Windows 7の新機能「Windows XP Mode」を使ってみる


 5月7日に国内ユーザー向けに一般公開されたWindows 7 RC(製品候補版)。限りなく製品に近いバージョンとなったRCで、新たに用意されたのがWindows XP Modeだ。Windows XP Modeを利用することで、Windows 7上で動作しないアプリケーションを動かせるのが最大の特徴となっている。サーバー関連の仮想化情報を紹介している本連載ではあるが、企業ユーザーにとって関心が高まるであろうWindows XP Modeを今回紹介する。

【10/23追記】Windows 7およびWindows XP Modeともに正式版が公開されたので、記載内容に違いのある部分のみ加筆・修正を行っています。


Windows XP Modeとは?

 Windows XP Modeは、ホスト型の仮想化ソフト「Windows Virtual PC」を利用することで、Windows 7では動作しないアプリケーションを使えるようにするものだ。Virtual PC上でWindows XPを動作させ、その中でアプリケーションを実行し、Windows 7のデスクトップでウィンドウの状態でアプリケーションを表示する機能を持っている。

 これまでもVirtual PCなどのホスト型の仮想化ソフトを使えば、古いアプリケーションを利用することはできた。しかし、デスクトップ上に別のデスクトップが表示されるため、利用する側からは別々のシステムにアクセスしている感が強く出てしまうのが欠点だった。

 今回公開されたWindows XP Modeは、デスクトップ環境を表示することなく、アプリケーションのウィンドウだけをWindows 7のデスクトップ上に表示できる。これがホスト型仮想化ソフトをそのまま使う場合と大きく異なる点だ。アプリケーションウィンドウで表示されるため、利用者からはWindows 7のアプリケーションと同じ感覚で利用できる。

 このWindows XP Modeは、Windows 7の標準機能として提供されない。マイクロソフトによると、Windows 7 Professional以上のエディションのユーザーに対して無償ダウンロードという形で提供するほか、PCベンダー側でWindows 7にWindows XP Modeをプリインストールして提供することになるようだ。また、PCそのものも、Intel VTやAMD-VといったCPUの仮想化支援機能がないと動作しないので、Windows XP Modeを利用する場合はこれらの仮想化支援機能に対応しているPCを用意する必要がある。


Windows XP Modeの使い方

 Windows 7でWindows XP Modeを利用するには、Virtual PCを有効にするための更新ファイル(x86版・x64版)とWindows XP Modeの2つのファイルをインストールする必要がある。Virtual PCは仮想環境をWindows 7上に構築するためのもので、Windows XP Modeは、Windows XP Professional SP3環境を仮想ハードディスクにあらかじめ組み込んだもの。Windows XP Modeのインストール用に2GB、仮想環境用に15GBの空き容量が必要だ。どちらもマイクロソフトのサイトで公開されているので、両方をダウンロードしておこう。ダウンロード後は、Virtual PC、Windows XP Modeの順にインストールする。

 インストール直後に、Windows XP Modeの初期設定を行うかどうか確認されるので、チェックを入れて初期設定を行う。すべての設定が終了すると、Windows XP Modeのデスクトップ画面が表示される。インストール直後はアプリケーションの設定などは行われていないので、ここからは自力でアプリケーションを登録する必要がある。一般的なアプリケーションと同様にインストーラを使ってインストールすれば、Windows XP Modeアプリケーションとして利用できる。なお、直接実行するタイプのアプリケーションの場合、スタートメニューのプログラムにショートカットを登録すれば、Windows XP Modeアプリケーションとして利用できる。


Windows XP Modeのインストール直後に表示される画面。ここで[Windows XP Modeを開始する]にチェックを入れれば、続けて初期設定画面が表示される[Windows Virtual PC]の下にWindows XP Modeが入っている。インストール直後は、Windows XP Modeのアプリケーションは表示されていないWindows XP Modeのディスクサイズは126GB。容量可変の仮想ハードディスクなので、このサイズと同等の空きがなくても利用可能

Windows XP Modeアプリケーションとして利用したいアプリケーションを、Windows XP Modeのデスクトップ上でインストールするアプリケーションインストール後のスタートメニュー。[Windows XP Modeアプリケーション]の下にインストールしたアプリケーションのショートカットができているのがわかる起動するとウィンドウ状態で表示される。タイトルバーなどはWindows XPスタイルで表示されている

 インストールすると、スタートメニューに「Windows Virtual PC」という項目ができている。その中に、「Windows XP Mode」という項目がある。これがWindows XP Modeで利用される仮想マシンだ。初回起動時にアプリケーションをインストールしなかった場合や、あとから追加したい場合に、このWindows XP Modeを起動し、仮想デスクトップにアクセスする。

 [Windows XP Modeアプリケーション]に表示されているショートカットをクリックすれば、Windows XP Modeにインストールされているアプリケーションを起動できる。ウィンドウ状態で表示されるので、Windows 7にインストールされているアプリケーションと同じ感覚で利用できる。

 また、Windows XP Modeは、USBデバイスもサポートしているので、Windows 7用のドライバが用意されていないUSBデバイスをWindows XP Modeで利用することも可能。とはいえ、今回テストした環境では仮想アプリケーションモードで動作したときと、仮想デスクトップモードで動作したときで、USBデバイスへのアクセス方法に違いが生じていた。このあたりは実際に利用する前に十分な検証が必要だろう。

Windows XP Modeアプリケーションからみたドライブ構造。Windows 7のドライブはコンピュータ名とともに表示されている。デスクトップはWindows XP Modeのデスクトップであり、Windows 7のデスクトップではないので注意が必要だ

 Windows XP Modeを利用する場合、いくつか注意点がある。まず、仮想マシン上で動作しているので、Windows 7で動作しているアプリケーションほどにはスムーズではない。また、ウィンドウで表示されてはいても、別のデスクトップのアプリケーションなので、ドラッグアンドドロップでの操作もできない(コピーなどクリップボードを経由したデータのやりとりは可能)。ドライブに関しても、仮想マシンのドライブがCドライブに割り当てられているので、Windows 7で使用しているドライブと完全に一致しているわけではない。

 マイクロソフトは、Windows XP Modeを古いアプリケーションを動作させるための最終手段と位置づけている。つまり、Windows 7の互換モードでさえ動作しないようなアプリケーションを実行するために用意したもので、標準環境として使うことまでは想定していないというわけだ。

 個人的には、Windows XP Modeは64ビット版Windows 7でこそ効果が出るものとみている。64ビット版であれば、メモリ空間に余裕があり、Windows XP Modeに十分なメモリを割り当てることが可能だ。なにより、64ビット環境で動作しないアプリケーションはまだまだ多く、そういったアプリケーションをWindows XP Modeで動作させられるのは、利用者にとって大きなメリットになるだろう。





(福浦 一広)

2009/5/11/ 00:00