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Vista導入は7回に分けて実施-マイクロソフトが自社情報システムを公開


マイクロソフトの社内IT環境

米Microsoftインフォメーションテクノロジーグループ ジェネラルマネージャのジム・ディボア氏
 マイクロソフト株式会社は4月17日、同社の社内情報システムに関する取り組みについてプレス向け説明会を開催した。今回の説明会では、これまであまりオープンにされてこなかったマイクロソフトの社内情報システムの現状や担当部門の役割などを、ユーザー企業としての立場から発表した。マイクロソフトが社内情報システムについての説明会を行うのは、国内ではこれが初めてとなる。

 まず、ワールドワイドの社内情報システムの現状として、オンライン環境は、サーバー数が13万台、ユニークユーザー数が4.35億人、1日のページビューが2800億PV、メール数が120億通、IM利用が60億となっている。電子メールの利用については、1日の社内メールが600万通、インターネットからの受信メールは2000万通にものぼるが、受信時に迷惑メールの97%がフィルタリング処理されているという。

 ユーザーおよびサイト数は、ユーザー数が14万人、550カ所に拠点ビルをもち、103カ国で展開している。ネットワーク上に接続されているデバイス数は60万台。サーバーは、1万台を3カ所のデータセンターに分散設置し、1カ所の運用センターからすべてを管理している。社内アプリケーションには、2300種の業務系アプリケーション、シングルインスタンスのSAP、Dynamics/MSCRMが利用され、5ペタバイトのストレージ容量を提供している。リモート接続サービスの状況としては、1カ月あたり100万件のVPN接続数があり、OWAのユニークユーザー数は8万人となっている。

 ワールドワイドの情報システム部門責任者である米Microsoftインフォメーションテクノロジーグループ ジェネラルマネージャのジム・ディボア氏は、「現在の社内情報システムの課題として、業務系アプリケーションの種類が多い点が挙げられる。これは、各国の拠点でさまざまなアプリケーションが使われているため。今後は、似通った機能をもつアプリケーションは統一するなど、業務系アプリケーションのポートフォリオを簡素化していく必要がある」と述べた。


マイクロソフトのIT関連支出
 次に、社内のITに関連する支出について説明。投資目的の支出としては、「新規プログラム」への投資が52%に達し、「維持・管理」の48%を上回った。ディボア氏は、「3年前には、新規プログラムへの投資比率は40%以下だったが、現在では過半数を占めるようになった。当社では、ITに関わるトータルの支出が年々拡大するなかで、維持・管理の支出を極力抑え、ここ3~4年で約1億ドルの支出削減を実現した。そして、削減した部分を新規プログラムの投資に充ててきた。今後も、さらに新規プログラムへの投資を拡大し、60%以上に投資比率を高めていきたい」との考えを示した。

 コスト要素別の支出では、人が79%と大きな割合を占め、データ・音が7%、ハードウェアが7%、設備が5%、ソフトウェアが2%となっている。このうち、ソフトウェアは自社製品以外のアプリケーション導入にかかった費用となり、もし自社製品を購入したと想定した場合は4%になるという。


 社内情報システム担当部門の役割としては、「マイクロソフトに対する最初で最良の顧客として、新しいプロダクトを本番環境で一番初めに活用し、開発チームに製品改善のヒントをいち早くフィードバックしていくことが重要になる」(ディボア氏)としている。説明会ではWindows VistaとMicrosoft Office最新版の例を挙げ、まず少数部門でBeta1を導入し、Beta2、RC1と徐々に社内導入を拡大し、最終的に出荷版の導入に至るまでの推移を紹介した。とくに、Windows Vistaについては、出荷版の完成までに合計7回の社内導入を実施し、ベストプラクティスを追究した製品開発を行ったという。

 また、ディボア氏はWindows Server 2008を実際に社内導入した際に感じたメリットについて、「まず、クラスタリング設定が非常にシンプルになり、簡単に行えるようになった。そして、私が最も大きな導入メリットとして強調したいのが仮想化機能。導入・設定も簡単で、物理的なサーバーから仮想化サーバーへのマイグレーションを行うことで、ハードウェアやデータセンターの大幅なコスト削減を図ることができる。さらに、スペースや電力の削減も実現できるため、環境問題にもプラスになると考えている」と語った。

 情報セキュリティへの取り組みとしては、「社内情報システム担当部門では、今後、さらに高度化するセキュリティへの脅威を把握し、先を見越したリスク管理を行っていく必要がある。また、モバイル接続の利用拡大も視野に、セキュリティ・コントロールを進化させ、よりデータそのものに焦点を絞ったコントロールを行っていくことも重要になる。将来的には、データが自分で自動保護するような仕組みを提供していきたい」(ディボア氏)と説明した。


Windows VistaおよびMicrosoft Officeの社内導入事例 情報セキュリティの将来動向

マイクロソフト 執行役 日本・アジア担当 最高情報責任者の鈴木協一郎氏
 ディボア氏の発表後には、マイクロソフト執行役 日本・アジア担当 最高情報責任者の鈴木協一郎氏が日本法人における社内情報システム担当部門の役割について説明し、「マイクロソフトの企業向けビジョンである“People-Readyビジネス”を社内向けに展開するとともに、社員にとって働きがいのある職場環境をITの面から支援していくことがわれわれの大きなミッション。さらに、現場にフォーカスして社員生産性を向上し、社員力の強化を図るほか、ワールドワイドと同様に社内導入を最良の顧客事例として、製品品質向上へのフィードバックを行っていくことも重要になる」と述べた。

 同社では、今回の説明会を機に、今後、社内におけるITノウハウや最新の社内導入事例について、イベントやWebを活用しながら、積極的に外部公開していく方針。ユーザー企業としてのマイクロソフトをアピールすることで、顧客企業との新たなリレーションシップの構築を目指す。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/


( 唐沢 正和 )
2008/04/17 18:00

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