Enterprise Watch
バックナンバー

「Life-Xでネット上の個人データを一元管理」ソニーマーケティング伊東氏


 今回のゲストは、ソニーマーケティング インテグレーテッドビジネス推進部の伊東大輝さんです。鳴り物入りで登場したネットサービスのLife-Xは、ハードウェアとWebをつなぎ、動画や写真などのパーソナルデータを一括管理していくという野心的なサービスです。


ソニーマーケティング・伊東氏 伊東 大輝(いとう だいき)
ソニーマーケティング株式会社 インテグレーテッドビジネス推進部 ビジネスプランナー

2006年4月 ソニー株式会社入社
ネットビジネスを担当するソニースタイル・ジャパン(株)法人向けビジネスを担当
2008年7月~ ソニーマーケティング株式会社にて、Life-Xビジネスプランニングを担当


ハードウェアとネットをつなぐライフログ・シェアリングサービス

小川氏
 伊東さんは入社3年目だそうですね。


伊東氏
 はい。大学を卒業後、2006年にソニーに入りました。すぐにソニースタイルに出向となって法人向けの営業をしていました。学生時代にベンチャーの立ち上げに携わっていたたことがソニースタイルの社長に伝わって、ネットビジネスにかかわるようになりました。


小川氏
 現在、Life-Xのビジネスプランナーということですが、まずLife-Xそのものを説明していただけますか?


伊東氏
 昨年の11月に一般公開したサービスなんですが、ライフログ・シェアリングサービスと呼んでいます。つまり、さまざまなネットサービスでアップロードしている写真や動画などのデジタルデータを、一元的に管理してほかの人とシェアをするためのサービスです。同時に、さまざまなハードウェア、機器間を結ぶクラウド的なサーバーという顔も持っています。


小川氏
 というと?


伊東氏
 例えば、現在PCや携帯電話はもちろんですが、当社の液晶テレビである「BRAVIA」やゲーム機のPS3やPSPなどの機器からも利用できるサービスになっています。ネット接続しているコンテンツの表示先のテレビを特定したり、あるいは別の機器で加工したデータをテレビで表示したいときには、テレビの機体情報を管理する機能をネット側に持っていないとプッシュできないですから、その仲介役になっていくことを目指しています。


KDDIとの連携でケータイからテレビにポストカードを送る

小川氏
 そのステップは進んでいますか?


「〈ブラビア〉ポストカード」サービス
伊東氏
 「〈ブラビア〉ポストカード」というサービスを3月中旬に立ち上げます。auの携帯電話から写真とメッセージを送ると、BRAVIAの画面に自動的にデザインされたポストカードを表示できるようになります。ケータイからポストカードを出すようなイメージですが、裏の仕組みはLife-Xが支えています。


小川氏
 ソニーのハードウェアとの連携を進めていくわけですか? iTunes StoreとiPodの関係のように。


伊東氏
 いえ、メーカーは問わない方向で考えています。ソニーが作っていない製品ともつなぎたいですから。現在は写真と動画とウェブクリップとブログとメモを扱っていますが、例えば体重計をネットにつないで、測定した体重をアップすることもいい。


小川氏
 Appleのような囲い込みをしないこと自体はユーザーとしてはうれしいことですが、ビジネスモデルの成立が難しくないですか? サービス自体はいまのところ無料ですよね? となるとネットサービス連携によって、ハードウェアを高く売ることでもうけるというAppleの戦略をまねた方がよい気がしますが。


伊東氏
 もちろんその戦略も視野に入れておりますが、一方でLife-Xそのものにプレミアサービスのようなものを作って課金するという手段もあるかもしれないし、広告を考える時期もあるかもしれません。いまは検討しているところです。収益を出さないといけないというステージというわけではないので。


小川氏
 それはうらやましい(笑)。


伊東氏
 それにAppleはiPod用のネットサービス、Life-Xはオープンであるというスタンスが有利に働くこともあるでしょう。


お年寄りにも受け入れられる分かりやすさをまず考える

小川氏
 サービス自体の特長をどう出していくんでしょう? 僕はユーザーが積極的にライフログをネットに発信していくことを支援するサービスをライフストリーミングサービスと呼んでいますが、この手のサービスは最近世界中で増えています。


伊東氏
 まだ模索しているというのが本音です。例えば米国で人気のFlickrとかFriendFeedは、まだ日本人は使いこなせてないですよね。Life-Xはソーシャルブックマークであり、ブログのRSSを取りまとめる機能があって、それはFriendFeedなどと同じですけど、そこを強調しても多くの日本人はピンとこないでしょう。だから、Life-Xでは自分で書いているブログを新しい友達に見せてあげることができるよ、とか、写真や動画を家族に見せられるよ、という言い方をしています。

 最新のネットサービスは便利ですけど、お年寄りが使いこなすには敷居が高いです。でもテレビにポストカードが届く、というのなら分かりやすいだろうと考えるわけです。ああ、そんなことができるんだ、という気づきをまず与えることが重要だと考えています。


小川氏
 そうですね。


伊東氏
 モディファイのSMARTも基本的に似てるサービスだと思います。ユーザーインターフェイスの違いですよね。

 ソニーがとった戦略はFlashを使ってタイムラインで見せることと、パソコンだったりテレビでポストカードのような親しみやすい見せ方をすることが戦略ですね。遠くは慣れたおじいちゃんおばあちゃんに写真を送ってあげたら喜ぶよね、というイメージならばストーリーが作りやすいと思います。


小川氏
 ただ、それ自体がまだ敷居が高い気がするんですよね。結局はアーリーアダプタを取り込まないとならないのでは?


伊東氏
 確かに、まずはアーリーアダプターの方に使っていただいて、評価していただくことが重要でしょうね。FriendFeedも知っているし、SMARTも知ってるけど、Life-Xも使ってみようかと思っていただければ。アルファブロガーの方などにもぜひ使っていただき、ご意見を受けて機能の向上・改善を重ねていきたいと思っています。


小川氏
 エッジなサービスには顔が必要だと思うんですよ、ブランディング上。アイコンというか。伊東さん自身がもう少し自分が前に出て、顔を売られたらどうですか?(笑)


伊東氏
 それは考えてなかったです(笑)。


ハード屋ならではの提案を能動的にしていきたい

小川氏
 ネットサービスとネット家電というアプローチはみんなが狙った市場ですが、いまのところはApple以外はうまくいってないですね。音楽だけでなく、NIKE+のようにジョギングというリアルな情報をネットに気軽にアップさせるということにも成功している。この現状をどう打開しますか?


伊東氏
 そうですね。残念ながら現在のソニー製品は常にネットにつながっているわけではないから、そこは追いつきたいですね。Life-Xはそのきっかけになるサービスだと思うんですよ。実際、Life-Xはソニー社内でもコンセプトが理解されやすいサービスです。

 また、モディファイさんもそうですし、さまざまなネット企業のアプローチはWeb側からの提案だと思います。われわれはハードウェアの提供者ならではの提案をしていきたいと思います。


小川氏
 逆にLife-Xありき、で何か端末を作ってしまうのも面白そうですよね。アマゾンとKindleみたいな?


伊東氏
 やってみたいですね。Life-Xでもラボがあって多角的な試みを今後続けていきます。


小川氏
 分かりました。また別の機会で突っ込んだ話もさせてください(笑)。今日はありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2009/03/10 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.