「ロケット打ち上げと同じアプローチが有効」-SOA導入解説書著者が語る極意


「SOA Adoption For Dummies」を手にする独Software AG バイスプレジデント兼最高戦略責任者のミコ・マツムラ氏(左)と、ソフトウェア・エー・ジー コンサルティング部ウェブメソッド シニアコンサルタントの山口幹一郎氏(右)
SOAは、高い関心を持たれる「Positive Hype」、批判的な目で見られる「Negative Hype」の時期をすぎ、価値を提案して導入する啓もうの段階に

 ソフトウェア・エー・ジー株式会社は4月23日、SOA導入時のポイントを解説した書籍「SOA Adoption for DUMMIES(誰でもわかるSOA導入)」日本語版を発行したと発表。同日、同書籍の著者の一人である独Software AG バイスプレジデント兼最高戦略責任者のミコ・マツムラ氏の来日にあわせ、記者向けの説明会を開催した。

 今回発行されたSOA Adoption for DUMMIESは、SOAのアーキテクチャを解説した書籍ではなく、実際のユーザーがどのような形でSOAを導入したかといった事例を交えて、SOA導入で必要となる具体的かつ実用的な手法を解説したもの。特に、ロケットの打ち上げから軌道に乗るまでのアプローチを踏まえた「SOAロケットサイエンス」という導入アプローチを紹介しているのが特長となっている。

 マツムラ氏は、「SOAは、システムをインテグレートするだけでなく、ビジネスを統合する役目も持っているのが特長。つまり、SOAを利用するというのはシステム統合だけでなく、人的な統合を実現するということ。SOA自体は、Positive HypeからNegative Hypeの時期をすぎて、価値を提案して導入する啓もうの段階に入っている」と、企業のITシステムにとってSOAが必要不可欠な段階に入っていると紹介。

 しかし、現実にはSOA導入に失敗する企業は多く、SOAは終わったといった声も聞かれるのが現状だ。これに対してマツムラ氏は、「企業のITシステムが非常に複雑になっているのは、機能であったり、組織であったり、プラットフォームであったりと、さまざまな要因で分断されているのが原因。私はこれをIT組織内の部族主義と呼んでいる。こうした部族主義は企業規模が大きくなったり、企業統合を行うことで、さらにひどくなる」と、特定ベンダーのシステムで垂直統合することの難しさを指摘し、結果として水平統合を実現するSOAが企業にとって不可欠なものになっていると説明する。

 「SOAはさまざまなシステムから独立しているのが特長。このSOAを失敗することなく導入するには、書籍の中でも紹介しているが、SOAロケットサイエンスというアプローチが有効だ。ロケットは、発射直後から先端を上向きに維持するために継続的な修正を行っている。これはSOAでも同様で、導入したらそれで終わりではなく継続的に測定し、修正しながら運用することが重要。そして、ロケットの推進力を維持し続けることと同様に、継続的な測定を行動に結びつけることも重要。最終的には、ロケットが軌道に乗るまで止まってはいけないのと同様に、SOAも企業ガバナンスとむすびつけることで、きれいに組織化されたシステムが実現する。その結果、ビジネスの機敏性を確保することにもつながる」と、SOAを成功裏に導入するためのプロセスの重要性を強調した。

SOA導入支援サービスの内容

 同社では、SOA Adoption for DUMMIESの発行にあわせて、SOA導入支援サービスを新たに用意。同社コンサルティング部ウェブメソッド シニアコンサルタントの山口幹一郎氏は、「SOA Adoption for DUMMIESを読んでいただいても、すぐに実践するのは難しい。今回提供するSOA導入支援サービスでは、“計画”“検証”“提案”の3つのステップにより、SOAをどのように導入すればよいかまでを提案するもの」と説明。10日間かけて行うもので、価格は160万円(税別)。

 なお、今回発行されたSOA Adoption for DUMMIESは、同社が開催・協賛するイベントにおいて配布される。



(福浦 一広)

2009/4/23 13:48