「広告事業から課金事業へのシフトを進める」サイバーエージェント長瀬局長


 今回のゲストはサイバーエージェントの新規開発局 局長の長瀬さんです。


長瀬 慶重(ながせ のりしげ)
株式会社サイバーエージェント 新規開発局 局長
アメーバ事業本部 プラットフォームDiv、モバイルDiv、ピグDivゼネラルマネージャー

通信業界にてR&D開発を経験。この経験を通して、技術をサービスに昇華できる環境、ユーザーに直接対話ができる環境、そして、何よりも次の可能性を感じる環境を求め、インターネット業界を次の自分のフィールドに選択。
2005年8月に株式会社サイバーエージェントに入社。入社後は、ブログを始め、Amebaの新サービス開発に貢献。現在は、Amebaのメディア開発の責任者を担当。また、同社新規開発局 局長として、100名を超えるエンジニア、クリエイターを束ね、“技術のサイバーエージェント”の実現に向けて日々奮闘中。


Ameba事業も順調。タレントブログが認知度向上に寄与

小川氏
 今日はよろしくお願いします。Amebaブランドにかかわる人数はいま、どのくらいでしょうか。


長瀬氏
 いまだいたい200名の組織です。サービス開発は約110名が携わっています。


小川氏
 Amebaの事業規模は?


長瀬氏
 えっと、ブログに関する事業戦略はPVをとにかくあげるということに尽きるのですが、われわれの目標は月間100億PVの達成でしたが、これは7月に達成して、会員数は10月末時点で675万人になりました。ちなみに登録人数の増え方の加速度ではPCとモバイルが半々ですね。


小川氏
 なるほど。収益面では?


長瀬氏
 現時点では広告収益のモデルがメインとなっています。広告展開としては、純広告や企業とのタイアップブログ、口コミマーケティングなどの展開があります。

 最近では課金ビジネスにも力を入れていて、アバターやスキンなどのアイテム課金が伸びています。


小川氏
 現時点の目標は?


長瀬氏
 2010年度には年度での黒字化を考えています。


小川氏
 Ameba=タレントブログ、というイメージもつきましたね。


長瀬氏
 書いていただいているタレントさんも5000人を超えて、毎月200~250名増えるようになりましたからね。


小川氏
 逆にタレント依存が大きいようにみえますが、それは大丈夫ですか?


長瀬氏
 メディアとしての認知力としてはタレントブログは重要です。でも事業面、収益面においてタレントブログに依存しているわけではなく、主にブランド構築というところが大きいですね。タレントブロガー5000人といっても、ある一定の基準を満たしている方のみをオフィシャル認定しているんです。


アメーバピグはバーチャルとリアルの間をうまくとらえる

小川氏
 昨年手がけたというモバイル事業は?


長瀬氏
 モバイルといってもブログを中心に進めてきました。先ほどと同じタイアップや広告、アドネットワークを使った収益化を目指してきました。

 ケータイだけのブログというのはなくて、PCとの連動です。ライバルはブログサービス全体、また広い意味でSNSなども含まれると考えています。モバイルは時間が限られている中で遊んでくれるものなので、競合はPCより激しいかもしれません。

 PCとモバイルのPVを比べてもまだまだ両方伸びていて、全体の規模では40~45%がモバイルなんですが、他社の状況から推測してPCの成長は鈍化するのでは?と心配することもありましたが、まだまだPCもPVは増えています。


小川氏
 GREEも最近タレントブログに力を入れていますが。


長瀬氏
 ライバルとは思っていないです。メディアの特質が本質的に違うと認識しています。

 Ameba全体の直接ライバルを、純粋に媒体規模としてみると、この間ネットレイティングスの発表で、Yahoo!、楽天、Google、YouTubeなどがトップ5に並んでいましたけど、そのあたりのメディアになりたいという思いはありますね。


小川氏
 そこで企画されたのがアメーバピグなどのサービスだと思うんですが、調子はいかがでしょうか。


長瀬氏
 すごく反応はいいですよ。

 アメーバピグは、WebブラウザベースのFlashのアバターを使ったサービスです。まあセカンドライフのコンセプトに近いけど、PCでWebブラウザだけで使えるところが受けてますね。主婦を中心とした、リテラシーがそれほど高くないし、スペックの低いPCを使っている人たちに向けて設計されています。多くの人に使ってもらえるコミュニティサービスになるんじゃないですかね。10月末時点で会員数が140万人で、2月スタートですから、かなりの速度で会員獲得しています。


小川氏
 あれはペットじゃないんですよね?


長瀬氏
 ペットではなく、自分の分身です。インスピレーションとしては、昔あったチャットを今に置き換えたものだと思っていますね。個人のアイデンティティを持って活動するわけですし。先ほどもいいましたけど、この分野での課金サービスに力を入れています。広告から課金サービスへのシフトがテーマですね。ゆくゆくは、Amebaとして広告と課金の収益比率を5対5まで引き上げたいと思っています。


小川氏
 はい。


長瀬氏
 いまはグローバルでみてもユーザー課金のビジネスをつくることにフォーカスしています。アメーバピグは8月時点で月間数千万円の事業になってきましたし、もっといけると思います。Amebaの収益の柱にしていきたいですね。8月に公開したケータイ版も順調ですし。


小川氏
 ユーザー層はやはり主婦?


長瀬氏
 主婦の方は確かに多いです。昼の2~3時に、ママ友集まろうとか、アラサー集まろうという感じで(笑)。ピグでタレントさんも遊んでいることが多いんですよ。簡単にブログでも貼れますし、タレントさんと直接話せるのは大きいですよ。バーチャルでもリアルでもなく、子育て話をしていけるのはとても楽しいことだと思います。


小川氏
 セカンドライフの短所をうまく消して長所を生かしたところは素晴らしいと思います。

 今日はありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2009/11/10/ 15:00