「ゴルフ市場の拡大に、テクノロジーとサービスで貢献したい」ゴルフダイジェスト・オンライン大日COO
今回のゲストはゴルフダイジェストオンライン(以下、GDO)COOの大日さんです。メディア運営に今までのキャリアを重ねてきた大日さんが、新たな領域でどのような事業展開を考えていくのかをお伺いしました。
大日 健(だいにち けん) 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 最高執行責任者(COO) 1993年日経BP社入社。アドマーケティングセールスや、社内のWebインフラ整備から、オペレーションの確立、メールを利用したダイレクトマーケティングの立ち上げなどを手がける。 2003年4月、米国・CNET Networks.incの日本子会社、シーネットネットワークスジャパン株式会社の立ち上げに参画。事業統括ディレクター、マーケティングセールスディレクターとして営業商品開発とメディア構築、Webインフラの構築などを行い、代表取締役社長を経験したのち2007年12月末に退社。 2008年3月、ゴルフダイジェスト・オンライン入社。 ゴルフメディア本部、モバイル事業、システム部門担当執行役員を経て、2008年12月、最高執行責任者就任。現在に至る |
■事業とメディアを兼ね備えた存在としてのゴルフダイジェスト・オンライン
小川氏
簡単に経歴を教えてください。
大日氏
日経BP社に1993年から10年間いました。最後の3年でWebメディアの運営や広告営業などWeb周りの全般的な仕事を受け持ちました。
その後、2003年4月にCNET Networks.Japanに入社し、2005年1月に社長に就任しました。その後、ご存じの通り2007年末に退任し、2008年3月よりGDOに身を置いています。
小川氏
大日さんというとメディアの人、という印象が強かったのですが、なぜ別のメディアではなくGDOに?
大日氏
GDOの社長である石坂とは前職を通じて懇意にしてもらっていたので、僕が大のゴルフ好きということを知られていた、というオチがほんとのところかもしれませんが(笑)。僕はIT系のメディアで15年仕事をしてきて、インターネットやITでできることを分かりやすくすることに、それなりに貢献してきたと思っています。なので、次はメディアだけではなく、事業ができて、かつメディアという会社にいきたいとは考えていました。その意味ではGDOはうってつけだと思っています。
小川氏
なるほど。
大日氏
僕は将来的には出版社をやりたいんですね。旧来的な紙だけの出版ではなく、情報をパブリッシュすることをビジネスにしたいという意味です。残念ながらCNETでいろいろと頑張ってきましたが、日本から世界に発信できるものがなかなかでてこなかったという思いがあります。その点でも、サービスを利用するプラットフォームであると同時にメディアとしての要素を併せ持つGDOは数少ない存在と感じています。
世界の市場に出ることを考えたとき、スポーツや趣味の分野で、消費者とメーカーをマッチングできるサービスは世界に通じると考えています。将来的にわれわれのモデルを世界に輸出できるといいなと思います。
小川氏
現在のゴルフ市場はシュリンク(縮小)しているような感を受けますが。
大日氏
レジャー白書によれば、大まかな数字ですけど、確かにゴルフ人口は約1000万から約830万人くらいに減っています。でも実は年間の総ラウンド(プレー)回数は変わってない、むしろ増えているくらいなんですよ。
バブルがはじけて社用族の遊びのようなあり方から、30~40代がみんなでネットで誘いあって安く楽しむというスタイルにゴルフは変わってきています。売上高は変わらないのに、プレー回数が増えるということは客単価が下がるということでゴルフ場は大変かもしれないですが…。
小川氏
現在のGDOの会員数はどのくらいですか?
大日氏
今の会員数は140万人くらいですね。ユニークビジター数は約400万人というところでしょう。ゴルフ人口を考えれば、まだまだゴルファーの役に立つ余地があるし、成長する余力があるでしょう。
■日本のゴルフ市場は伸びる
小川氏
その成長を考えることができる根拠は?
大日氏
そうですね。ゴルファーの行動を考えると、何週間前のゴルフ場予約から始まって、楽しかったプレーを振り返って、また予約をする、みたいなサイクルがありますよね。例えば200万人のユーザーに、そのサイクルの間に5回タッチできたら1000万人のユーザーがいるのと同じなわけですよ。最近ライトタイムマーケティングとかいわれているようですけど、ゴルファーの時間軸の中で、サービス化できる余地がたくさんあることは間違いないです。また、ゴルフマーケットの中で、われわれが手がけていない分野に進出するという道もあるでしょうし、まだまだ飽和してないと思いますよ。
小川氏
ゴルフ市場の大きさは?
