SAS、ネットワーク分析をコアにした不正利用対策ソリューション

多様化する金融犯罪の不正パターンを検知

SAS Fraud Frameworkの全体像
執行役員ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長の宮田靖氏
ビジネス開発本部RIビジネス開発部長の高橋昌樹氏

 SAS Institute Japan株式会社(以下、SAS)は12月10日、最新の不正利用対策ソリューション「SAS Fraud Framework」を2010年1月から提供すると発表した。

 このソリューションは、不正検知・アラート生成、アラート管理、ケース・マネジメントをサポートする各種コンポーネントと、最新のネットワーク分析ツール「SAS Social Network Analysis」から構成され、SASが提唱する「Enterprise Fraud Management(全社的不正対策)」を実現するもの。多様な金融犯罪に対応するため、単純なルールベース手法による既知の不正パターン検出を始め、高度な分析技術を活用した未知の不正パターン検出、そして顧客間ネットワーク分析による隠れた組織的な不正の検出まで、複数の対応手法を提供。これらを組み合わせた「ハイブリッドアプローチ」の採用により、金融犯罪を効果的に検知することが可能となる。

 執行役員ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長の宮田靖氏は、「日本における金融犯罪は振り込め詐欺が代表的だが、実はこのほかにもさまざまな手口があり、次々と新しい手口が生み出されている。金融機関にとっては、多様化する金融犯罪の手口を見つけ出し、対策を施していく必要があるが、これは非常に難しいのが実情。こうした状況の中、当社では、いままで海外銀行向けに手掛けてきた不正利用検知プロジェクトのノウハウを生かし、今回、多様な金融犯罪に対応できる不正利用検知フレームワークとソリューションを確立した。ネットワーク分析をコアにさまざまな分析を行うことで、犯罪の手口が明らかでない場合でも、新たな手口を発見し、防止することができる。これにより、日本における金融犯罪の防止にさらに貢献していく」と、新ソリューションを提供する背景と狙いを述べた。

 新ソリューションのコアとなるネットワーク分析を実現するのが「SAS Social Network Analysis」。顧客に関するすべての詳細情報を解析することで、顧客間の隠れた関係性を洗い出し、その結果を優れた視覚化機能によってビジュアルに表示・分析することができる。ビジネス開発本部RIビジネス開発部長の高橋昌樹氏は、「ネットワーク分析では、人と人のつながりを分析することで、疑わしいネットワークを発見する。顧客の住所、電話番号、メールアドレスなどの所有関係を分析するハードリンクと、口座間の取引履歴など顧客の行動を分析するソフトリンクを組み合わせ、それぞれのネットワークを評価。その疑わしさをスコアリングして、調査の優先順位を表示する。これにより、これまで発見が難しかった組織的な不正利用ネットワークを容易に特定・管理することができる」と説明した。

 その他の各コンポーネントの特徴としては、「不正検知・アラート生成」では、複数の手法を組み合わせるハイブリッドアプローチによって、多様な不正パターンを検出し、アラートを生成する。組み合わせる手法は、1)ルールベースの手法による既知の不正取引パターンの検出、2)基本統計量、回帰分析、ピアグループ分析などによる未知の不正パターン(個別取引・複合取引の異常なパターン)の検出、3)ニューラルネットワーク、決定木、一般化線型モデルなどによる高度で複雑な不正パターンの検出で、各手法とも最先端の不正検知技術で構成されている。

 「アラート管理」では、発生した複数のアラートを統合し、優先順位の付与を行って「ケース・マネジメント」コンポーネントに引き渡す。アラートデータをもとに、誤検出の低減や検知ロジックの効率性のモニタリングを行うためのモジュールを提供する。

 調査を記録する際の重要な土台となる「ケース・マネジメント」では、不正による損失など、財務情報のための記録を提供するとともに、法規定にもとづく報告を監督機関に行う際の主要な資料として活用できる。さらに、調査中のケースの内容は、それ以降のモニタリングを強化し、また組織全体としての業務効率を改善するために重要な役割を担う。


アラート詳細の画面ネットワーク分析機能の画面ネットワークの特性を理解するための分析機能

 同社では、まずは大手金融機関をメインターゲットに「SAS Fraud Framework」を提供し、2年目以降には保険・医療にかかわる不正請求の検知、また官公庁における社会福祉の不正受給の検知向けにもビジネス展開していく方針。さらに、ネットワーク分析をコアにして、不正検知だけでなく、通信事業者などの口コミ効果を狙ったマーケティングや解約防止にも同ソリューションを応用していく考え。



(唐沢 正和)

2009/12/10 18:48