2008年度のIAサーバー出荷実績は3%減-JEITA調べ
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)サーバ事業委員会は6月4日、2008年度(2008年4月~2009年3月)のサーバー・ワークステーションの出荷実績を発表した。
同調査は、参加会社の実績データをまとめた自主統計であり、予測などは含んでいない。メインフレームでは、市場カバー率は100%だが、IAサーバーやUNIXサーバーでは、日本ヒューレット・パッカードやデルが統計に参加していないため、市場カバー率は70%程度と見られている。
出荷統計への参加企業。委員会に参加している企業と、統計にだけ参加している企業がある | 出荷統計を発表するJEITAサーバ事業委員会 |
これによると、2008年度におけるIAサーバーの出荷台数は前年比3%減の31万7132台、金額では9%減の2319億円となった。上期は、台数が3%増の15万5112万台、金額が4%減の1165億円だったが、下期は台数が8%減の16万2020台、金額が15%減の1154億円となった。
統計を担当するサーバ事業委員会サーバ市場専門委員会の山口晶嗣委員長は、「IAサーバーは、出荷台数、金額ともに前年比3%増になると予測していたが、下期からの世界同時不況の影響を受け、前年を下回る結果となった。だが、300万円以上の価格帯では、金額で326億円と前年の193億円から大幅に伸びており、UNIXサーバーからの移行の受け口となっている可能性が高い。さらに、ブレードサーバーはサーバー集約化の波が続いており、IAサーバーが減少するなかでも成長している」とした。
IAサーバーの内数として集計しているブレードサーバーは、上期は前年比2%減の1万4962台となったが、下期は6%増の1万8600台と成長。年間では3%増の3万3562台とプラス成長になった。
2008年度の総出荷実績 | IAサーバーの出荷実績 | ブレードサーバーの出荷実績 |
UNIXサーバーは、出荷台数が前年比30%減の2万9922台、出荷金額が21%減の1768億円。「上位クラスは景気後退による基幹システムの投資抑制による影響、下位クラスではIAサーバーへの需要分散などが影響しており、厳しい1年となった。金額ベースでは5%減を想定していたが、それをはるかに下回る結果となった」(山口委員長)という。
300万円~1000万円未満のUNIXサーバーの出荷金額は、前年比0.4%減の572億円と、それほど落ちてはいないが、300万円未満や、1000万円以上のUNIXサーバーの出荷金額が落ち込んでいる。
IAサーバーとUNIXサーバーをあわせたオープンサーバーは、出荷台数が前年比6%減の34万7054台、出荷金額が15%減の4087億円となった。
メインフレームは、出荷台数が前年比16%減の601台、出荷金額は28%減の1197億円となった。同委員会では、出荷台数は年率15%程度で減少すると予測していたが、ほぼ予想通りの結果になったとしている。「国家公務および政府関係機関でのリプレースの端境期にあったことが影響している」という。
そのほか、独自OSサーバー(オフコン)の出荷台数が前年比26%減の2049台、出荷金額では38%減の152億円。ワークステーションは、出荷台数が8%減の9万6617台、出荷金額は12%減の252億円となった。
メインフレームの出荷実績 | UNIXサーバーの出荷実績 |
また、同委員会では、2009年度以降の見通しについても発表した。
「2009年度は、経済状況が依然不透明であり、製造、流通、金融などの民需分野を中心にIT投資が大幅に抑制される。サーバー需要は非常に厳しい状況が続くだろう」とした。
2009年度は、メインフレームの出荷台数が前年比5%減の580台、出荷金額が15%減の1023億円、UNIXサーバーは出荷台数が10%減の2万6884台、出荷金額が13%減の1530億円、IAサーバーは出荷台数が4%減30万3333台、出荷金額が8%減の2135億円と予測した。