大日氏
今、日本はだいたい830万人のゴルファー人口で、コース数は2400強。市場規模は約1.8兆円くらいです。米国は4000万人、16000コースで8.3兆円。ヨーロッパは400万人、6300コース、2.2兆円といわれています。
小川氏
そんなにでかい市場なんですね…。
僕はまったくやらないので、分からなかったです。大きいとは思うにしても。その中でGDOの売上は?
大日氏
ゴルフ用品販売事業で約70%を売り上げていて、だいたい約100億円。ゴルフ場予約サービス事業で約20億、メディア事業の売上で約8.5億。総額で130億円ぐらいです。
小川氏
ゴルフに詳しくない僕でも石川遼君の活躍や女子プロの台頭で、ゴルフ人気が上がってきたのかなという感じはしていますが、実際はどうです?
大日氏
確かに良い方向にあると思いますが、一時的な人気に終わらないように、実際に会場に来ていただいてゴルフの楽しさやプロのすごさを知ってもらって、ゴルフマーケットの活性化、拡大に寄与できるようなビジネスをしていかなければと思います。もちろん、われわれもそのお手伝いをできればと強く思っています。
小川氏
ケータイの対応はしてるんですよね? タッチを増やすという意味でケータイは必須ですよね?
大日氏
3キャリアの公式サイトで提供していますが、まだまだケータイのサービスは発展途上という状態です。
ゴルファーにどこでタッチするかを考えると、これからは間違いなくケータイなんでしょうが、一般的なゴルファーとモバイルユーザーの間にまだ隔たりがあるのかもしれません。今後、ゴルファー世代や取り組み方をよく理解して、GDOらしい楽しく便利なモバイルサービスを提供していくことを考えています。
■海外市場への参入は有望
小川氏
世代の違いが最近顕著になっている気はしますね。クルマを欲しがらない若者がほんとに多いし。
大日氏
われわれは世の中の構造が変わってくるところに挑戦し続けたいと思っているので、変わっていくタイミングは好機だと考えています。とはいっても確かに若い世代はクルマを持っていないことが多くて、ゴルフ場に行くのにもちょっと不便だったりします。ほかのスポーツに比べるとコストがかかることもあって、若い世代をどう取り込むかは非常に難しいところです。
若い世代だけでなく、世代やゴルフの取り組み方の違いでさまざまなニーズが出てきたことも、マーケットの変化といえると思います。スコアだけでなく、ファッションやリゾートでの複合的な楽しみなど、サービスも徐々に変化しているので、こちらに関してもマーケティング活動は重要になってくるでしょう。
小川氏
ゴルフクラブはそんなに買い替えますか?
大日氏
ドライバーは毎年買うという人が多いですよ。ボーナス時期の消費項目になりやすいんですよ(笑)。お母さんならバッグ、家庭は家電、家族は旅行、お父さんはクラブ、という感じですか。40~50代の趣味といえば、やはりまだパソコン、ゴルフ、散歩という状態ですから。
小川氏
なるほど。ほかのスポーツへの展開がそれほど魅力的でないとすれば、まだまだ国内ゴルファーの需要の掘り起こしはあるにしても、国内市場だけに頼れなくなるときがきそうですね。
大日氏
そうですね。実際米国市場は有望だと思います。
小川氏
米国ですか? 成熟してそうですけど?
大日氏
米国は最大の市場ですし、旧来のやり方で浸透しきっているので、そこを変えることで新しいビジネスが生まれる可能性が大きいと思っています。また、これから成長する国々も大きな魅力をもっています。例えば、東南アジアや中国などは、米国と違った可能性があると思っています。
小川氏
なるほど。
大日氏
GDOでは、アクションを起こすときには、5C、という考え方を持っています。Challenge(チャレンジ)、Collaborate(コラボレート)、Communicate(コミュニケーション)、Create(クリエイト)、Comfortable(コンファータブル)という5つの要素を重要視していて、国内・国外問わず、この5Cの精神をもってこれからも世の中の仕組みや構造を少しずつ変える取り組みをしたいと思っています。
2009/7/21/ 09:00