「僕たちはコッコちゃんの通訳。毎日休まずニュースをつぶやき続けます」毎日jp乗峯氏


 今回のゲストは毎日新聞のTwitterアカウント「@mainichijpedit」の運営を担当する、毎日新聞社デジタルメディア局の乗峯滋人さんです。

 既に13万人を超えるフォロワーを抱える、日本の代表的Twitterメディアとなった@mainichijpeditは今後どのようなビジネスモデルを目指していくのか、そして本体のTwitterそのものが今後どう成長していくと考えているのか、お話を伺いました。


乗峯 滋人
株式会社毎日新聞社 デジタルメディア局 記者・コンテンツマネジャー

毎日新聞社デジタルメディア局勤務。2001年に記者として毎日新聞社に入社。ニュースサイトの編集に携わり、2009年6月より毎日jpのTwitterアカウント@mainichijpeditを開設。


フォロワー13万人突破

小川氏
 (Twitterに関する自書を差し出しながら)毎日新聞さんの件についても触れさせていただきました、どうぞ。


乗峯氏
 ありがとうございます。Twitter本は結構な数が出そうですね。ほかにもいくつか本を書くというので取材を受けました(笑)。


小川氏
 らしいですね(笑)。しかし、フォロワーが13万人を超えたんですね、おめでとうございます。メディアとしてつぶやいていくうえで、常にどんなことを心がけてらっしゃるんでしょうか。


乗峯氏
 取りあえず柔らかいノリを心がけていますね。RSSをボットで投げるだけでは伝えられないニュースの面白さを、うまく表現して、いっそう毎日新聞というメディアに興味をもっていただければなと思ってやってます。運営は僕だけではなく何人かでやっているわけですが、とにかく常に柔らかい感じでニュースを伝えたいと思っています。


小川氏
 柔らかいノリ、とは?


乗峯氏
 ジャーナリストとして、新聞の見出しは常に見出しを読めば分かる書き方をしなくてはならないんですね。だからRSSを使ってただニュースのヘッドラインをTwitterに流しても、流し読みで内容が分かってしまうので実際に毎日新聞のサイト(毎日jp)に戻ってきていただけない。だからといってリンクをクリックさせたいがための見出しは書いていけないんです。結局、Twitterの140文字で全文だすことができないし、本来の写真や記事を読んでほしいので、釣りとまではいわないけれど、やはり内容を読んでみたくなるような見出しの書き方を工夫ししています。


小川氏
 むずかしいところですよね。新聞記者の良心を守りつつ、読者の興味をそそらないとならない。


乗峯氏
 通常うちでは新しい記事が一日200~300出るんですが、@mainichijpeditではその一部だけを出しています。

 300本のニュースの中で、どの記事が重要かというような価値付けは本来できないのですが、ある程度おすすめといえる記事をつぶやくようにしています。


小川氏
 最初はお一人でやっていたんですよね?


乗峯氏
 ええ。でも、フォロワーが1万を超えたあたりで、これは確かに仕事だよね、というので(笑)複数人であたることになりました。6月26日にアカウントを開設したんですが、2~3週間で1000フォロワーがついて、Twitterのおすすめユーザーにデフォルトで紹介いただけるようになったころから急激にフォロワーが増えてきました。


毎日20~30回のつぶやきを休みなく継続

小川氏
 土日も休まずつぶやかれているとか?


乗峯氏
 ええ。毎日20~30回、土日も休まずつぶやいています。

 ニュースが入ってくるのが夜中の2時くらいで、昨日も4時までつぶやいていました。ちょうど新閣僚が会見やっていたし。


小川氏
 日本の新聞メディアはあまりブログには熱心ではない気がするんですが、Twitterはどこが特別なんでしょうか?


