NEC、サービス事業拡大に向けクラウド指向の新サービスを提供

サービス要員の増強、サービス提供基盤の強化も

 日本電気株式会社(以下、NEC)は4月23日、サービス事業の強化戦略について記者説明会を開催し、クラウド指向の新サービス「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」を7月から販売開始すると発表した。また、同サービスの提供にあわせて、サービス要員を大幅に増員するとともに、サービス提供基盤の強化を図る方針も明らかにした。

 「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」は、企業などの基幹システムの機能を、NEC保有の実績のあるプラットフォーム資産を活用してサービスとして提供するもの。業務プロセスの改革を支援する「ビジネスモデルコンサルティング」サービスをベースに、基幹業務を支えるサービスとして業種・業務別に「SaaS型」「共同センタ型」「個別対応型」の3つの提供モデルを用意し、企業のライフサイクルマネジメントをサポートする。


クラウド指向サービスプラットフォームソリューションのコンセプトクラウド指向サービスプラットフォームソリューションの構成要素提供サービスメニュー

 

執行役員常務の藤吉幸博氏

 執行役員常務の藤吉幸博氏は、同ソリューションのコンセプトについて、「当社のもつデータセンター基盤や各種製品、技術、システム、コンサルティングノウハウと、クラウドの特徴であるユーティリティ課金や仮想化、マルチテナントなどを組み合わせることで、企業システムの改革を促進するソリューションを提供し、TCO削減による筋肉質経営および新規事業の早期立ち上げを実現する両輪経営を支援する」と述べた。さらに、「現在、各社のクラウド関連サービスは、インフラやフロント系アプリケーション領域が中心となっているが、当社では、自社の基幹システムにおいてクラウド指向のサービスプラットフォームを導入した実績があり、この実践ノウハウをベースに、他社に先駆けて基幹システムを支えるクラウド指向サービスを提供していく」とし、「将来的にはサービス事業で年間1000億円の事業規模を目指す」と意欲を示した。

 具体的なサービス内容は、まず「ビジネスモデルコンサルティング」では、NECが自ら実践した経営システム改革の経験を基に、顧客の経営課題を解決するため、実践的な業務プロセス改革とビジネスプロセスマネジメント(BPM)確立に向けた方法論を提供する。

 基幹業務を支える業種・業務サービスについては、「SaaS型」では各種定型業務をサービスとして低コストで提供する。業種共通のアプリケーションだけでなく、「自治体基幹業務サービス」「製薬業レギュレーションサービス」「RFID活用基盤サービス」といった、各業種のコア業務・基幹業務のアプリケーションをメニュー化し、SaaS型で提供していく。「共同センタ型」では、同一目的をもつ同業種複数の顧客が共通システム基盤上で業務アプリケーションを利用できるサービスを提供。業界標準的なサービスを低コストで利用することが可能で、自治体、金融業、メディア事業などにおける中~大規模システムを主な対象としている。「個別対応型」では、顧客ごとの業務プロセスをNECのビジネスモデルコンサルタントがシンプル化・標準化した上で、複数の業務システムをNECまたは顧客自身のシステム基盤上に構築し、オンデマンド型サービスとして提供する。主に大~超大規模システムが対象となる。


ビジネスモデルコンサルティングサービスの概要業種・業務サービスの提供モデル

 

NECのサービス提供体制
サービス提供要員の強化
データセンターの強化方針

 同社では、今回の新サービスを、4月1日付けで設立したITサービスビジネスユニット内の業種別事業本部に設置した「サービスソリューション事業部」を中心に提案し、顧客に最適な形態で提供していく予定で、これにあわせてサービス要員を大幅に増員する方針。具体的には、従来までSIを担当していたSEを、サービス提案やデータセンター向けシステムの構築・運用なども担当できる要員へと育成するなど、2012年度までにNECグループで1万人のサービス要員体制を確立する。さらに、顧客のビジネスプロセス再構築を支援する「ビジネスモデルコンサルタント」、サービスの提案からSI・運用までをトータルにマネジメントする「LCM型プロジェクトマネジャー」などのサービス事業中核要員を約2000人育成していく計画。

 サービス要員の増強にあたっては、グループ全体に共通の要員体系、教育体系を全面刷新し、計画的な育成を進めるほか、サービススキル展開には、NEC独自の各種方法論(プロセス改革方法論、サービスモデリング技法、サービスエンジニアリング技法など)を整備し、早期浸透を図る。

 また、新サービスの提供にともない、サービス提供基盤の強化も実施。自社およびアライアンスパートナーのデータセンターにおいて、クラウド指向のサービス提供基盤システム(サービスプラットフォーム)を構築する。仮想化システムの自動生成・リソースの高効率運用を実現する運用管理ミドルウェアを新規開発するとともに、NECのOMCS(オープンミッションクリティカルシステム)のSIテクノロジーを全面的に適用し、堅ろうで柔軟なサービス提供基盤システムを実現する。このほかに、運用プロセスやシステム環境を標準化するとともに、「Express5800/ECO CENTER」を始めとする省電力・省スペースのサーバー・ストレージやグリーンIT技術の導入により、TCOの大幅削減も図っていく。



(唐沢 正和)

2009/4/23 16:00