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「石橋を叩いて渡る日本は、データセンターでの仮想化が遅れている」-シマンテック

データセンターに関する最新動向の調査レポート

マーケットインテリジェンスマネージャの金崎裕己氏
 株式会社シマンテックは11月27日、サービスレベル契約(SLA)、人材要員、コスト、複雑性の4点からデータセンターの現状を調査した「データセンターに関する最新動向の調査レポート」を発表した。

 同調査は2007年9月に米国の調査会社Ziff Davis Enterprisにより、Global 2000にランクされている各国の大企業の800名を超えるデータセンター管理者に対して行われたもの。米国、日中韓、インド、欧州各国の計14カ国で実施され、回答者数の割合は上から米国(37.0%)、日本(12.2%)、ドイツ(8.0%)となっている。


同調査から見る「グローバル」の現状

コスト削減のための戦略
 同調査結果によると、グローバルでは、データセンター管理者の課題は大きく「データセンター自体の拡張」「厳しいSLAへの対応」「人材の確保」に集約される。データセンター自体の拡張に関しては、関連支出の拡大が今後も予想され、69%の管理者が「データセンター関連支出が年率5%以上で増加していく」と回答している。

 コスト削減のための戦略としては、サーバーの統合、仮想化、定型作業の自動化、の3点を挙げる管理者が多く、実際にサーバーの統合に関しては91%が検討中、58%が導入中と回答し、サーバーの仮想化に関しては、90%が検討中、50%が導入中と回答している。ただしマーケットインテリジェンスマネージャの金崎裕己氏は、「サーバーの仮想化は主にミッションクリティカルではない環境へ導入されている状況。まだ新技術で前例がなく、ミッションクリティカルに導入するのには不安が大きいようだ」と説明している。

 SLAへの対応も課題となっており、85%が「SLAの要求が過去2年間に増大した」と回答。この背景には、コンプライアンスやBCM(事業継続管理)などの風潮のほか、データセンターの複雑化などが挙げられる。

 中には“複雑性を解消するための仮想化によって、複雑化が進んでいる”と答える管理者もいたという。金崎氏は「こうした回答の理由には、仮想サーバーの可用性やデータ復元ツールの欠如などが考えられる。これは当社のようなソフトウェアベンダの責任。当社にとっては大きなビジネスチャンスととらえている」と語った。

 ただしツールなどが充実すればよいわけでもない。それを使いこなす人材の慢性的な不足も大きな課題として挙がっているのだ。同調査によると、52%が「自社のデータセンターは現在、人員不足の状態にある」と回答。しかも、単純な頭数の問題ではなく、ビジネスとITとを同時に考えられる質の高い人材の確保が困難になっているという。


同調査から見る「日本」の現状

 日本に限ってみるとどうか。日本でもデータセンターに投じる予算は年々増加する傾向にあるが、世界全体で69%だった「データセンター関連支出が年率5%以上で増加する」との回答が日本では61%と他国と比べて低い。またその総額でみても、米国の約半分しか計上されないという。「これは日本の経営層はITへの関心が低く、ITをコストと見なす傾向が強いため。ITバブルの崩壊以降、コストと見なされるIT投資費用は削減され、IT人材に対する待遇も悪くなっている」と金崎氏は話す。

 このためますます人材確保が困難になり、「自社のデータセンターは現在、人員不足の状態にある」との回答は61%。日本を除くアジア太平洋地域が55%、世界全体で52%だったのに比べて、人材不足の問題がより浮き彫りとなっている。

 一方でSLA要求に対する問題意識は低く、「SLAの要求が過去2年間に増大した」と答えた管理者は67%と少ない(世界では85%)。これはそもそも「日本は社内で独自にSLAらしきものを手作りし対応しているケースが多く、その基準が世界標準よりも低いためではないか」と金崎氏は指摘。今後、グローバル化が一層進めば、日本でも世界標準のSLAを順守する必要が生じて、SLAに対する問題意識は増大していくだろうとの見解を述べた。


日本におけるデータセンター関連投資に関する調査結果 日本におけるSLAに関する調査結果 日本における人員不足に関する調査結果

日本は仮想化に慎重、他国より導入遅れる

データセンターへの仮想化技術の導入状況
 文化の違いにより多少の違いはあれど、データセンターが直面する問題は、世界的に大きく変わりはない。いま必要なことは、サーバーの統合、仮想化、自動化であるのことは日本でも同じだ。だが問題意識は同じでも、実際の導入状況を見ると、日本と世界には大きな差異があることが分かる。

 例えば、サーバーの統合をみると世界では検討中91%、導入中58%であったのに対し、日本は検討中86%、導入中20%と非常に少ない。サーバーの仮想化でみても、導入中のデータセンターは14カ国中最少で、検討すらしていないところが22%にも上る。

 この理由を金崎氏は、「米国には人材不足を技術で補おうとする傾向がある。ミッションクリティカルに対する導入にはまだ腰が重くとも、仮想化に対して積極的に関心を持とうとしているといえる。一方、日本には技術で補おうという流れがなく、あくまで“人”任せ。人材不足はどこの国よりも深刻であるのに、性善説ではないが、人によって問題が解決できると考えている節がある」と説明。その上で、「これは文化の違いであるから仕方がないのだが、日本で仮想化の導入が進むためには、成功事例が出てこないとなかなか難しいのだろう。横並び主義といえばデメリットのようだが、一方で石橋をたたいて渡る慎重さを持ち合わせているとみることもできる」と語った。



URL
  株式会社シマンテック
  http://www.symantec.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.symantec.com/ja/jp/about/news/release/article.jsp?prid=20071127_01


( 川島 弘之 )
2007/11/27 19:16

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