Enterprise Watch
最新ニュース

グリーン・グリッド、データセンター効率化への取り組みについてCEATECで講演


データセンターの課題

グリーン・グリッドのミッション

電力消費の内訳
 グリーン・グリッドは10月3日、CEATEC JAPAN 2008会場で開催された「グリーンITシンポジウム」において、「データセンターのエネルギー効率化に向けた取り組み」と題した講演を行った。

 グリーン・グリッドは、2007年に米国で設立された団体。2008年9月22日現在で、全世界の200社が参加している。データセンターおよびビジネス・コンピューティングのエコシステムにおける、省エネ化を推進する業界団体であり、特定企業の製品あるいはソリューションを推奨するのではなく、データセンターにおけるエネルギー効率の改善に必要なベストプラクティス、メトリックスおよび技術を業界全体の視点を提供することを目指している。

 今回の講演は、APCジャパン マーケティング本部ディレクターで、グリーン・グリッドの日本コミュニケーション委員会代表を務める坂内美子氏が講演を行った。

 坂内氏は大手事業者が運営するデータセンターだけでなく、企業のサーバー室を含めたデータセンターに対し、「データセンターの仕事が増えるのに応じて、消費電力も増えていく。今年は日本で洞爺湖サミットがあり、全世界で環境を考える年に。データセンターのインフラを見直すべきタイミングとなってきている」と指摘した。

 その上で、データセンターインフラの見直しが簡単に進まない要因として、データセンターの現状を計る指標がなく、自社のデータセンターがどんな状況にあるのか、把握できなかったことを挙げた。

 「グリーン・グリッドを設立し、できるだけグリーンなデータセンターを!ということになった時、何をもってグリーンなのか、自分のデータセンターの現状はどんな状況なのかを知るために、なんらかの指標が必要という結論に達した。企業のIT管理者が、自分たちがどの位置にあり、どのレベルに、いつ達するべきか、目標設定するために、全世界でシェアできる指標が必要となる」(坂内氏)。

 ただし、データセンターの構成要素は、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、ソフトといったIT関連機器だけでなく、ビルの電源、明かり、冷却装置といったファシリティに大きく大別される。従来、IT管理者がデータセンターの効率化、コスト削減を実現する際、ファシリティ部分は計算に入れていないという実情があった。

 「ところが、データセンターの電力消費内訳を調査すると、IT関連機器の電力は実は3分の1程度。実は70%近くが物理インフラに利用されている。その物理インフラとは、電力浪費、冷却装置(局所冷却装置プラス、部屋全体の空調装置)、また小さいものとして照明などがあり、これらを合算すると消費電力の70%を占める」(坂内氏)。


PUEとDCiE

開発中の指標であるDCP

PUE、DCiE数値をもとにした改善策
 そこで、グリーン・グリッドでは、設備全体の消費電力をIT機器の消費電力で割り、設備全体の電力が無駄なくIT機器に利用されているのかを計るPUE(Power Usage Effectiveness)、IT機器の消費電力を設備全体の消費電力で割り、そこに100%をかけることで、設備全体の消費電力のうち何%がIT機器に利用されているのかを示すDCiE(Data Center infrastructure Efficiency)という2つの指標を提唱している。

 さらに、IT機器自身の生産性を計るDCP(Datacenter Productivity)も合わせて、データセンターの現状と今後目指すべき目標値が設定できるという。

 米国企業の例では、現状としてPUEが2.0だったデータセンターが、1.4を目標として改善を計ったところ、年間270万ドルの電気代がセーブできたという。

 では、企業はどのような具体策をとっていくべきか。グリーン・グリッドでは、以下の7点の改善策を提案している。

1) 空気の流れを管理する計画の立案
2) 冷却装置を稼働率の高いIT機器に隣接させる
3) 冷気の効率的な利用
4) 外気の有効活用のためにエコノマイザーを設置
5) より高度な仕様と性能の機器の利用
6) ソフトウェアを使用したダイナミックコントロールの利用
7) ITインフラの見直し

 「われわれの改善策を実施した結果、気候がよい米国カリフォルニア州にある企業では、全体冷却を行うことなく、局所冷却だけで事足りた例もある。6)に挙げたソフトの利用は、データセンター全体で、どこに、どのくらいの熱が使われているのか監視するソフトウェアも登場しているので、こうしたものを利用し、データセンター全体をコントロールすることを実施するのが好ましい」(坂内氏)。

 日本でも徐々にPUEが指標として定着してきた段階だというが、「DCPを計る差異の指標が統一されていないという問題があり、グリーン・グリッドの技術協議会で協議を進めている」(坂内氏)という課題もあるとした。


今後の取り組み

エネルギー効率化に向けてのチェックリスト
 また、行政機関との協力関係の確立、PUE、DCiEなどのメトリックスを基準としたシステムの確立、データセンターパフォーマンスツールの作成、評価ツールの標準化なども課題となっているという。

 さらに、グリーン・グリッドでは、「エネルギー効率かに向けてのチェックリスト」を用意している。「これはエネルギー効率化に向け、ぜひ、やってほしいことをチェックリストとしてまとめたもの。エネルギー効率化を検討する企業では、利用してほしい」(坂内氏)。

チェックリストは以下の通りである。

・データセンターのエネルギー消費量の調査
・設備全体の電力vsIT機器電力の査定
・目標とスケジュールを明確化した「エネルギー戦略」の策定
・グリーン・グリッドのPUEとDCiEなどの指標を用いたエネルギー効率の測定
・ビジネスの継続を担保し、個々のデータセンターの効率に関する問題に組織的に取り組む
・グリーン・グリッドに参加し、今後の指標開発に貢献



URL
  グリーン・グリッド
  http://www.thegreengrid.org/japanese/


( 三浦 優子 )
2008/10/03 20:07

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.