日本IBM、1GB単位でデータを再配置するストレージ最適化技術「Easy Tier」


 日本アイ・ビー・エム株式会社は4月21日、ストレージ製品群の強化を発表した。ハイエンドストレージ「IBM System Storage DS8700」において、1GB単位でデータの自動最適配置を行う機能を搭載したほか、仮想テープライブラリ「同 TS7650 ProtecTIER」において、レプリケーション機能を強化している。

 日本IBMでは、データ量が爆発的に増大する一方で、昨今の経済情勢を反映して、「増え続ける容量に対して、ストレージを購入できないという厳しい予算がある」(システム製品事業 ストレージ事業部長 山崎徹氏)現実を考慮。増え続けるデータ量を抑制し、より“賢く”使っていくことを、仮想化技術によって支援する方針を掲げている。

 山崎氏は、この実現のため、「ワークロードのタイプを『トランザクション・DB処理』『ビジネスアプリケーション』『アナリティック』『Web、コラボレーション』『デジタルレコード、アーカイブ』といった5つに大きく分類し、それぞれに対して、最適なストレージソリューションを提供する」と述べたが、今回提供するDS8700とTS7650 ProtecTIERの機能強化も、この方針に沿ったものだ。

システム製品事業 ストレージ事業部長 山崎徹氏5つのワークロードに対して、それぞれ最適なストレージソリューションを提供するという
ストレージ階層化技術「Easy Tier」

 このうちDS8700に対して行われた強化は、ストレージ内でデータを自動再配置するストレージ階層化技術「Easy Tier」で、「トランザクション・DB処理」領域を強化するもの。具体的には、1GBという非常に小さなデータでワークロードを分析した後、I/O負荷が高ければHDDから高速なSSDへデータを移し、負荷が低くなれば逆にSSDからHDDへ戻す、といった動作を行う。

 この技術によって、全体の10%をSSDに配置するだけで、スループットを330%向上させたとのことで、山崎氏はこの技術について、「従来は上手にお使いください、ということで最適な利用をお客さまにお願いしてきたが、機械がワークロードを監視し、最適なデータ階層に持って行く点がユニーク。しかも1GB単位で実現することによって、高額なSSDという限られたリソースを最大限活用できる」と説明。その価値を強調した。

 なお、EasyTierの搭載により、より少ない容量の自動移動が可能になることから、DS8700へのSSD最小搭載台数が、従来の半分の8個に引き下げられている。利用にあたっての追加費用は特に必要なく、SSDを導入済みの既存ユーザーは無償で利用可能。新規導入の場合は、最小構成価格3億2509万5500円(税別)からとなる。提供開始は5月21日。

 一方のTS7650 ProtecTIERでは、「デジタルレコード、アーカイブ」領域での強化を行った。以前から、重複排除されたデータのレプリケーションに対応していたが、1対1での運用に限られていた。今回の機能強化では、これをn対1に対応させたため、「災害対策のリソースをまとめられるようになっている」(山崎氏)点がメリットという。こちらも、既存ユーザーへの提供は無償で、新規導入時の最小構成は4029万5100円(税別)からとなる。出荷開始は5月28日から。



提案価値の向上や日本市場の特質に合わせた品質向上を

 加えて山崎氏は、日本IBM全体での、2010年のストレージ戦略を、1)ストレージ・ソリューション提案価値の向上、2)より多くのお客さまへ価値をお届けするための体制構築、3)日本市場の特質に合わせた品質向上・サポートの強化、といった3つの視点から説明した。

 1)では、「ハードウェア、ソフトウェア、サービスのチームが一体となってニーズに応える」との方針に沿って、各事業部間の連携を強化。さらに、現場の営業がソリューションを提案することによって、より評価を高められるような仕組みも強化していく。また、きめ細かなニーズに対応できるよう、ラボサービスの拡充も図るとした。

 2)では、インフラ基盤として、プロジェクト横断で購買を決める顧客も増えていることから、1月にストレージ専任の営業体制を設置。さらに、パートナーへの支援プログラムを推進し、より広いエリアへのリーチを図る。

 最後の3)では、海外駐在の日本人技術者を、2倍近く増員するほか、「日本には特徴的なサーバープラットフォームがあることから、テスト体制を拡充し、相互稼働のニーズに対してタイムリーに対応していく」(山崎氏)との姿勢を示していた。



(石井 一志)

2010/4/21 16:08