マイクロソフト、Windows 7のアクセシビリティ機能を拡充


マイクロソフト 最高技術責任者の加治佐 俊一氏

 マイクロソフトは19日、Windows 7のアクセシビリティへの取り組みに関する記者発表会を開催。22日発売のWindows 7での強化点や、パートナー企業との連携、アクセシビリティガイドブックの無料配布などについて説明した。

 アクセシビリティ機能とは、障害者や高齢者など、視力や四肢の不自由などからパソコン操作が難しいユーザー向けの、コンピュータ利用を支援する技術および機能を指す。マイクロソフトでは20年以上にわたりこうしたアクセシビリティ機能への取り組みを続けているが、Windows 7ではユーザーの声を取り入れた機能拡充を行ったほか、開発段階からのパートナー企業との連携強化により、アクセシビリティ製品の拡充を目指したという。

Windows 7のアクセシビリティ機能

 Windows 7ではVistaと同様に、アクセシビリティの設定を[コントロールパネル]→[コンピューターの簡単操作]の1カ所に集約。「画面を見やすくしたい」「キーボードを使いやすくしたい」など目的別に設定できる。とくに、よく使われる拡大鏡、スクリーンキーボード、音声読み上げのナレーター、ハイコントラストを調整する機能の4つについては、手軽に設定できるようクイックアクセスが用意されている。

 拡大鏡機能では、OSで対応することにより、どの画面からでも[Windowsロゴ]キー+[+]キーのショートカットで拡大鏡を起動することが可能になった。表示は、「全画面表示」「レンズ」「固定」が用意されている。

 タッチ機能にも対応するスクリーンキーボードでは、利用するパソコンによってディスプレイ解像度などが違うため、新たにキーボードの大きさが変更できるようになった。

 また、Windows 7で強化されたアプリケーションの起動やウィンドウの操作のための新機能や新たなキーボードショートカットによって、マウスやキーボードの操作が難しいユーザーにも、より少ない操作で目的の作業ができるようになった。

 具体的にはたとえば、[スタート]ボタンからスタートメニューを立ち上げると、[プログラムとファイルの検索]が選択された状態になっているので、そこで「メモ」と入力すると、検索結果として「メモ帳」が表示される。ここで、[Enter]キーを押すだけでメモ帳が起動する。また、検索結果の文書の内容についても、プレビューウィンドウでファイルを開かずに内容が確認できるようになっている。

 このほか、サポートを受ける場合にも、Windows 7から搭載された「問題ステップ記録ツール」によって、問題が出たパソコンの操作手順を自動的に記録可能となった。記録が終了するとzipファイルに保存されるため、zipファイルを送信するだけで、サポート担当者に問題の状況を確認してもらうことができる。

 マイクロソフトではWindows 7対応版の「アクセシビリティ ガイドブック」を用意。マイクロソフトのアクセシビリティWebサイトでPDF形式で無償配布する。ショートカットキーの一覧なども、ガイドブックで一覧にまとめられている。

拡大鏡
(+) (-) ボタンのクリックで、100~1600%まで16段階の倍率調整が可能。Vistaでも搭載しているが、7ではメニューをたどる必要なく、ショートカットキーでどの画面からでも呼び出し可能になった
スクリーンキーボード
Windows7では、従来の利用者から要望が大きかった、キーボードのサイズ変更が可能になった

アクセシビリティにおける連携

 日本国内で25の支援技術企業や団体がWindows 7対応製品を開発しており、順次対応製品が提供される。Windows 7発売日の10月22日には、音声合成・認識プログラム「ドキュメントトーカ」を提供するクリエートシステム開発株式会社、体の残存機能を活用したパソコン操作を行うための機器やソフトを提供する「できマウス。」プロジェクトなど7パートナー企業がWindows 7対応製品を出荷する。

 アクセシビリティに限らないWindows 7対応周辺機器およびソフトを見ると、RC段階で約80%の企業が対応を開始しており、Windows Vista発売時に比べ、2.5倍の対応製品がリリースされる見込みだという。

 マイクロソフトが全世界で展開する、アクセシビリティ支援技術の開発企業や団体向けの支援技術ベンダープログラム「MATvp(Microsoft Assistive Technology Vender Program)」についても、参加組織がVista発売時の9から25に増加。日立製作所、東京大学先端研バリアフリー系、静岡県立大学、NECパーソナルプロダクツなど25の企業や大学、団体が参加している。

記者会見では、パートナー企業の製品のひとつ、日立製作所「伝の心(でんのしん)」が紹介された。社員が筋萎縮症側索硬化症(ALS)にかかったことが開発のきっかけだという一部の残存機能を使って、スイッチを押すなどの簡単な操作でパソコンを操作。メールのやりとりや、ページめくり装置を利用して本を読むことも可能になる

 マイクロソフト最高技術責任者の加治佐氏は、「マイクロソフトではセンサーAPIも用意しており、センサーAPIを活用するデバイスは現状では限られているが、将来的には、パソコンの形をしていないコンピュータが増え、アクセシビリティ機能を持つ機器にも応用されるだろう」「マイクロソフトリサーチの中でも、ナチュラルユーザーインターフェイスは大きなテーマとして研究開発活動を行っている」と述べ、“パソコンの形をしたコンピュータ”以後も視野に入れて研究開発を行っていると説明。

 加治佐氏は、「今後もマイクロソフトだけでやるということではなく、パートナーと一緒になりながら、すべての人の可能性を広げていくということを続けていきたい」と述べた。

(工藤 ひろえ)

2009/10/19 17:25