日立、日立情報や日立ソフトなど上場5社を完全子会社化

川村社長が記者会見、「社会イノベーション事業で再生を遂げる」

 株式会社日立製作所(以下、日立)は7月28日、上場子会社5社の完全子会社化を目的とし、各社の普通株式などを公開買い付けにより取得すると発表した。2009年度内をめどに完全子会社化を行う意向で、執行役会長兼執行役社長の川村隆氏は、「当社は、高信頼・高効率な情報通信技術に支えられた社会インフラを構築する『社会イノベーション事業』で再生を遂げようと考えており、そのために上場5社を完全子会社化する」と述べた。

 公開買い付けにより完全子会社化を行うのは、株式会社日立情報システムズ(以下、日立情報)、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(以下、日立ソフト)、株式会社日立システムアンドサービス(以下、日立システム)、株式会社日立プラントテクノロジー(以下、日立プラント)、日立マクセル株式会社。

今回完全子会社化する5社の概要執行役会長兼執行役社長の川村隆氏
情報通信システム事業の強化
社会インフラ事業の強化
リチウムイオン電池事業の強化

 このうち日立情報、日立ソフト、日立システム、3社の完全子会社化は、同社の情報通信システム事業の強化を目的として実施する。川村社長はその理由を、「情報通信についてはグループに強い会社がある。これらと、本社の中の情報通信(グループ)を一体化し全体的な運用ができないかと考え、それを実行しようとしている」と説明。アウトソーシングやSaaSなどへの取り組みを許可するほか、ITライフサイクル全般にわたるワンストップサービスを提供するとした。また事業強化のための重点戦略として、グリーンデータセンター事業、アウトソーシングやクラウド事業、グローバルへの拡大、ミドルウェアや組み込みソフトウェアなどを列挙。さらに「金融・公共はもちろん、産業・流通分野の中小企業も強化する」としている。

 また、日立プラントは社会インフラ事業の強化を目的に、日立マクセルはリチウムイオン電池事業の強化を目的に完全子会社化を行う。前者では、「新興国対応がまずあり、加えて先進国での、高付加価値、低環境負荷のリノベーション需要への対応がある」とコメント。日立マクセルについては、「キーデバイスの中のポイントになるであろう電池に関しては補強がいると考え、日立マクセルを子会社化する。主として日立マクセルは民生用の電池を6億セルくらい作ってきたが、その特徴は事故を起こしていないこと。この特徴を引き継ぎ、社会産業向けの電池を作ろう、拡大していこうという目的だ」と話した。

 なお、社会イノベーション事業について川村社長は、「当社では2007年ごろからこういう動きをしており、原子力や鉄道から始めて、今年に至るまで強化を続けてきた。事業ポートフォリオの転換に向けて、コンシューマPCからの撤退なども行っている。そうした中で、中核となるグループ会社に必要な技術があるので一体化をする」と方向性を説明。グローバルでの営業力強化、海外プラント事業の強化などにより、グローバル展開を加速させるとしており、「社会イノベーション事業が、先進国でも新興国でも同じような比率で伸びている。現在は売り上げのうち海外が41%、従業員が国外14万人、国内26万人だが、これが近々に逆転していくと思っている」と述べた。

 「経営基盤強化のために、材料も、キーコンポーネントも、製品も自分で作り、メンテナンスも最終的なサービスもグループ内で提供するような、ライフサイクル収益の最大化を図る。社会イノベーション事業の場合はこれが非常に有効だ。7つのカンパニーとグループ企業をあわせた約40の事業部門を動かしていく。本年度は集中的な改革を推進し、2010年度には最終損益を必ず黒字にしたい」(川村社長)。

 なお、「買収にはすべて現金だと2790億円かかるが、当面の資金はコミットメントラインで資金調達が可能。今後は、幅広く資金調達方法を検討したい」(執行役副社長の三好崇司氏)とのことである。


(石井 一志)

2009/7/28 14:26