―今後の「ちょびリッチ」の展開について考えていることを教えてください。

齋藤氏
 「ポイントポータルサイト」みたいに、どんなアクションをしてもポイントがたまるというようにしたいですね。例えばパソコンが欲しいと思ったときに、ネット上で公開されている情報をちょびリッチですべて比較でき、ちょびリッチ経由で買うとポイントがたまるというように、インターネットで商品を買うためのお手伝いができるサイトにしていきたいですね。また、例えばどこかの病院である医療機器が不足しているときに、みんなでポイントを集めて寄付するといったように、ポイントを共有して困っている人を助けるというサービスを始めたいですね。「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」ならぬ「ソーシャル・ポイント・サービス(SPS)」といった感じですね。あと、ポイントのASPサービス展開なども考えています。


―今後ポイントを活用した新しいサービスなども考えていますか。

齋藤氏
 ショッピング市場はまだまだ大きいのでそちらのほうでもっと展開ができるのではないかと思っています。マーケットとしては200万人くらいが「ポイントが好きな人」で、ここのマーケットはすでに飽和状態。「ポイントがそこまで好きじゃないけど、たまったらうれしいとか、たまったら使うといったそういう人」が多いので、そういうところにリーチしていきたいですね。また、ポイントは携帯とすごく相性がいいので、携帯を持ってリアルな店舗でショッピングをするとポイントがたまって使えるというような仕組みを作りたいと考えています。例えば、クリーニング屋さんでクリーニングを出すと、ポイントを携帯の端末にチャージできて、そのポイントをいろんなお店で使うといった仕組みですね。


―上場を目指してらっしゃるんですよね。

齋藤氏
 そうですね。上場基準に合うように株主を増やそうと、2007年くらいから出資を受け入れています。株式公開をしようと思ったときに、僕一人ではできないと思っていたので、株式公開に向けて財務や法務のプロの方々に入社していただきました。上場に向けてこれからも頑張っていきたいですね。

今回のキーワード:ポイントマーケティング
従来はECサイトにダイレクトにアクセスしてショッピングしていた消費者が、まずポイントサイトでポイントがためられるかどうかを確認してから、ポイントサイトを経由してECサイトにアクセスするという導線が定着しつつある。ネットでの購買行動のプロセスである「AISAS(Attention, Interest, Search, Action, Share)」ならぬ、「AIPAP(Attention, Interest, Point, Action, Point)」として、ポイントサイトでのポイント付与をインセンティブとし、消費者の購買行動に変化を加えている。




聞き手:木村 誠
1968年長野県生まれ。2000年6月より『Eビジネス研究所』として ITおよびネットビジネスに関する研究、業界支援活動をスタート。2003年4月『株式会社ユニバーサルステージ』設立。代表取締役として、ITコンサル ティング、ネットビジネスの企画・立案、プロデュース全般を行う。2006年ネットビジネスのイベントとしては国内最大級1000人規模『JANES- Way』実施。2007年4月よりIT業界に特化した職業紹介『ITプレミアJOB通信』をスタートさせ好評を得る。ASPICアワード選考委員。デジタ ルハリウッド、トランスコスモス、マイクロソフトなど講演多数。

2009/6/18/ 12:10