富士通が中期経営方針を発表、「2011年度には過去最高益を目指す」
富士通株式会社は7月23日、経営方針説明会を開催し、2011年度までの中期経営方針を発表。代表取締役社長の野副州旦氏が「日本に軸足を持つグローバルなIT企業を目指したい。厳しい情勢ではあるが、2009年度は、2年連続の赤字を絶対に出さない覚悟でやっている。構造改革を進め、2011年度には過去最高益を達成する」などと述べた。
野副社長はまず2008年度を振り返り、Fujitsu Siemens Computersの完全子会社化、HDD事業をはじめとする事業の譲渡、グローバルサービスの強化といった施策を行ったことを説明。「大きな痛みがあったことは否定しないが、富士通が目指すべき方向が外にいる人にも形として示せた」と述べ、一定の成果を上げたとする。
しかし2008年度は、1123億円と大きな純損益を出してしまっている。これについて野副社長は「赤字になったことには経営責任を強く感じている」としたものの、「営業利益については、本業が強いことを数字で示せた。(計上されている特別損失には)2009年度、2010年度に向けた事業構造に必要な引き当てが含まれており、効果が出てくることを理解いただけたのではないかと思う」と話した。
代表取締役社長の野副州旦氏 | 2008年度の主な取り組み |
日本に軸足を置くグローバルIT企業を目指す |
また今後については、「2009年度が底だろうと思っている。2010年度から回復する景気に追随できる体制を作れるかが鍵。オーガニックに大きな売り上げ拡大は見込めないが、積極提案により、当社への期待が高まっていることは実感している。雲が晴れた時に思い切り飛躍できるような体制を2009年度に作り上げたい」と述べ、よりいっそう構造改革を進める意向を強調。また海外については、「Fujitsu ServiceとFujitsu Technology Solutionsで基盤固めができれば、海外ビジネスの脆弱さは払しょくできる」との見方を示す。
その上で、「この3年で、日本に軸足を置くグローバルIT企業として確立する」ことを目標として掲げ、「日本で受け入れられることがグローバルでの基盤になる」とした。野副社長はさらに、「海外では破壊と創造によるプロセスで、日本との融合を図る。また、グローバルでは人に依存せず、テクノロジーソリューションを中核に、サービスとプロダクトを両輪としてビジネスを進める」と戦略を説明。その上で、「お客さまのビジネスを良くする、グローバル、環境という3つの起点を徹底したい」とした。
グローバルな視点で考え、ローカルに実践する「Think Global、Act Local」の方針のもと、サービスとプロダクトの両輪でビジネスを推進。国内では、「富士通ではシステムを決して作りっぱなしにしない」とし、サービス、保守なども含めて、顧客の経営に寄与できる真のパートナーを目指すとする。一方、これまでになかなかリーチしきれていない中堅の下から中小の企業については、100%子会社化した富士通ビジネスシステム(FJB)のリソースを活用して、パートナー/チャネルとの関係を強化する考えで、「外部チャネルに対して、当社が魅力的だという訴求力のある提案ができなかった。プロダクト、営業、SEなどがチームとなってお客さまに最適なものを提供する、製販一体のモデルを作り上げていく」と述べている。
富士通では、こうした施策をもとにビジネスを立て直す方針で、「2009年度は絶対に赤字を出さない覚悟でやっている。また、2011年度は過去最高益を目標として掲げる」(野副社長)とする。その背景としては、2010年度には、事業ベースでは600億円の成長ができる構造改革を進めているほか、HDD事業譲渡などの事業再編、年金の償却減などで600億円の効果を見込んでいるとのこと。野副社長はさらに、「2011年度にはさらなる構造改革があり、戦略投資を相殺しても、事業ベースで500億円の成長を見込む。当社がITの世界でグローバルプレーヤーとして認知されるためには、このくらいの数字が必要だろう」と話し、業績回復への自信を示した。
中期業績目標 | 事業ベースの成長や年金の償却減などで2011年度には2500億円の営業利益を見込む |
なお、野副社長が両輪としたうちのプロダクトについては、それを下支えするための技術の重要性に触れ、月探査機「かぐや」のモニターにも富士通の技術が使われていること、また宇宙航空研究開発機構(JAXA)で稼働を開始した91.19%の実行効率を持つスーパーコンピュータシステムや、2157台のブレードサーバーを用いた日本原子力研究開発機構(JAEA)のスーパーコンピュータシステムなどを例に挙げて、その技術力の高さを強調。「たくさんのお客さまからこういった技術を富士通は持ち続けてくれと言われている。優れた技術を持ち、そこからプロダクトが生まれ、ソリューションにつながる。こうしてお客さまに利益を提供できる」と述べ、今後も技術力を維持していくことをアピールした。
2009/7/23 17:37