日本IBM、ソリューション提供を強化する新パートナー施策-クラウドでの協業も


執行役員 パートナー事業担当の岩井淳文氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月6日、パートナー戦略に関する記者説明会を開催。執行役員 パートナー事業担当の岩井淳文氏が、単なる再販からの脱却を目指す、新しいパートナー戦略を説明した。

 日本IBMでは現在、「IBM PartnerWorld」というパートナー制度を設けており、リセラーやディストリビュータのみならず、SIer/NIerやISV、コンサルタントなど幅広いパートナーとビジネスを行っている。しかし、「従来、パートナー事業の中心であったハードウェア販売のビジネスは縮小傾向。ソフトウェアやハードウェアだけではマージンを確保できない」(岩井氏)状況であり、パートナーのビジネスにおけるサービス提供の割合は、年々大きくなっている。そこで、「経営環境、事業環境の変化を踏まえた、新しい戦略をベンダーが作っていく必要がある」との認識のもと、同社ではパートナーへの支援体制を強化することにした。

これまでの課題と今後の重点施策
パートナーとの協業領域拡大を図る
クラウドビジネスにおける協業モデル

 岩井氏は具体的な改善点として「継続的な関係強化」「支援体制の明確化」と、お互いのビジネスが発展する「Win-Winとなる仕組みの構築」を挙げ、これを踏まえて施策を実施するという。具体的には、販売支援やスキル育成支援など、従来施策の延長線上にある支援策を引き続き実施するほか、1)環境の変化に対応した多角的な支援、2)パートナーとのSmarter Planet推進、3)パートナーとのソリューション相互活用と新ビジネス・モデルの構築、4)One IBMでの支援、を柱として実施する。

 まず1)では、パートナーとの協業領域の拡大を目指す。これまでは、ハードウェア、ソフトウェアの再販が中心だったが、今回はサービスやASP/SaaS/クラウドといった領域でも、パートナーによる再販を推進する。さらに、パートナーの事業に日本IBMのソリューションを活用してもらったり、パートナーソリューションを日本IBMが拡販したり、といった施策も行っていくとした。このうち前者は、「パートナー自身に当社の製品、サービスを活用してビジネスをしていただくということ。例えば、当社のコンサルタントが入り込んで、新規事業を一緒に立ち上げる、といった考え方だ。パートナーのサービスが市場に入るが、その“部品”が当社のものになっていれば、結果として当社のシェアが高まる」(岩井氏)とした。

 2)は、IBMの戦略であるSmarter Planetをパートナーとともに推進しようというもの。具体的なイメージがつかみにくい分野だが、岩井氏は、「最終的には全部をやりたいが、まずは取っ掛かりとしてクラウドを推進する」と述べ、日本IBMのクラウドサービスのパートナーによる再販、パートナーが提供するクラウドサービスへの、同社からの支援を挙げたほか、プライベートクラウド(エンタープライズクラウド)をパートナーが提供する際に、その技術支援なども提供するとした。

 3)では、SOAや業種別ソリューションに基づいた協業を推進する。すでに発表しているコミュニティ活動などに加えて、「パートナーが持つソリューションの部品化を進め、場合によっては当社が活用させていただく」(岩井氏)。

 最後の4)は、日本IBM社内の体制整備に関すること。現在は製品・サービスごとの事業部体制に分かれてしまっているため、パートナーに対するアプローチも製品ごとに分かれてしまっている。しかし、「新たな施策を展開するためには、さまざまな製品事業が一緒にやっていかないとうまくいかない」(岩井氏)との認識から、仮想チーム「One Team for Partners」にまとめ上げ、共通の目標や評価基準を持ってビジネスにあたるという。

 この例として岩井氏は、「当社が強く訴求しているストレージ製品は、単体でも強みを持つが、Tivoli Storage Managerなどソフトウェアが持つ強みや、それらとの相性の良さについても市場にアピールしたい。また、データ移行サービスのソフテックなども当社では手掛けている。これらは、今までであれば3事業部が独立してパートナーにあたっていたが、対応窓口を一本化できる」と、そのメリットを説明。複数の製品を組み合わせた、ソリューションとしての価値を説明できる体制を整えるために、直接パートナーと接する営業部隊の教育を徹底し、ソリューションを展開できるパートナーを増やしたい考えを示した。

 なお、このパートナー施策強化によって狙う顧客企業のターゲットは明確に定めていないとするが、「SOAやクラウドなどでは、中堅・中小企業で使われることが多くなってくるので、そこだけを狙っているわけではないものの、結果的には中堅・中小企業向けが主力となるだろう」(岩井氏)とのこと。

 「物販や単品だけの提供では価値が出しにくいが、例えばクラウドの領域では、ハードウェア、ソフトウェアで複合的に価値が出せる。価格勝負の世界からの脱却をはかり、高い付加価値を持ったパートナー事業を作っていきたい」(岩井氏)。


(石井 一志)

2009/7/6 15:28