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IDC、「エンタープライズグリッドの市場規模は4年後、40倍になる」

市場動向セミナー 講演

 IDC Japan株式会社は4月28日、同社の調査結果に基づいた市場動向の概要を説明する「市場動向セミナー」を都内で開催した。その中で米IDCテクニカルコンピューティング&インフラストラクチャープログラム リサーチマネージャーのジョン・ハンフレイズ氏が米国の調査結果を基にグリッドコンピューティングの現状と今後の予想について講演を行った。


企業がグリッドに望むことは「コスト削減」

米IDCテクニカルコンピューティング&インフラストラクチャープログラム リサーチマネージャー ジョン・ハンフレイズ氏

サーバーへの投資金額と内訳の推移
 次世代のITインフラとしてグリッドコンピューティングが注目され、ここにきて大手ITベンダーからこれを実現する製品が発売されはじめているが、これが業務で実用化されると何が変わるのだろうか。米IDCの調査結果によると、企業がグリッドコンピューティングに期待を寄せる事項として、(1)ITの管理・運用コスト削減、(2)サービスレベル・可用性の向上、(3)ビジネス環境の変化へのITの柔軟な対応、の3つが挙げられているという。

 その中でも管理・運用コスト削減への期待は大きい。米IDCの調査・予測によると、米国企業においてサーバーに関する投資金額は今後導入されるハードウェアの数とともに年々増えていくが、その内訳を見るとハードウェア導入への金額はほぼ横ばいで、管理・運用コストだけがどんどん上昇していくという。この理由を同氏は「導入されるハードウェアの増加により管理・運用コストは増大するが、一方で機器のコモディティ化も進むためトータルの導入コストはさほど変わらないと予想できるから」と説明する。さらに、「数年前、管理・運用コストは導入コストの数分の1程度だったが、今後は数倍に膨れあがるだろう」と付け加えた。

 それでは、その管理・運用コストはどういったことに使われているのだろうか。同氏によると「人手によるソフトウェアの展開やプロビジョニング、さらにパッチインストールなどの単純作業の繰り返しがかなりの割合を占めている」とのこと。さらに「その額は米国全体で年間950億ドルになる」と、同氏は強調する。これらをグリッドコンピューティングによって自動化し、コストを削減したいというのがユーザーの本音のようだ。


グリッドが進む二つの方向性

グリッドが進む方向性
 現在のグリッドコンピューティングは、主にリソースを連携することで処理の高速化を目指す「ハイパフォーマンスグリッド」と、リソースをプールすることで利用効率の向上を目指す「トランザクショナルグリッド」の2つの方向で進化が続いている。

 ハイパフォーマンスグリッドはさらに科学演算などを目的にスループットの向上を追求する「コンピュートグリッド」と、情報の統合化を目的とした「データグリッド」の2つに分かれるが、どちらもユーザーは官公庁や大学、研究機関などが主でソフトウェアなどは自社で開発する傾向があり、コンピュートグリッドでは市場機会の80%をハードウェアが占める。IDCではコンピュートグリッドの市場規模は現在5億ドルあり、2007年には30億ドルに達すると予想しているが、「ハードウェアが占める割合はあまり変わらないだろう」(同氏)とのこと。

 これに対しトランザクショナルグリッドは、主に企業での利用が中心となる技術だ。ただし現在は提供されるアプリケーションやサポートが少ないため基幹業務などでの利用には至っていない。市場規模も約2億ドル以下とハイパフォーマンスグリッドに比べると小さい。しかし研究機関などと比べて外部のソフトウェアやサービスなどを積極的に利用する傾向が強い企業が対象となるため、期待できる市場規模も大きい。同氏は「2007年には80億ドルにまで拡大し、ハード・ソフト・サービスの割合がほぼ均等になるだろう」と予想する。


グリッドは生産性を高める手段としてとらえる必要がある

 このようにIDCでは今後爆発的とも言えるグリッドコンピューティング市場の拡大を予想している。しかし、「新しい技術が故にリスクも伴う“技術的問題”、費用対効果が見えづらい“経済的問題”、そして最も関心の高い可用性やセキュリティといった“文化(心理)的問題”などさまざまの課題もある」と同氏は指摘する。

 これらを克服するためには、ベンダーやISVなどから信頼性のある製品やサービスの提供が不可欠となる。さらに同氏は、「まったく新しいものとしてでなく既存のITインフラに追加するものとして提供されないと導入は進まない」とし、企業ユーザー側に対しては「コスト削減もさることながら、生産性を高める手段としてとらえられるようになったときに、グリッドの普及は加速するだろう」と語った。



URL
  IDC Japan株式会社
  http://www.idcjapan.co.jp/


( 朝夷 剛士 )
2004/04/28 22:31

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