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フィードパス小川氏「Feedsphereのトップ企業に」
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本日は、いつもとは少し趣向を変えた特別編をお送りします。
当連載の記事執筆者であるサイボウズ株式会社の小川浩氏が中心となって企画し、開発したWeb 2.0的サービス「feedpath(http://www.feedpath.jp/)」が4月3日付けにて新会社 フィードパス株式会社(旧ブログエンジン株式会社)に事業統合され、同時に小川氏が同社の取締役兼COO(最高執行責任者)に就任されたことは弊誌の記事にてご覧になった方も多いかとおもいます。
そこで、当連載の第二回目のゲストである、GMO VenturePartners株式会社 取締役の村松竜氏をインタビュアーとして迎え、小川氏をゲストとしてお話を伺うことといたしました。『Web2.0 BOOK』(インプレス刊)の著者でもある小川氏の世界観をぜひお読みください。(編集部)
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フィードパス株式会社 取締役COOの小川浩氏
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GMO VenturePartners株式会社 取締役の村松竜氏
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■ フィードパス株式会社へ
村松氏
フィードパス株式会社のCOOご就任おめでとうございます。
小川氏
ありがとうございます。
村松氏
こうして改めてお話しするのもおかしな感じですが、今日はよろしくお願いいたします。
小川氏
こちらこそよろしくお願いいたします。
村松氏
早速ですが、feedpathというWeb 2.0的サービスのアーキテクトであり事業推進者である小川さんにまずはお答えいただければとおもうことなんですが、Feedとはいったいなんでしょうか。RSSであるとかWeb 2.0をまったく知らない方に向けて説明いただければとおもいます。
小川氏
そうですねえ、詳しくは拙書『Web2.0 BOOK』を買っていただければとおもいますけど(笑)。簡単に言うとすると、情報を伝達するためのフォーマットです。RSSとかATOMというのはその種類のことで、紙でいえばFeedというのは定形紙で、RSSやATOMはA4とかB5といった紙の大きさの規格みたいなものです。ただし、Feedが面白いのは、プログラムとしてコンピュータが理解できる言語、つまりXMLであると同時に、Feedリーダーを介してという条件付きではあっても、人間が理解できる可読性を持った言語である、ということが最も大きな特徴です。
村松氏
WebのうえでFeedという形でさまざまな情報が、細切れに飛び交っているような状態を意識したりします。feedpathがその情報を集めて、ユーザーの好みに合わせて取捨選択できるようなサービスを提供している、いわばゲートウェイみたいな役目を負っている、とおもっています。
小川氏
そうですね。
村松氏
最近Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン氏が、Yahoo!のWeb 2.0化を考えて、ソーシャルWebとかMyメディアのような概念を発表していました。feedpathはこのMyメディアとは違うものですか?
小川氏
うーん…。feedpathは確かに現時点ではFeedリーダーという形式を持つ個人ポータルである、と言ってしまえばその通りとおもいます。だから、Myメディアである、といえばそうも言えますね。しかしながら、僕はWeb 2.0時代の情報収集はポータル的であるというよりも、もっと分散したイメージを持っています。feedpathはfeedのpath、つまり小道を張り巡らせて、Feedという形式で記述されている情報を、インターネット上のありとあらゆる場所に届けていくことを目標としていますので、メディアとしてfeedpathを意識することはないです。
村松氏
feedpathはいわゆるRSSリーダーではない?
小川氏
現在提供しているサービスはタグを用いた一種のソーシャルRSSリーダーといって差し支えありません。しかし、feedpathイコールRSSリーダーか?と言えばそれは正確ではありません。feedの受信、発信、検索、共有のすべてを提供していくものなので。
■ feedpathはヴェネチア型?
村松氏
質問を変えましょう。現在のWebを見るとGoogle経済圏とYahoo!経済圏の二つに分けられているかのように見えます。例えば日本のYahoo!をみても、Yahoo!オークションであれば年間6000億円もの取引が成立している巨大な市場を持っています。GoogleもGoogle Baseのような新しいサービスで、こうした経済圏の拡張を図ろうとしているとおもいます。こうした中で、feedpathはどのような戦略をもっていこうとしているのでしょうか?
小川氏
例えば中世ヨーロッパを例に説明してみましょうか。その場合、Googleがキリスト教世界で、Yahoo!がイスラム世界に例えられるでしょう。GoogleをイスラムにしてYahoo!をキリスト教に置き換えてもいいです、単なる例ですので(笑)。この二つの勢力は、信条やシステムこそ違うわけですけど、どちらにしても面的に領土を拡張して、隣接する地域では激しく戦闘を繰り返していくことになります。
ところが、中世ヨーロッパで経済的に成功した勢力がもう一つあって、それはヴェネチア共和国です。ヴェネチアは領土を広げるのではなくて、要所要所の港に領事館を置かせてもらって、交易の拠点を作るんです。つまり、植民地を広げるのではなく、海の上を走る船による無数の交易によって生まれるトランザクションを力の源泉にしたわけですね。
feedpathで考えるのは、こういう面的な力ではなく、無数の線的な力です。
村松氏
具体的に言うと?
