日本オラクルと日立、「現実的な移行シナリオ」でのデータベース統合を検証

BladeSymphonyとOracle RACで、24台のx86サーバーを3台に統合

グリッド技術による論理層の統合を図る
日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏
性能検証の結果、24業務を3台のサーバーブレードに統合できたという

 日本オラクル株式会社と株式会社日立製作所(以下、日立)は10月26日、データベース統合に関する共同検証を完了したと発表した。この検証では、日本オラクルのOracle Real Application Clusters(RAC)と日立のブレードサーバー「BladeSymphony」を利用。データベース環境の集約を行うとともに、そのための手順を確立し、顧客へサービスとして提供できるようにすることが目的という。

 現在は、コスト削減や管理負荷削減などを目的に、さまざまなアプリケーションサーバーをサーバー仮想化ソフトとブレードサーバーで集約し、サーバー統合を行うことが一般化してきた。しかし、こうした統合の中心は比較的処理の軽いソフトウェアであり、「I/O処理が重かったり、高い可用性を要求したりするデータベースは、統合の対象外」(日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏)になっている。また、仮に統合したとしても、「データベースインスタンスの数がそのままであれば、余計にコンフィグレーションが複雑になるだけで、管理工数は変わらない。それぞれのシステムにインスタンスがある手法が限界に来ている」(同氏)という問題もあった。

 そこで日本オラクルでは、サーバー仮想化ソフトを用いるのではなく、グリッド技術を用いて論理層を統合する手法で、データベースの集約を行うことを提唱している。すでに、佐川急便や楽天トラベルなどにおいては、複数のx86サーバーの上に、仮想的な共通プラットフォームを構築し、複数のアプリケーションでそれを共有する仕組みを構築した実績もあるという。

 今回の検証も、こうした手法が採用されている。中でも、現実的な移行シナリオでの検証を意識。5年前のx86サーバーとOracle 9i Databaseを、最新のブレードサーバーとOracle Database 11gにどの程度集約できるかを検証した。それによると、8コアのサーバーブレード「BS320」3台と、「Hitachi USP-V」ストレージ、Oracle Database 11g、Windows Server 2008の環境に、サーバー24台に相当する24業務の統合を実現。業務の追加にあたっては、直線的に、かつ安定して性能がスケールしたほか、Oracle RACや、付加価値として提供できる暗号化の機能を利用しても、それらのオーバーヘッドが非常に少ないことがわかったとした。

 こうした統合の効果は、単にサーバーの台数を削減するのみならず、インスタンスの統合による運用管理面での効果や、設置面積、消費電力といった面でも発揮可能。また、24業務を統合した時点でのCPU利用率は65%にとどまっており、「1台のサーバーブレードが故障したとしても、残りの2台にデータベース処理を振り分けて業務を継続できる」(日立 ソフトウェア事業部 オラクルビジネス統括センタ 技師の片山仁史氏)ことから、可用性についても問題ないとしている。

 今回の検証で、5年前のx86サーバーを基準としたのは、サーバーの導入/リプレースのサイクルが約5年であることが多いため。三澤氏は、現在リプレースの対象となるOracle Database用途のx86サーバーが約6万台あるというデータを示し、データベース、x86サーバーともに更新需要が見込めると強調している。

 なお両社では、こうした検証成果を受けて、「日立-Oracle DB統合センター」を日本オラクルの「オラクル・グリッド・センター」内に開設。検証で得られたノウハウを活用し、データベース統合のアセスメントサービスや、PoC(導入実証)などによる移行支援サービスを提供するとのこと。さらに、「データベースサーバ統合テクニカルサービス」の名称で、統合環境設計、稼働診断、バックアップ/リカバリ、マイグレーションなどのサービスを用意する予定。アセスメントなどの一部サービスはすでに提供を開始しているが、サービスメニューの体系化は2010年1月を予定している。

 「データベース統合に関して、きちんとした結果を提供できたことが大きい。不況で大型プロジェクトがストップする中で、ROIが見えやすい統合案件は活性化しており、データベース統合についても案件が増えてきた。共通プラットフォーム化という手法は他社データベースでは難しく、当社ならではの価値が提供できる。お客さまのインフラ刷新に協力したいと考えている」(三澤氏)。


(石井 一志)

2009/10/26 14:29