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NEC川村副社長「LinuxをUNIX、Windowsに続く第3の事業の柱に」

各種施策で基幹システムへのLinux適用を拡大へ

 日本電気株式会社(以下、NEC)は9月27日、Linuxを用いたミッションクリティカルシステム構築において、プラットフォーム、SI、サポートを3つの軸として、UNIX、Windowsに続くオープンシステム事業とすることを発表した。

 NECでは「NEC エンタープライズLinuxソリューション for MC」の発表にあわせ、Linuxサポートサービスを新たに体系化し、OSに関する保守サポートを強化した「Linux拡張サポートサービス」の提供を9月27日より開始する。さらにサーバー、ストレージ、ミドルウェアを含めたシステム全体での高可用性をサポートする「システムサポート/HAサポート」の対象として、これまでのUNIX、Windowsに加えてLinuxを追加する。


NEC 代表取締役副社長 川村敏郎氏

Linux関連市場は2007年に4500億規模へ

携帯電話用主力OSとしてもLinuxを採用していく
 NECではこれまで9年以上にわたって、OSには当初HP-UXを用いたオープンシステムによる基幹システム構築に対して大きな経営資源を投入してきており、「オープンによるミッションクリティカルへの取り組みは、業界のトップと自負している」(NEC 代表取締役副社長 川村敏郎氏)。その後Windowsによる中小規模の基幹系システムにも注力し、現在では同社の事業をOS別の内訳で見ると、「オープン系のUNIX、Windowsをあわせて75%を占め、すでにメインフレームは8%にまで減少している」という。

 NECでもLinuxによるシステム構築の取り組みはすでに手がけ始めており、2004年度末までには1200サイトへ2万5000台のサーバーを出荷する見込みだ。またサーバー台数でも25%の市場シェアを有している。しかし「事業規模の割合としては2%程度」とのことで、全社的に見た場合の位置づけとして、これまでは顧客の要望による個別の取り組みに終始していたという。

 川村氏は「Linuxは9年前のUNIXと同様のポジションと考えている」とし、「来るべきユビキタス社会で、LinuxはITシステムインフラとして大きな位置を占める」と予測する。NECでは、2003年のLinux関連市場規模を1800億円とみており、今後も年率25%で成長、2007年には4500億円規模にまで拡大すると推定している。これを踏まえ、「NECの企業としての中期成長戦略の柱として、Linuxソリューション事業を発展させるべく、個別ではなく組織的な取り組みとして本格化して大きな経営資源を投入していく」と語った。NECでは「数多くのオープンミッションクリティカル構築経験を注ぎ込む」ことで、Linuxを企業の基幹システムへの投入を本格化し、「3本柱としてすでに実績のあるUNIXとWindowsに、今後はLinuxを加えていく」とした。

 川村氏はLinuxの適用分野の現状については、現在ではWebサーバーやメールサーバーなどのフロントエンド、また科学技術計算などで先行しているとする一方で、もうひとつの適用分野として組込機器を挙げた。特に携帯電話用主力OSとしてLinuxを採用し、秋には市場へ投入するという。「携帯電話には数Mステップのアプリが組み込まれつつあり、その開発には多くの技術者と労力を要する。国内だけでしか通用しない独自OSでは、グローバルを視野に入れたエンジニア確保の面でも問題がある」とした。


NEC コンピュータソフトウェア事業本部長 岩岡泰夫氏
 NEC コンピュータソフトウェア事業本部長 岩岡泰夫氏は、「NEC エンタープライズLinuxソリューション for MC」におけるプラットフォーム、インテグレーション、サポートの3つの軸での具体的なLinuxへの取り組みについて触れた。

 プラットフォームでは、NECがラインアップするメインフレーム「ACOS」の次世代機種を含め、全基幹サーバーに対してLinuxの搭載を表明した。すでにUNIX、Windowsに加え、Linuxがネイティブに稼動するサーバー統合ソリューション「NX7700i」を発表している。

 OS機能としては、「よりミッションクリティカル性が強化されたカーネル2.6を搭載したLinuxディストリビューションが2005年より出荷予定」とし、NECとしては障害解析やRAS機能、資源管理などの領域にフォーカスしてコミュニティへも積極的に関与していくという。

 NECが提供するミドルウェア「VALUMOウェア」では、現状ではLinuxへの対応が遅れているものの、「今後は自律運用管理、高可用性など、ミッションクリティカル環境では必須となる機能を早期に強化していく」とした。また台数の増加に伴うサーバーの集中管理や、障害発生の際や、負荷の高まりに応じて、必要なOSやミドルウェアを管理サーバーから配布し、サーバーノードを自動的に割り当てるプロビジョニングの機能についても触れた。


3つの軸からなる「NEC エンタープライズLinuxソリューション for MC」 すべての基幹サーバーにLinuxを搭載する VALUMOウェアによるプロビジョニングのシステム構成例

3つの領域で、適材適所にLinuxを適用していく
 SIの軸では、適用領域をWebフロントエンド、中小規模の情報・基幹系、社会インフラなどの大規模基幹系に分類し、「システムの特性を生かし、適材適所で使い分けていく」とした。

 すでに多くの稼動例があるWebフロントエンド領域では、Expressサーバーやブレードサーバーなどにより、スケールアウト型のシステムを構築する。また中小規模の情報・基幹系に向けては、12月よりOS、ミドルウェア、ソフトウェアをパッケージにした“業務アプライアンス”を「検証済みのシステムとしてサポート込みで販売する」と述べ、「コスト負担をかけない形でソリューションを提供していきたい」と語った。また複雑化・断片化したITインフラを、サーバー統合や運用管理の一元化などにより最適化する「PF最適化ソリューション」を8月からすでに提供しており、これにLinuxプラットフォームを適用していく。

 また現在2400人規模のLinux SI/開発要員についても、2005年度には4800人へと倍増する計画だ。


 サポートサービスでは、「Linux拡張サポートサービス」サービスを新設する。これまではシステムメッセージに基づいて過去の事例から検索する形のサポート提供を行っていたが、ダンプを解析することで処置を行うようサービス内容が拡大された、「必要ならばオプションによるパッチ提供にも個別に対応する」とした。

 また窓口となるSMSセンター、NECカスタマーサポートセンターの2つに寄せられた情報をLinux推進センターで束ねてディストリビューターとの対応を行う。また「Red Hatに要員を派遣し、緊密な関係を築いていく」とした。このほか10月中旬には「Linux/OSS検証センター」を開設する予定だ。これについては「Linuxは多様なスタックの組み合わせとなるため、検証も重要となる」との見方を示した。


Linux拡張サポートサービスを新設、各種サービスでもLinux対応を強化 サポートの技術的な対応をLinux推進センターで一元化する


URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0409/2702.html

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( 岩崎 宰守 )
2004/09/27 19:58

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