米IBMとチューリッヒ工科大学、廃熱を再利用する新水冷スパコン開発へ


 米IBMとスイス連邦工科大学チューリッヒ校(以下、チューリッヒ工科大学)は6月23日(現地時間)、新しい水冷スーパーコンピュータの開発計画を発表した。廃熱の再利用により、エネルギー消費量の40%削減、CO2排出量の最大85%削減を目指すという。

 開発するのは、「Aquasar」というシステムを採用した水冷スーパーコンピュータ。余剰な熱を直接再利用して大学校舎に還元するのが特徴で、従来の冷却技術を使用した同等システムと比べてCO2を最大85%、年間約30トン削減すると見込まれる。

 この水冷スーパーコンピュータは、1ラックに2つのIBM BladeCenterで構成され、ピーク性能で約10テラフロップスを実現。各ブレードのプロセッサごとに微小規模の水冷機能と、各ブレードと全体システムをつなぐ配水ネットワーク、および接続入出力用の配管を装備している。個々のブレード配管は、サーバーラックのより大きな配管に接続され、それらはさらに中央の配水網に接続される。

 水冷スーパーコンピュータは冷却液として10リットルの水を必要とし、そのポンプは約30リットル/分の配水を確保。冷却システム全体は完結した回路からなり、冷却水はチップで継続的に温められ、受動的熱交換機を通過する際に、必要最適温度へと冷却される。そこで取り除かれた熱を、同実験で対象となる大学の暖房システムに直接送ることで、エネルギーの節約が可能となる。

 同プロジェクトは、IBMの科学者と顧客が一体となり、実ビジネスの課題を解決するための最新技術を研究する「First-Of-A-Kind(FOAK)プログラム」の一環としてスタート。水冷スーパーコンピュータは、チューリッヒ工科大学に設置され、2010年から稼働する予定という。


(川島 弘之)

2009/6/24 12:25