NTT、動画ピクトグラムを用いたコミュニケーション支援システムをパイロット公開


同社未来ねっと研究所ユビキタスサービスシステム研究部 主任研究員の中園薫氏
VUTE2009
VUTEの技術的な特長

 日本電信電話株式会社(NTT)は8月18日、文字や音声を使用しないコミュニケーション支援システム「VUTE」のパイロット版「VUTE2009」を開発したと発表した。同社サイトにおいて、2010年3月31日まで公開する。

 VUTEは、ピクトグラムをアニメーション化した動画ピクトグラムを用いることで、コミュニケーションを支援するツール。総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の平成20年度新規採択課題の一環として、NTT、工学院大学、沖コンサルティングソリューションズの三者共同で受託し、研究開発したもの。今回公開されたVUTE2009は、119番通報で必要となる要件に絞って開発されたパイロット版。ただし、パイロット版であるため、実際の救急通報では利用できない。

 開発を担当した同社未来ねっと研究所ユビキタスサービスシステム研究部 主任研究員の中園薫氏は、「グローバル化により、海外から日本にくる旅行者のほか、労働者も増えている。そうした方々がすぐに日本語を話すことはできず、救急時のコミュニケーション手段が乏しいのが現実。また、聴覚障がい者にとっては、音声コミュニケーションが困難で、筆談などでのコミュニケーションも難しい場合もある」と、文字や音声に頼らないコミュニケーション手段の必要性を説明。

 「実際、サッカー日本代表前監督のオシム氏が脳梗塞(こうそく)で倒れた際、日本語が話せない奥さんは電話することもできず、深夜であったことから知人に連絡しても通じないといった出来事もあった」と、具体的な事例をあげ、VUTEのようなコミュニケーション手段の重要性を強調した。

 VUTEは、携帯電子端末上で音声も文字も使うことなく操作できるのが最大の特長。また、手話が持つユニバーサル性の高い表現手法を動画ピクトグラムで採用。その上で、単純ながらも表現力豊かなマンガ的表現を用いることで、より理解しやすい動画ピクトグラム体系を構築している。また、状況に合わせた絵を選択し、必要な情報が集まったところで内容に応じた日本語の文章を自動作成できるので、その文章を見せたり、メールで送信したり、合成音声で読み上げるなどして伝えることができる。


示される動画ピクトグラムから該当するものを選択選択した動画ピクトグラムにより条件を絞っていく最終的には文章となって表示。初期設定で氏名や住所を設定しておけば、そのまま緊急通報で利用できる
同社未来ねっと研究所ユビキタスサービスシステム研究部 部長の佐藤良明氏

 同社未来ねっと研究所ユビキタスサービスシステム研究部 部長の佐藤良明氏は、「今回公開したVUTE2009はFlashベースで作成しており、PCのWebブラウザ上で動作する。ただし、最終的な実装方法は現時点では未定。できる限り広く利用していただけるような方法を検討している。また、実用化には数年はかかる見込みだが、今回のようにシチュエーションを絞ることで、早く実用化することも可能」と説明。今後、旅行会話などへ適用範囲を拡大するほか、ピクトグラムの語彙(ごい)数の充実、動画ピクトグラム自体の標準化などを目指すとしている。



(福浦 一広)

2009/8/18 17:21