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コンサルティング部 ウェブメソッドの森川衡ディレクター(左)と、システムエンジニア ウェブメソッドの高野忍(右)
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各種標準に対するサポートが強化されている
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ソフトウェア・エー・ジー株式会社(以下、ソフトウェアAG)は、独Software AGが米webMethodsを買収したことを受け、国内でも両社の組織を統合。新生ソフトウェアAGとして生まれ変わった。このような場合、統合して組織を固めた後で製品の扱いを考える場合もあるだろうが、同社では、“まず製品ありき”の考え方のもと、製品のロードマップを考え、その後に組織を立ち上げるという逆のアプローチを採用。そのロードマップに沿って、ビジネスを進めているという。今回は、そうした戦略を採用している同社に、次期製品の強化点などを中心に話を聞いた。
ワールドワイドにおけるSoftware AGは、ビジネス統合スイート「webMethods Product Suite 7.1」を2007年9月にリリースした。これはwebMethodsの主力製品のアップデートであり、各所に新機能が加えられているという。このうち、SOAの中核として働くESB(エンタープライズサービスバス)の部分については、SOAP 1.2を中心に、WS-I、UDDI v3、WS-Securityなど多くの標準に準拠したが、コンサルティング部 ウェブメソッドの森川衡ディレクターは「当社ではWSIのボードへディレクターを派遣しているように、標準はすべて製品に取り込んでいくことをコミットしており、Webサービスに関しての標準を徹底的に取り入れてきた」と話し、業界標準に関する同社の姿勢を強調する。
またこの“つなげる”部分では、メインフレーム資産の活用(サービス化)という部分にも力を入れる。具体的には、言語そのものをコンポーネント化する「EntireX」、レガシーデータベースへのSQLアクセスを可能にする「ConnX」、ホスト画面をWeb化する「ApplinX」などを提供するが、「メインフレームの資産をサービス化するためのコンポーネントもESBに取り込んだが、これは、ソフトウェアAGとの合併によって生まれたメリット」と森川氏が述べたように、ADABASなどメインフレーム関連のビジネスを古くから手がけてきたソフトウェアAGのノウハウがあるからこそ、実現できた部分。同社が進めるレガシーモダナイゼーション事業と、webMethodsの融合がうまく果たせているといえる。
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Designer 7.1では、アセットの依存関係を可視化できるようにしている
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一方、プロセスを可視化・監視していくBAM(Business Activity Monitoring)/BPM(Business Process Management)の部分も多数の機能強化が施された。SOAでは、組織内での活用が進み、たくさんのサービスが存在するようになればなるほど、その可視化が重要になる。そこで開発環境である「Designer 7.1」には、アセットの依存関係をビジュアルに把握できる機能が盛り込まれ、マウスクリックで各アセットのつながりが追跡できるようなっている。また、コグノスのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールがOEMでバンドルされ、さまざまな切り口でのレポートが標準で出せるようになったほか、シミュレーションエンジンもバンドル。「設計時に前提条件を入れてプロセスを走らせることで、ボトルネックなどの事前検証が可能になった」(森川氏)のも大きな強化点で、製品全体でユーザビリティが大きく向上している。
このような機能強化がなされたwebMethods Product Suite 7.1は、現在日本語化など国内での販売体制を整えている段階で、3月ごろに正式発表となる見込み。さらにワールドワイドでは、「i Release」と呼ばれる次期版がすでに開発中で、2008年夏ごろのリリースを目指しているという。ここでは、旧ソフトウェアAGの「CentraSite」、旧webMethodsの「Infrabio」、両SOAガバナンスツールの統合などが行われ、いっそう、両社統合のメリットが享受できるようになる予定だ。
こうして、製品面では大きく拡充されてきた同社のSOAに対する取り組みだが、顧客はそれをどう活用しているのか。森川氏によれば、「コンポジットアプリケーションの構築など、先進的な事例も増えてきてはいるが、まだEAI的な使い方をしている例が多いのは確か。特に古くから当社製品を利用しているのユーザーほど、その傾向が強い」という。しかし、SOAの真価は、そうした限定的な使い方にとどまらないものであり、せっかく製品を購入したユーザーが価値の一部しか享受できないのではもったいない。また、そういったイメージが固定して、製品の導入が進まないのもベンダーとしては避けたいところだ。
そこでソフトウェアAGでは、「UIの統合」の側面から、SOA製品の活用を推進していくという。森川氏は、「業界自体がコンポジットアプリケーションをBPMからとらえていたが、これは美しい姿であるものの、やはり無理があった。現在の企業では複数のアプリケーションがあり、そこへログオンをしているということがあるので、ポータルの観点からSOAを考えていったほうが、親和性が良いのではないか」と指摘。「当社でもそこに投資を進めてきており、顧客に勧められる段階になってきた。Web上のコンテンツをどう見せるかという観点から、複数のUIを統合していくイメージだ」と説明する。
これに対応するため、ソフトウェアAGは社内に持つプロフェッショナルサービスの部隊を活用するほか、足りない部分については、ワールドワイドで専門家を動的にアサインする仕組みを活用。全社のリソースを挙げて、顧客のニーズに対応していくとした。「Software AG自身、巨大な組織を持つ競合に比べればさほど大きな会社ではないが、逆に本社との距離感が非常に近い強みがある。日本のITは欧米よりも多少遅れている場合が多いので、海外で実際に蓄積されたノウハウを、素早く日本で展開可能な点が、当社ならではの強みになるだろう」(森川氏)。
■ URL
ソフトウェア・エー・ジー株式会社
http://www.softwareag.com/jp/
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( 石井 一志 )
2008/01/25 11:42
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