「動画コンテンツの流通を支えるモバイルプラットフォームを目指す」アクセルマーク小林社長


 今回のゲストは、モバイルインターネット企業のアクセルマークの社長、小林靖弘さんです。リクルートからベンチャーの社長へと転身した小林さんが狙うモバイルビジネスの世界とは?お話を伺いました。


小林 靖弘
アクセルマーク株式会社 代表取締役社長

関西大卒。リクルートに7年間勤めた後、携帯コンテンツ配信会社「エムティーアイ」に移籍。2000年アクセルマークの取締役に就き、2002年10月から現職。


モバイルベンチャーの可能性に気づいてアクセルマークに参画

小川氏
 簡単に御社の説明をお願いします。


小林氏
 アクセルマークはモバイル主軸のビジネスを行う企業です。コンテンツの提供がメインですが、ソリューションの提供も行っています。

 3Gのリッチコンテンツ分野では、音楽、動画、書籍などのコンテンツを提供していますが、今後は動画を中長期的に伸ばすことを考えています。

 ソリューション分野では、モバイルのサイトを企画から運用までを提案しています。ただ、SIerとはちがって、継続して運営までを受け持っているのが特徴です。


小川氏
 創業はいつでしたか。


小林氏
 1994年創業です。私が参画したのは2000年。非常勤取締役として携わったのが最初です。

 もともとはリクルートに1992年に入社しまして、2年半は毎日地獄の営業をやっていました(苦笑)。7年くらいいましたね。企画としては、フランチャイズチェーンのオーナー募集の支援などをやっていましたが、それが進化して雑誌のアントレとなり、その企画をしばらくやっていました。


小川氏
 なるほど。


小林氏
 アントレをやりながら気づいたのは、新興企業も直接金融可能な時代が来たということ。そして、モバイルビジネスの時代が近づいてきたことでした。だから携帯電話のコンテンツ配信会社「エムティーアイ」に移籍したわけですが、すぐにハイジというアクセルマークの前身のベンチャーに出会い、僕は自ら出資をしてハイジに転籍しました。


小川氏
 アクセルマークはセプテーニの傘下なんですよね。


小林氏
 僕が社長になろうとした、ちょうどそのころにセプテーニが出資してくれました。過半数を持っています。セプテーニグループは、インターネットを介した広告、課金、物販の商売をする会社です。われわれは課金サービスのところにフォーカスしています。


CDやDVDのレンタル事業から、モバイルコンテンツ事業へのパワーシフトが起きる

小川氏
 さきほど動画に注力していくと話しておられましたね。どんな事業を考えておられるのですか。


小林氏
 うちはワーナーブラザーズ系のコンテンツを、コンテンツプロバイダーとしてはほぼ独占しています。例えば、ハリーポッターとマトリックスです。旧作品も掘り出し物として提供しています。


小川氏
 なるほど。


小林氏
 僕はケータイはウォークマンになると確信していたんですよ、ケータイの回線が太くなれば必ずそうなると。

 着メロから着うたに変わった瞬間に、音楽マーケットを確信して、音楽コンテンツの販売に着手しました。98年からいまに至るまで、CDの売上は下がり続けています。でもJASRACの使用料収入は横ばいなんです。つまり、モバイルでの音楽購入に移行しているだけなんですね。

 そして同じように、音楽の次は動画ビジネスがモバイルに移ると思っていました。3.9世代になると、光の速度と変わらない下りの速度が実現されますから多チャンネルの時代になるのは間違いない。ケータイ自体がセットトップボックスになる時代がくるはずなんです。


小川氏
 モバイル、という意味では同感です。


小林氏
 Bluetoothでは無理かもしれないですが、テレビにケータイをつないで動画を見るというのは、いかにもありそうです。ビデオレンタル屋の代わりにケータイがなるわけです。広告付きか、有料かは別として、モバイルにコンテンツがどんどん集まるでしょう。


小川氏
 映画をケータイで見るのは、電話やメールが入ってくるのでちょっとどうかなとは思いますが…。


小林氏
 ドコモの山田社長は、15分以内の動画でないと視聴者がぐっと減るとおっしゃっていました。その意味では、6分くらいのチャプターに切って提供というのがいいかもです。


小川氏
 ケータイにはiPhoneみたいな機内モードってついてましたっけ?


小林氏
 いえ…?


小川氏
 iPhoneでもし映画を見るとしたら、機内モードにして、電話やメールでの中断がないようにすればいいですよ。もっとも、そんな長い時間、電話を使えなくするのはどうかな、と個人的には思いますけど(笑)。


小林氏
 なるほど。機内モードをそういう使い方するのは考えなかったな。


コンシューマーのCではなくクリエイターのCの世界を支えるプラットフォームへ

小川氏
 ちなみに動画はバッテリを食うじゃないですか。そのあたりはどうお考えですか。


小林氏
 それは誰かが解決してくれるだろうと(笑)。他力本願ですね。

 コンテンツ作成をしているクリエイターの作品をマネタイズすることが僕たちの使命だと思います。最終の目標はパーソナルというか、才能がある個人がネットを使って活躍していくプラットフォームとなることです。

 お布施課金というか、10億人が1円払えば10億円になるわけですから。


小川氏
 なるほど(笑)。


小林氏
 僕たちはCDアルバムしか買わないですけど、高校生くらいだとCDシングルを買うおこづかいくらいしかない。それがケータイの300円に変わってきたと見ています。

 電子書籍はカラー端末で漫画もカラーになるし、バイブ機能で衝撃も伝えられるわけで、漫画雑誌は電子書籍に取って代わられるでしょう。動画はDVDレンタルからケータイ動画に変わっていくだろうと考えるわけです。

 ただ、現在のそうしたコンテンツは、プロが制作しているものです。でもネットの主役は既に消費者になっており、プロに限りなく近い素人がたくさんいることがだんだんみえてきたわけです。


小川氏
 そうですね。


小林氏
 最近僕は、Twitterでそういう人達をフォローしているんです。企業に関わらないと作品を出せなかった人達が、たくさんいるんですよ。

 いまはB2Cといえば、コンシューマーのCですが、それがいつかクリエイターのCに変わる世界があると思います。そういう世界のプラットフォームになりたいですね。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2010/4/13/ 09:00