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「高い、難しい」イメージの転換を図るオラクル


 日本オラクル株式会社(以下、オラクル)は9月17日、プレス向けのセミナーを開催し、その中で同社のクロスインダストリー統括本部が中心となって取り組んでいる、中堅・中小企業市場(以下、SME市場)へのアプローチについて説明を行った。


巨大な未到達マーケットを開拓する

執行役員 クロスインダストリー統括本部長 三澤智光氏
 同社の執行役員でクロスインダストリー統括本部長の三澤智光氏によると、同社はこれまでエンタープライズ市場に注力してきたため、売上高3000億円以上の企業セグメントに関しては堅調にビジネスが推移しており、そのうち95%がオラクル製品を利用しているという。しかし、これが300億円以上3000億円未満のセグメント(ミッドレンジ、約4000社)になると、オラクル製品利用企業の割合は、60%になる。残りの40%がまったく利用していないかというと必ずしもそうではないというが、少なくとも同社では把握しきれていないエリアになる。

 さらに、これが売上高300億円未満のセグメント(SMB、約12万社)になると、利用率は15%にまで落ちてしまう。しかし同社では逆に、まだアプローチしきれていない、ミッドレンジ領域の40%、SMB領域の85%におよぶ企業群を「すべてホワイトマーケット」(三澤氏)としてとらえており、ここに積極的に打って出る意向をかためているという。

 その三澤氏が統べるクロスインダストリー統括本部は、これら売上高3000億円未満の企業を対象とした事業を行うところだが、同氏は「事業部が新設されて1年ちょっとで、現在では当社社員のほぼ1/10にあたる160名が所属するようになった。これだけの人間をSME専任に配置したということ」と述べ、うわべだけの取り組みでないことを強調する。


顧客カバレッジの向上こそが機会を生み出す

顧客カバレッジ向上に向けたオラクルの体制
 その三澤氏はまた、実際にどういう取り組みを行っていくのか、という点に関して「まず、エンタープライズ向きになっている営業やSEのマインドを変えていく」とする。現状、オラクルは「高飛車だ」とか、オラクル製品は「高い」「難しい」というイメージを抱かれているが、こうしたオラクルに対するイメージを変えるために、「まずはオラクル自身がSME市場に対する認識を変える必要がある」(三澤氏)というのである。

 具体的には、クロスインダストリーの営業が4,000社のミッドレンジ企業すべてにコンタクトをとる。従来はパートナーに任せきりのエリアであったため、「今さら何しにきた」と怒られることも多いそうだが、それでもほとんどの顧客が会ってくれるという。他社ではこうはいかないだろうとした三澤氏は、この強みを生かし、顧客との間にパイプを作っていくと述べた。

 またクロスインダストリー営業だけでカバーしきれない部分や、SMBマーケットに関しては、総合窓口であるOracle Directを活用して顧客カバレッジを向上させる考え。「こういた手法によってカバレッジをあげれば、商談も増えるだろう」と三澤氏は述べ、こうした顧客に対するクロスセル、アップセルやリプレース案件を掘り起こしによって、売り上げの拡大を狙う意向を示した。

 しかし、顧客へ直接アプローチをするとはいえ、「オラクルが直接ライセンスを販売することはない」(同氏)と、オラクルではこれまでと同様、間接販売に徹する。このため、エンタープライズ層を含めた全セグメントで、パートナーとの協業を推進していくという。

 この最大のものが、2003年9月に発表されたデルとの協業だが、クロスインダストリー統括本部 営業推進部 ディレクターの遠藤哲氏は「デルにおけるオラクルビジネスは前年対比で600%向上した。また、デルの営業を支援することで、顧客満足度の向上にもつながったし、デルからオラクルのライセンスだけを購入する顧客も増えた。なにより、全案件中4割が新規の顧客だった」と述べ、順調に推移していることを強調した。


「高い」「難しい」をOracle 10gで払しょくする

マーケティング本部 システム製品マーケティング ディレクター 杉崎正之氏
 一方、オラクルブランドについてしまった「高い」というイメージを覆すための戦略も忘れてはいない。マーケティング本部 システム製品マーケティング ディレクターの杉崎正之氏は「Oracle 10gには、SMEにヒットする製品という性格もある」と述べる。「一般には、SQL ServerとOracle Databaseを比べた場合、スケーラビリティやセキュリティではOracleが優れているとされていても、価格や導入・管理のしやすさではSQL Serverが勝っているといわれていた」(同氏)。

 しかし、現在のOracle 10gではこれらの欠点も解消されたという。まず価格面では、新たに投入された「Oracle Database 10g Standard Edition One」とSQL Serverについて言及。「CPUライセンスの場合はSQL Server 2000 Standard Editionの2/3で、5指名ユーザーは同様に1/3の金額で購入できる」と、Oracle 10gの価格の安さを強調する。

 さらに同氏はクラスタ構成の場合に触れ、2CPU/2ノード構成時では「SQL Serverであればアクティブ-スタンバイ構成しか組めない金額で、Oracle 10gならアクティブ-アクティブ構成が可能。また単純なHAならSQL Serverの1/6の価格でできる」と述べた。

 またOracle Application Server 10gでも、競合製品より安いか、等価格で機能が高いと述べた上で、さらに次期バージョンでは廉価版「Standard Edition One」を投入するとしたほか、1,980円で販売されているOracle JDeveloper 10gの1年限定版によって、開発者向けにも安価な製品が提供できたため、販売本数シェアがかなり伸びていることを強調していた。

 管理面でも、以前の3時間級のインストールが今では20分程度に短縮されたこと、初期コンフィグレーションが自動化されたこと、GUIが改良されたことなどをあげる。加えて、「10gの出荷が伸びたのは、基本コンポーネントの改良を行っていたからではなく、ユーザービリティの改良のため」と述べ、この面でも改善がきちんとなされたと主張した。


 オラクルではこのほか、オラクル製品をバックエンドとして利用するISVの支援も、これまで以上に積極的に行っていく考えを持っており、Oracle 10gによる“改善点”と、新たな顧客アプローチによる市場掘り起こしなどとあわせ、「SME市場での売上20%増」(三澤氏)、「Windows上でのシェア60%」(杉崎氏)を目指して、日々努力していくとのことだ。



URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/

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( 石井 一志 )
2004/09/17 18:58

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