VMwareの仮想環境をフル活用した「ニフティクラウド」の実力を見る
2008年の金融危機以降、自社でシステムを持たない“クラウドコンピューティング”に関心が集まりつつある。このクラウドコンピューティングに対するひとつの回答となりそうなのが、ニフティ株式会社が開始した「ニフティクラウド」だ。1月27日よりサービスを開始したニフティクラウドは、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれるインフラ基盤をサービスとして提供している。今回、このニフティクラウドを試用する機会が得られたので、機能や使い勝手などを紹介する。
■@niftyのサービス基盤をそのまま使ったニフティクラウド
今回サービスを開始したニフティクラウドとは、どのようなサービスなのだろうか。
営業本部ISP営業部の上野聡志氏 |
同社営業本部ISP営業部の上野聡志氏は、「ニフティが持っている数千台規模のサーバーを、顧客専用のプラットフォームとして提供するのがニフティクラウドです。クラウドといってもさまざまなサービス形態がありますが、今回提供しているのは、ハードウェアとOSを仮想環境で提供するIaaSです」と、同社が持つサーバー基盤をそのまま利用して提供するサービスであることを強調する。
実は、同社が提供する160のサービスが、VMwareで構築された仮想化環境で運用されている。「2007年からデータセンターの仮想化を開始しています。@niftyのサービスもこの基盤上で運営されています。リアルユーザーとしての利用経験とデータセンターの運用経験を兼ね備えているのが、ニフティクラウドを提供する上で大きな強みとなっています」(上野氏)と語るように、すでに運用実績のあるサーバー基盤をIaaSとしているのが特長だ。
160のサービスがクラウド基盤で稼働中。この基盤を利用して提供されるのがニフティクラウド | @niftyの運用実績をそのまま生かしてサービス化しているのが最大の特長 | パフォーマンスの高さもニフティクラウドの特長 |
同様のサービスを提供している企業として、米Amazon.comの「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」がある。「ニフティクラウドもAmazon EC2も同じパブリック型のクラウドコンピューティングサービスですが、米国にサーバーがあるAmazon EC2に対して、国内のデータセンターを利用しているニフティクラウドは約10倍のネットワークレスポンスを実現できるのが強みです。また、CPU性能に関しても、最新ハードウェアを使っているニフティクラウドが約2.8倍のパフォーマンスとなっています」(編集部注:数値は同社ベンチマークツールで調べたもの)と、最新環境を国内で提供することの強みを挙げた。
ニフティクラウドの構成 |
価格も、Amazon EC2を意識した価格体系を採用。仮想CPU数・メモリ容量・HDD容量により、5つのサーバータイプが用意されており、最小構成の「Mini」の場合、仮想CPU(1GHz相当)×1、512MBメモリ、30GB HDDの構成で、1時間あたり12.6円(停止時は5.25円)から利用できる。また、従量制のほかに、月額課金モデルも用意されており、Miniの場合で7875円となっている。これ以外にネットワークの利用料も必要で、1GBあたり15.75円となっている。
OSは、現時点ではCentOS 5.xのみが提供されているが、Red Hat Enterprise Linux 5.xとWindows Server 2008 R2の提供も予定されている。
■ニフティクラウドを試してみる
ニフティクラウドの実力を知るには、実際に使ってみるのが一番だ。ということで、サービスを開始したニフティクラウドを利用してみた。
ニフティクラウドは、@niftyの法人会員であれば、すぐに利用できる。申し込みページでIDを入力し、利用規約を確認し合意するだけだ。なお、ニフティクラウドを利用できるのは、現時点で法人会員(請求書・口座振替での支払い)に限定されているが、4月以降にはクレジットカード利用にも対応する予定だ。
申し込み後に行う作業は、サーバー作成時とサーバーへのログイン時に利用されるSSHキーを作成すること。このSSHキーはあとで作成することもできるが、この段階で作っておけばいいだろう。なお、ここで生成されるSSH秘密鍵のファイルは一度しかダウンロードできないので、なくさないようにしてほしい。
ダッシュボードの基本画面。まだサーバーは作成していないので、リソース画面にはなにも表示されていない |
SSHキーを作成すると、サーバーの作成など各種操作が行えるダッシュボードが表示される。ダッシュボードのトップページには、作成したサーバーの数や追加ディスクの利用状況、そして利用料金といった情報が表示される。金額が赤色の太字で表示されるところなど、コンシューマ向けのサービスを提供している会社らしく、わかりやすさにこだわっている印象を受けた。
サーバーを作るには、ダッシュボードの左側にある「サーバー」をクリックし、サーバーの管理画面に切り替えて「サーバー作成」ボタンをクリックするだけだ。サーバー作成のウィンドウが表示されるので、必要な情報を指定していけばOK。rootパスワードは、作成したサーバーにアクセスするときに使うパスワードなので、忘れないように気をつけよう。ここでも、利用料金が大きく表示されているので、いろいろと選びながら検討できるのも利用者にとってはありがたいだろう。
ステータス部分に緑のマークが表示されれば、サーバーの作成は終了だ。あとは、ターミナルソフトなどを使って、作成したサーバーにアクセスするだけだ。アクセスする際、SSH2でアクセスすることと、RSA鍵を使うことの2点を間違えないようにしよう。
同社がアナウンスしているようなパフォーマンスが本当に出ているかどうかは、実際に触ってみて確かめていただきたい。Webサーバーなどを構築してテスト運用してみたが、個人的にはストレスなく使える印象を受けた。
■ニフティクラウドは企業で使えるか
ニフティクラウドは、Webサービスをサクっと立ち上げたい企業にとって、非常に便利なサービスといえる。利用当初は開発環境として使い、めどが立った時点でそのまま外部に公開すればいいからだ。開発段階でネットワークのパフォーマンスも確かめられるので、本番環境に限りなく近い開発環境として利用できるのはありがたいだろう。
サーバーの性能も、最小構成でスタートしておき、必要に応じて拡張するといった使い方ができるのが便利だ。また、サーバーの増設もボタンひとつで行えるのだから、手間がかからないのがいい。新規事業をスモールスタートするのにも最適な環境といえる。
では、企業がITインフラとしてニフティクラウドを利用するメリットはあるのだろうか?
現時点では明確な回答は出せないが、同社の計画を見ると十分に利用できるサービスになりそうだ。
ニフティクラウドで提供されるサーバーは、インターネットとプライベートネットワークの両方に接続できる構成になっている。現時点では提供されていないが、インターネットに接続しないでニフティクラウドのプライベートネットワークだけにアクセスできるサーバーを構築することも可能というわけだ。そのほか、VPN接続などのサービスも計画されているので、これらを組み合わせて社内ネットワークの一部としてニフティクラウドを活用できるとおもわれる。
また、VMwareベースの仮想イメージの持ち込みといったサービスも計画されている。これを使えば、企業内で運用しているVMware上の仮想マシンをそのままニフティクラウドに移動するといった使い方が可能になる。
サービス開始のアナウンスから一週間で300件ほどの問い合わせを受けたと上野氏が紹介するように、ニフティクラウドはさまざまな可能性を感じるサービスだ。1カ月使い続けても1万円程度の出費で済むので、早めに評価しておくといいだろう。
2010/2/19 11:30