Windows 7/Windows Server 2008 R2に正式対応したVMware ESX/ESXi 4 Update 1


 4月に発表されたVMware ESX/ESXi 4やvSphere 4が、VMware View 4の提供にともない、大規模なアップデート(Update 1)が行われた。今回は、ESX/ESXiとvSphereのアップデートの内容を紹介していこう。


Windows 7/Windows Server 2008 R2に対応

ESXiのインストール画面。ビルド番号は208167となっている

 今回のUpdate 1では、新たにWindows 7/Windows Server 2008 R2に対応した。これにより、Windows 7では動作しなかったvSphere Client 4.0がUpdate 1で動作するようになった。

 ただし、Update 1ですべての機能がサポートされたわけではない。VMwareのドキュメント上では、vSphere Client 4.0 Update 1はWindows Server 2008 R2で動作しないことになっている。とはいえ、実際に試してみると動作する。このあたりは、VMwareでは保証していないということなのだろう。


仮想CPU数のアップ

 1CPUコアあたりの仮想CPUの上限が引き上げられた。今までは、1CPUコアあたり20となっていたが、Update 1では25にまでアップされている。これにより、より効率のいい仮想環境の運用が行えることになる。

 ただ、1CPUコアにどれだけの仮想CPU数を割り当てるのかは、実運用環境を見て、ワークロードを調べるなど、きちんとしたシステム設計が必要になる。


準仮想化SCSIサポートの強化

 仮想環境にWindows Server 2003/2008をゲストOSとしてインストールする場合、準仮想化SCSIドライブは起動ドライブとしては使用できなかった。しかし、Update 1では、準仮想化SCSIドライバ(PVSCSI)の機能を強化することで、PVSCSIをWindows Serverのインストール時にオプションドライバとしてインストールできるようになった。これにより、PVSCSIドライバを使った仮想SCSIドライブを起動ディスクとして利用できる(フロッピーディスクのイメージとしてロードする)。


vNetwork分散スイッチのパフォーマンス向上

 ESX/ESXi 4では、ホストの負荷が重いときに、vNetwork分散スイッチ(vDS)の変更に時間がかかった。しかし、ESX/ESXi 4 Update 1では、ホストの負荷が高いときでも、vDSの設定変更をスピーディに行えるようにした。同じように、vDSにESX/ESXiホストを追加したり、削除したりする操作のスピードもアップしている。


Microsoft Windowsクラスタリング機能のサポート強化

 Update 1では、Microsoft Cluster Server(MSCS)が、VMware HA(High Availability)とDRS(Dynamic Resource Scheduler)クラスタでサポートされるようになった。仮想環境ごとに、VMware HAやDRSの機能をオン/オフできる。これにより、特定の仮想環境だけでMSCSが利用できるようになった。今までは、MSCSを使おうとすると、ESX/ESXi4ホストすべてでVMware HAとDRSの機能をオフにする必要があった。これから考えると、仮想環境ごとに設定ができるのは便利になった。

 ただし、すべてのMSCS環境というわけではなく、Windows 2000 Server、Windows Server 2003、Windows Server 2008などの限られた環境での限定サポートとなる。


Xeon 3400シリーズのサポート

 このほか、シングルソケットのサーバー用CPUであるXeon 3400シリーズ(開発コード名Lynnfield)がサポートされている。最終確認をしたわけではないが、デスクトップのCore i7 800シリーズ、Core i5 700シリーズでも、ESX/ESXi 4を動かすことができるようになるだろう。


vCenter Server 4のアップデート

vCenter Serverのアップグレードパス。表になっているため、どのバージョンから、どこへアップグレードできるかすぐ分かる

 ESX/ESXi 4 Update 1のリリースと同じタイミングで、vCenter Server 4もUpdate 1がリリースされている。

 vCenter Server 4 Update 1では、バックエンドのデータベースとして、IBM DB2 9.5 がサポートされた。また、ゲストOSとして、正式にWindows 7とWindows Server 2008 R2がサポートされた。ただし、vSphere Clientは、Windows 7しかサポートされていない。

 vCenter Serverのアップデートを行ったときに、管理対象のESX/ESXi 4がきちんと管理できるのかをチェックするアップデートチェッカーツールも用意された。このツールを使えば、vCenter Serverのアップグレードが正常に行われたあとにESX/ESXi 4の管理にトラブルが起きないよう、事前にESX/ESXi 4の構成、ネットワーク、ディスク容量などをチェックすることができる。