だが、「2010年度以降は、国内経済の好転と投資の回帰により、緩やかな回復が期待できる。メインフレームは、需要は減少傾向にあるが、高度な信頼性が求められる社会インフラシステムの中核を担うという一定の需要が引き続き見込まれる。また、UNIXサーバーも、下位クラスを中心にしてIAサーバーへの需要分散によって減少が継続するが、企業の基幹システムを担うサーバーとしての需要がある。一方、IAサーバーでは、UNIXサーバーからの移行に加えて、中堅・中小企業などにも中核サーバーとしての普及が拡大。企業のTCO削減、サーバー統合、省スペース化の観点で、ブレードサーバーの導入が進行し、省電力、グリーンIT対応がリプレース需要を喚起する」との見通しを示した。
同協会の調査では、今後、ブレードサーバーを基幹システムに活用するという姿勢を持っている企業が増加しているという。
IAサーバーの2011年度の出荷予想は、台数ベースでは33万7609台、金額ベースでは2281億円。「出荷台数の成長はブレードサーバーがけん引することになる。IAサーバー全体では、2009年度を底にして成長に転じるが、出荷金額ベースでは、2011年度においても、まだ2008年度の実績レベルまでは回復しない」(サーバ市場専門委員会・石原良一副委員長)という。
メインフレームの需要予測 | UNIXサーバーの需要予測 | IAサーバーの需要予測 |
一方、ユーザー企業を対象にしたITの活用現状とグリーンIT動向に関する調査結果についても発表した。216件のユーザー企業から有効回答を得ている。
これによると、2009年度のIT投資は、昨年に比べて増加すると回答した企業は24%にとどまり、減少するとした回答は36%を占めた。また、ユーザー企業が注目するテーマとしては、「ネットワークセキュリティの確立」が最も高い。さらに、「サーバー統合化による運用効率化」、「ネットワークストレージをはじめとしたデータストレージの確立」、「Webホスティングおよびハウジングなどの外部iDCの活用」が、2005年度の調査に比べて増加している。
サーバー、ストレージの保有率では、Windowsを稼働しているIAサーバーが91%と最も高く、Linuxを含めたIAサーバーやUNIXサーバーといったオープン系サーバーが90%台の稼働率となっていることがわかった。「オープン系サーバーでは、24時間365日対応で活用されるケースが多いことが、その背景にある」(サーバ市場専門委員会・西崎享副委員長)と分析している。
サーバー、ストレージの買い換えサイクルは、長期化の傾向が見られるとしており、メインフレームやオフコンでは6年以上となっている。
また、サーバー統合や集約化の取り組みは年々進展しており、2007年度に「統合・集約化を実施」と「計画/検討中」の回答をあわせて過半数を突破したのに続き、2008年度は「統合・集約化を実施」で38%、「計画/検討中」が31%と、あわせて約7割となった。
仮想化については、前年度調査で約6割だったユーザー企業の注目度合いが、2008年度実績では8割近くに上昇。採用済みとした回答が前年度の15%から2008年度は24%に、計画・検討中が前年度の26%から、38%に上昇した。
ブレードサーバーに関しても、利用済みが前年度の12%から、2008年度は25%と倍増。特に建設業/製造業での利用が促進されていること、従業員1000人以上の企業で多く利用されていることなどがわかった。
2008~2009年度のIT投資スタンスとIT投資推移 | サーバー統合・集約化についての取り組み状況 | ブレードサーバーの利用・関心状況 |
地球温暖化対策では、環境負荷削減を重視している企業は全体の73%に達しており、ITの活用環境において消費電力の削減を重視しているケースは約半数に達したという。ITの活用環境において、消費電力を減らしたい分野としては、「サーバー」、「空調設備」、「PC」が多い。
また、環境対策上の課題としては、「全体の電力測定ができていない」とする回答が約半数を占めた一方で、電力把握のための過剰な投資はしたくない」という声が次いで多く、ユーザー企業が困惑している様子が見受けられた。
同協会では、「景気低迷のなかでIT投資は減速しているが、そのなかでも、サーバー統合などによる運用管理の効率化と、グリーンIT化への取り組み需要はあると感じた」としている。
環境負荷を減らすことへの重視度合い | IT活用環境の消費電力量を減らしたい分野 |
2009/6/4 18:19