セールスフォース、米国本社ベニオフCEO著書の日本語版を出版

ゴルフダイジェスト石坂社長との対談も


米国Salesforce.com 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

 株式会社セールスフォース・ドットコムは、米国本社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏による著書「クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語」が、5月11日にダイヤモンド社から発刊されたことを発表した。これに合わせて、同日にベニオフ氏が来日し、出版発表会を開催した。

 今回の著書「クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語」は、2009年に発刊された「Behind The Cloud」の日本語版となるもの。

 いまやコンシューマウェブの世界では当たり前になったクラウドコンピューティングを、どのようにして企業向けビジネスの世界で成功させたかについて、創業者であるベニオフ氏がまとめている。

 将来企業を考えるビジネスマンや経営者が参考にできるよう、マネジメントツールの活用からグローバル展開まで、セールスフォース・ドットコムが実践した111の経営ノウハウが、マーケティングや営業など10のテーマに沿って紹介されている。

ダイヤモンド社 書籍編集局第3編集部 編集長の土江英明氏

 出版発表会にあたり、翻訳を手掛けたダイヤモンド社 書籍編集局第3編集部 編集長の土江英明氏があいさつ。「原著を読んだところ、クラウドコンピューティングをテーマにしながらも、専門的な用語はそれほどなく、一般の人が読んでもわかりやすくまとめられていた」。

 「内容もビジネスマンにとっては刺激的な経営論として読むことができ、また、10年間で急成長した革新的な企業のビジネスストーリーとしても面白い読み物になっている。そして、なにより、新しいビジネスを起こそうとしている人たちを応援したいという筆者の大きな志を感じた」と、日本語版の出版に至った背景を述べた。

左から:ゴルフダイジェスト代表取締役社長の石坂信也氏、米国Salesforce.com 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏、ジャーナリストのカーリー・アトラ氏

 続いて、セールスフォース・ドットコムのユーザー企業でもある株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、ゴルフダイジェスト)代表取締役社長の石坂信也氏と著者のベニオフ氏、そしてジャーナリストで共著のカーリー・アトラ氏も交えての対談が行われた。以下、対談の様子を紹介する。

ゴルフダイジェスト代表取締役社長の石坂信也氏

石坂氏
 この本を読み始めた時は、成功した起業家たちのノウハウ本だと思ったが、読み終えてみると、ベニオフ氏のバックグラウンドや生い立ち、クラウドコンピューティング分野でのSalesfoce.comの成功ストーリーがリアルに伝わってきた。今、こうした本を出そうと思ったきっかけはどこにあるのか?

ベニオフ氏
 クラウドコンピューティングは、いままでのITビジネスの延長線上では対応できない大きなパラダイムシフト。これは、起業家にとっては新しいビジネスチャンスになる。しかし、クラウドコンピューティングのビジネスモデルは、まだ完全には理解されていないのが現状。そこで、エンタープライズ・クラウドコンピューティング分野で成功を収めている当社が、その知識やノウハウを企業たちに還元することは使命だと感じた。将来、その起業家が競合相手になったとしても、次世代の起業家を育てる本を出すことが必要だと思った。

石坂氏
 著書の中では、アドバイス24として、優秀なジャーナリストと良好な関係を築くことが重要だと強調しているが、共著であるアトラ氏についてはどう評価しているのか。

ベニオフ氏
 アトラ氏は若くして成功したジャーナリストであり、彼女と出会えたことはとても幸運だった。彼女からビジネスジャーナリズムについて深く学ぶことができると思い、一緒に本の出版を手掛けることにした。

石坂氏
 この本は、経営者として企業として、どう経営していくべきか、最初から最後まで網羅された内容になっているが、共著のアトラ氏がさらにチャプターを加えるとしたらどんなことを書きたいか。

ジャーナリストのカーリー・アトラ氏

アトラ氏
 機会を見つけ、困難から抜け出すこと。本を書いている間にもさまざまなことが起こり、あらためてこのテーマがとても重要であることがわかった。困難な時代は、どんな企業にもある。そのなかでも、熱意をもってがんばれば、必ず成功につながることを知ってほしい。

石坂氏
 クラウドコンピューティングが注目集める中で、そのけん引役を担っているベニオフ氏は、経営者としての自らのスタイルをどう評価しているのか。

ベニオフ氏
 私は企業がどこに向かっているのかを把握し、それに合わせた経営改革を行っている。これは簡単なことではなく、顧客やパートナーの賛同を得ることも必要だ。その意味でも、今回の著書の反響を楽しみにしている。多くの企業にクラウドコンピューティングについてよく知ってもらい、早く従来のエンタープライズソフトモデルを打破してもらいたい。

石坂氏
 アトラ氏は、多くのCEOにインタビューをした経験をもっているが、ベニオフ氏が他のCEOと違うと感じた点は?

アトラ氏
 自分がやりたいと思うことに向かう熱意が誰よりも強い。しっかりとしたビジョンをもち、忍耐をもって取り組むことができるリーダーだと思っている。後ろから追ってくるものに対してもイライラすることなく、誰にでも誠意をもって応じ、導いていくことを考えている。いままで、こんなにオープンな人は見たことがない。

石坂氏
 ベニオフ氏が考える、10年後のSalesfoce.comのビジョンはどんなものか?

ベニオフ氏
 10年後の2020年もSalesfoce.comは、エンタープライズ・クラウドコンピューティング分野でのリーダーであり続けるだろう。今後の10年間で、さらに成長していくことができると考えている。そして、マイクロソフトやオラクル、SAPといった過去の世代の企業に変わって、次世代の代表的な企業になれると考えている。


(唐沢 正和)

2010/5/11 19:27