 このほか、vCenter Server 4 Update 1では、8台以下のホストを持つ1つのHAクラスタの場合、ホストあたり160台の仮想マシンをサポートする。ただし、9台以上のホストを持つクラスタの場合、ホストあたりの仮想マシンの最大数は40台と変わらない。また、HAクラスタの最大台数として、1280台の仮想マシンをサポートするというのも変わらない。


VMwareも64ビットのみサポートする方向に

 ESX/ESXi Update 1のリリースにあわせて、今後の製品計画などが発表されている。

 まずは、vCenter Serverを動かすOSに関してだ。現在vCenter Serverは、Windows Serverの32ビット/64ビットの両方で動作する。しかし、VMwareからの注意点として、「VMware vCenter Serverの今後のリリースについては、32ビットのWindowsオペレーティングシステムへのインストールがサポートされない可能性があります」となっている。最新のWindows Server 2008 R2が64ビット版のみになったため、今後は開発の軸足を64ビット版のWindows Serverにシフトするということだろう。

 今回公開されたESX/ESXi Update 1は、32ビット版のWindows ServerでもvCenter Serverは動作する。しかし、早ければ2010年にリリースされるUpdate 2は、64ビットに全面移行しているかもしれない。こういったことを考えれば、これからvSphereを導入する場合、64ビット版のWindows Server環境で構築することをおすすめする。Virtual Center 2.xを32ビット版のWindowsで利用しているユーザーは、VMwareが用意しているアップグレードガイドに従えば、データベースを保持したまま移行できる。

 もう一つ、VMwareがVMFSバージョン2を今後サポートしなくなる可能性を表明している点も重要だ。vSphere 4では、VMFS 2はリードオンリーになっている。しかし、リードオンリーの機能さえも、将来のvSphereではサポートされなくなるということだ。

 今後、ESX 2.xなどの古い世代のフォーマットや機能は、サポートされなくなる可能性が高い。VMwareでも、さまざまな部分で下位互換性が問題になってきそうだ。もし古い世代のESXを使用しているなら、新しいESX 4にアップグレードしていく準備をした方がいいだろう。

 これ以外にも、以前はESXi上のLinux上にVMware Toolsをインストールするときは、ISOイメージが利用できた。しかしESXi Update 1では、VMware Tools RPMインストーラが利用できなくなっている。このため、LinuxにVMware Toolsをインストールするには、tar.gzインストーラを使用することになる。




 VMware ESX/ESXi 4 Update 1とvCenter Server Update 1は、ここで紹介した以外にも、さまざまなバグが修正されている。また、修正できなかった既知の問題もリスト化され、回避策などが紹介されている。

 今回のアップデートは、vSphere 4やESXi 4を利用しているユーザーはぜひとも適応すべきだろう。また、今後のロードマップに関しても、VMFS 2のサポート停止、vCenter Serverの64ビット化などが上げられている。このため、古い環境を利用しているユーザーは、そろそろ新しいESX/ESXi 4やvSphere 4への移行を考えた方がいいだろう。

【12/13追記】
 VMwareは、vSphere 4.0プラットフォーム用の最初のアップデートを11月23日にリリースした。これはVMware View 4.0、Windows Server 2008 R2、そしてWindows 7ゲストOSを新たにサポートしていることから、顧客がVDIのインプリメントもしくは評価を進めている場合、特に重要なものとなっている。

 Update 1ではほかにも、コンフィギュレーションの問題を特定し、アップグレード中のダウンタイムを最小限に抑える「Pre-Upgrade Checker Tool」を新たに搭載している。だが残念ながら、このパッチ自体がダウンタイムを引き起こすようで、VMwareはESXの部分を12月10日に「ESX 4.0 Update 1A」として再度リリースしている。





(山本 雅史)

2009/11/30/ 00:00