乗峯氏
 Twitterが特別というよりも、まだまだ認知度が低かったので、社内でもあまり分かってなかったのかもしれません(笑)。ブログだと皆が既にそれがなんだか理解していて、炎上リスクとか情報漏えいがどうという心配が先に立つんでしょうが、Twitterはよくわからないけど利用者もそれほど多くないならやってみれば、という感じでスタートしちゃった感じですね(笑)。でも、もうやめろとはいわれないと思います。

 新聞社自体がそうですが、世間的にもまだまだ一般の人には、Twitterはなにそれ、という程度の反応だと思いますよ。なるほドリというコーナーでTwitterってなに?という記事も書いたけど、反応は薄かったですから(苦笑)。


小川氏
 それでも、WBS(ワールドビジネスサテライト)でTwitterが紹介されたことで、どのメディアも急に取り上げ始めましたよね。


乗峯氏
 一気に変わりましたよね。TwitterのことをしゃべってもOKだよという空気がでてきた感じはします。


小川氏
 新聞社が本格的にTwitterを始めたおかげで、日本でもTwitterのビジネス利用が促進されるきっかけができたと思っています。

 あとは海外におけるデルのように、ビジネス的に成功したTwitterマーケティングの事例が日本でも早く生まれることですね。現在われわれが担当しているJINSというアイウェアブランドのマーケティングはTV広告などとの連動なんですが、ほかにもそれなりに大手の企業の事例を早く紹介しようと思っています。

 @mainichijpeditへの期待は大きいんじゃないですか、内部でも。


乗峯氏
 そうですね。社内でも新しいことに取り組めているという期待を感じるようになりましたよ。

 10万人以上のフォロワーがいるということで、イベントの告知や企画などに使えない?という相談を内部からうけるようになりました。今日も告知してきたんですけど、10月4日に勝間和代さんをおよびするイベントがあって、そのことをつぶやいてきました。


収益化は当面考えず

小川氏
 そうすると、あとはトラフィックとフォロワー数をどうお金に換えるか、ですね。


乗峯氏
 そうなんです。

 フォロワー数1000いけばいいよね、というノリで始めたんですけどね、最初は。毎日新聞のPVの下支えになればいいと思っていたけど、実際にはまだ数パーセントにしかならないところが悩みです。リアルとからませたいというか、Twitterでの記事を読んで、毎日新聞のファンが増えればいいんですけどね。一日一回でも来てくれればユニークユーザーが10万人増えるということなので。


小川氏
 13万フォロワーに対してフォロー数は少ないですよね。


乗峯氏
 そこは悩みなんですよ。

 最初に決めてないからなんですけど、メディアとしてほかのユーザーとフォローし合うということがなににつながるかが分からずに始めてしまって。フォローしちゃうとタイムラインが埋まってしまうじゃないですか。なんらかのクライアントを使う時期かな?と思ったり。いずれにしても、いまのところメディアとしての運営上は、フォローするメリットが見当たらないというのが現状です。


小川氏
 対話をしたいと思われるのでは?


乗峯氏
 なまじフォローしてしまうと、直接的な質問などに答えられないことでユーザーを失望させたくないんですよ。いま、広瀬香美さんが一週間に一回、@mainichijpeditでつぶやいてくださって、ニュースについて語り合うというイベントをやっているんですが、こうしたことである程度会話性というか、インタラクティブな感じを担保したいと思ってやっています。

 ただ、ブログとの違いというんでしょうか、Twitterユーザーはなんとなく優しい感じがします。


小川氏
 優しい?


乗峯氏
 抑制が利いている感じというか居心地がいいというか、あまり攻撃的なことを書く人が少ないという感じですね。


小川氏
 なるほど。

 ちなみに、キャラクターのコッコちゃんがつぶやいている、というスタイルにした理由は?


乗峯氏
 先ほど言ったように、見出しへの柔らかな感じを出すために、キャラクターを用いた方がいいと考えました。コッコちゃんはTBSの豚のキャラクターとかauのリスモのデザイナーさんに依頼して作っていただきました。2007年10月の毎日jpオープンのときで、この10月で2歳になります。コッコちゃんのキャラクターに救われていることは多いですよ。僕たちはだからコッコちゃんの中の人ではない、と思ってやっています。通訳みたいなものです、コッコちゃんはジャン・ピエール・コッコというフランス人の設定なんで(笑)。


小川氏
 なるほど(笑)。今日はありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2009/9/29/ 09:00