小川氏
つまり、WebではなくてFeedの世界に集中するということです。Webは面でFeedは線ですね。Feedは単なるWebサイトの更新通知技術から、いまではよりリッチなコンテンツを運び、Feedだけで情報の受発信が成立するほどにまでなってきました。つまりFeedがメディア化しているわけです。僕はこの状態をFeed 1.5と呼んでいますが、人間の目で情報を受け取れる、Feedの可読性がさらに高度化した状態が始まっていると考えているわけです。
もう少しFeedの進化が続くと、FeedがXMLであることを最大に生かしたWebサービスとしてのFeedの使い方が広がってくると考えていて、この状態をFeed 2.0、と呼びます。Feed自体がWebの機能の一定量を代替していくと予測して、その世界をFeedsphere(Feedの世界)とも表現しますが、feedpathではこの世界でトップとなりたい。だから、GoogleともYahoo!とも今のところは直接競合するモデルではないんです。
■ ホールプロダクトとデザイン
村松氏
feedpathは、Feedsphereのホールプロダクト(一つのプロダクトで総合的な機能を有するモノ)であろうとしているわけですね。
小川氏
そうですね。
村松氏
Web 2.0的なサービスを提供する企業だと、単一機能の提供で満足するイノベーターも多いとおもいますが、ビジネス的に見ると、さまざまな機能を自由に切り替えられてシームレスに使えるのであればそれは便利だとおもいます。
小川氏
同感です。
村松氏
小川さんにとって、Webアプリケーションのデザインとはなんでしょう? 小川さんがすべてディレクションしているんですよね。
小川氏
基本デザインはすべて自分で考えています。機能もそうです。最近はスタッフといろいろシェアしていますが。
村松氏
feedpathはテクノロジーを全面に出したデザインですね。
小川氏
うーん。feedpathでは、禅の境地というか、無駄を極力排した、ミニマルで簡素な感じにはしたかったんですけど、テクノロジーうんぬんというよりは、ユーザーの使い勝手を考えてのことですね。Feedは今後も急速に増えていって、ものすごい数の記事をFeedで読むようになるとおもいますが、feedpathではこの大量の情報を処理することを一義的に考えています。だから、余計な飾りがあったり、アイコンが目立ちすぎたりすると、視線を妨げて肝心の記事を読むときにユーザーを疲れさせてしまうんですね。だからfeedpathは虚飾を一切排して、記事を読みやすくすることだけを考えてあのデザインを考えました。俳句のようにそぎ落としてシンプルの極みにありながら、実はよーく考えている、というようにユーザーにおもわれたら幸せですね。
村松氏
それは成功しているとおもいますよ。ちなみにユーザーからはfeedpathってどういうサービスにおもわれているのでしょう?
小川氏
そうですね。RSSリーダーとしてとらえられていることと、ソーシャルブックマークとしてみられていることが半々ですね。前者だとBloglinesと比較されることが多いし、後者だとはてなブックマークと比べられることが多いです。デザインがいいはてな、と呼ばれることも多いです(笑)。
村松氏
Googleとはかぶりませんか?
小川氏
先ほどの話のように、まったく違うものだと考えてはいるんですけど、Googleが出すサービスをどうしても意識してしまうことはありますね。ユーザーにGoogleと比較されることは少ないですけど。
村松氏
小川さんが意識するWeb 2.0サービスとはなんでしょう?
小川氏
実はあまり何かと比べるってこともないんです。(『Web 2.0的キーマンに聞く』という)連載をしていながらこういうことを言ってはいけないかもしれないですけど(笑)。
村松氏
あえて言うと?
小川氏
クライアントソフトを作る気がないので比較になりませんけど、glucoseはfeedpathと近い機能を持っていて、方向性は似ているのかな、とおもったりします。ビジネスモデル的にはiTMSですね。iTMSは、従量制ではない小口データ課金を実現したパイオニアだし、iTunesそのものがFeedリーダーぽいとおもっています。
村松氏
ケータイは? やはりPCとはまったく違う世界ですよね。
小川氏
Feedsphereはモバイルに対応してこそ、リアルワールドにいかせるとおもっているので、なるべく早く対応していきたいですね。
■ ジョブズに学ぶ交渉力とは
村松氏
事業モデルとしては今後どのような展開を考えていますか?
小川氏
そうですね、とにかくWeb 2.0の考え方にフィットしたサービスを作って、そしてそのサービスできっちり収益をあげていきたいですね。例えば、はてなさんはWeb 2.0的な企業体制を持ち、Web 2.0的なサービスを次から次へと投入しています。しかしながら、収益そのものは受託開発によるところが大きくて、心中察するに多少焦られてるんではないかなとおもったりもするんです。feedpathでは、feedpath自体をキャッシュマシーンにしていきたいですね。
村松氏
そのためにはどうしたらいいでしょう?
小川氏
僕はスティーブ・ジョブズが好きなんですけど、彼がAppleでiTMSプラスiTunesというキャッシュマシーンを作ったり、Pixarでディズニーとの巨額の契約を結んだりできたのは、確かに優れたテクノロジーがあればこそなんですけど、実はそれ以上に彼自身の粘り強いビジネス力というか交渉力があって、周囲の人たちを説得して回ったからなんですね。テクノロジーにのみ依存して、このリアルな交渉や説得に汗をかかない企業は、革新的なことはできないとおもいます。もちろん逆もありで、根回しばかりしてテクノロジーへの愛着を持たない企業は尊敬されません。今のAppleはこのあたりのバランスがめちゃくちゃいいんですね。フィードパス株式会社もこれにあやかりたいです。
村松氏
大事なポイントですね。
小川氏
僕はそもそも技術者ではなく商社あがりで、ビジネスプロデューサーであってもエンジニアではありません。テクノロジーを愛するビジネスマン、です。だから、愛するテクノロジーによる理想的な世界を作るために、あちこち走り回って、泥臭い交渉をして回ったり啓蒙活動をするのが僕の今の仕事ですね。本を書いたりするのもその一環です。
村松氏
小川さんのそういう部分がfeedpathを面白くするとおもいますよ。今日はこういう機会をいただいてありがとうございました。
小川氏
こちらこそありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/04/04 12:48
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