「GREEに追いつけるか?ケータイペットビジネスに新規参入」鎌倉発の面白法人カヤック貝畑CTO


 今回のゲストは面白法人カヤックの貝畑政徳CTOです。面白法人カヤックはWebサイトやWebアプリケーションなどの制作会社ですが、ユニークな雇用形態や社風で知られる、ある意味でITベンチャーらしい象徴的な存在です。


貝畑 政徳(かいはた まさのり)
株式会社カヤック 代表取締役兼CTO

1974年2月2日に福岡にて生まれる。
慶應義塾高校ラグビー部に所属。といっても、夏合宿での猛練習により両足を疲労骨折し1年でリタイア。リハビリ中に麻雀を覚える。麻雀がきっかけで柳澤大輔(カヤック代表取締役)と縁が生まれる。
慶應義塾大学環境情報学部3期生として卒業。大学生活ではデータベース等の研究を行う。柳澤が見つけてきたという奇人久場智喜(カヤック代表取締役)とともに沖縄・石垣島に合宿に行く。その翌年、中国に再合宿。“何かを一緒にしよう”という意欲に燃えはじめる。
慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業ディジタルメディア・プロジェクトに所属。研究に従事する。博士課程にはいかず、起業する。
開発責任者として、面白法人カヤックの展開する数々のサービスの技術面を担当する。祖母に霊媒師をもち、引っ越しの際などはアドバイスをもらうことも。
ひそかにカヤック役員3人の趣味である漫画の絵も描いている。


チームラボとの違い

小川氏
 今日はよろしくお願いします。

 面白法人カヤックという会社を一言でいうとなんでしょうか。


貝畑氏
 今年で11年目になる会社で、自社サービス、受託サービス、その両方を行うWeb制作・運営会社です。僕と柳澤大輔、久場智喜の3人で起業しました。3人は大学の同期です。会社を作ることが先にあって、何をやるかは設立ギリギリになって決めました。少人数でも大きな仕事をできると思ったことがWebの世界を選んだきっかけですね。

 当初からWebの制作の仕事をいろいろなところからいただきながら受託の仕事で成り立っていましたが、自分たちのサービスも作りたいということで、毎年7月7日に7つの新規サービスを発表するという777★カヤックフェスティバルというイベントを行っていました。自分たちのサービスをやり続けてきたことから注目していただいて、また新しい仕事が入ってくるという循環が生まれてきたように思います。現在は、新規開発事業を担当する「BM11(ブッコミイレブン)」というラボチームがあります。

 Web以外では、どんぶりカフェ(DONBRI CAFE DINING bowls)や、絵を測り売りで販売するギャラリー(ART-Meter)などの異業種的な仕事もやっています。


小川氏
 そういうイメージから、わりと世間ではチームラボあたりと重ねられることが多いのでは?


貝畑氏
 たしかに「似てますね」と声をかけられることはありますが、ほんとはかなり違うんじゃないかなと思ってます(笑)。明確な違いは出せないんですけど。んー、でも決定的な違いはないかな、やっぱり(笑)。


小川氏
 チームラボは検索エンジンとかレコメンデーションといったコアになる技術が前に出ている感じがしますが、カヤックはそういうものが目立つことはないですね。


貝畑氏
 そうですね。カヤックの場合は、先ほど申し上げたようにラボの部署があります。そこで、オープンソースの研究や、例えばWiiをデバイスにネット技術を駆使したアート表現など、さまざまなモノにチャレンジしています。技術ありきでモノ作りをはじめるわけではなく、アイデアありきで、それにふさわしい技術を見つけてくるという感じです。


鎌倉拠点であることが人材集めに有利

小川氏
 営業はどうしてるんですか?


貝畑氏
 営業を専門とするスタッフはいないので、仕事は基本的に紹介やサイト経由が多いですね。


小川氏
 いま100人くらいいるんですよね? 会社構成は?


貝畑氏
 社員でそれくらいです。30%くらいがエンジニアで、Flashデベロッパーが10%、デザイナー20%強、ディレクターが15%、ギブ&ギ部という総務・人事系のスタッフと演出部(広報・販促)が10%ずつくらい。あとはギャラリーやカフェのアルバイトスタッフなどがいます。


小川氏
 サービスというか事業の運営スタッフはどのように選抜されるんですか?


貝畑氏
 うちは職種に関わらず、それぞれが自社サービスをもってます。エンジニア主導で立ち上がったサービスでも、途中でそのエンジニアが手を引くこともあり、そのときの引き継ぎは職種に依存せず、ほかのスタッフが引き継いで担当し始めますね。


小川氏
 鎌倉にあることで求人に不利になったりしないですか?


貝畑氏
 感じたことはありません。「鎌倉だからカヤックに来たい」という人もいますし、「鎌倉」が一種のフィルターとなって同じ価値観の人を集められるように感じています。そもそも海が好きとか、鎌倉という子供を育てやすい環境にいたいとか。みんな近辺に引っ越してくることが多いです。東京に疲れたというのではなくて、デザイナーにしてもプログラマーにしても、クリエイティブをするのにいい環境で働きたいようです。実際、気分転換に海に行く社員もいるし、僕もテニスを毎朝やってます。


GREE対抗のモバイルサービスにも参入

小川氏
 先ほど受託と自社サービスの開発と運用が事業とおっしゃいましたが、売上的なバランスはいかがでしょう?


貝畑氏
 売上は期ごとに異なりますね。

 スタッフは主として受託を担当するリソースと、自社開発を担当するリソース、そして両者の共有となるリソースとに分けていますが、でも半年単位で流動させています。


小川氏
 貝畑さんの業務は?


貝畑氏
 僕はいまモバイル中心です。「ポケットフレンズ コンチ」というモバイルのアバタービジネスに力を注いでいます。ケータイのペットですね。

 カヤックでは、次においしいビジネスはなにかというところをエンジニアが探してくるんです。iPhoneやAndroidが面白いと思えば、開発チームを作ります。さっきも言いましたが、技術があるからサービス、じゃなくて、アイデアがあるから作り始めるという感じ。あとは必要な技術を開発するなり集めてくればいい。アイデアドリブンの会社なんです。アイデア勝負の会社だと思う。


小川氏
 なるほど。

 モバイルのコンチですけど、GREEのクリノッペみたいなものですよね?


貝畑氏
 そうですね。でも、最初はクリノッペとコンチはガチの勝負と考えていろいろ作っていたんですが、最近コンチ絡みのコンテンツを増やしてきたことで、むしろGREE全体をコンチのベンチマークとして考えるようにしています。


小川氏
 なるほど。僕にはこのケータイペットの世界がまったく理解できないんですけど(笑)、地方中心にクリノッペはすごく人気あるらしいですね。

 どうやって差別化していくんでしょうか?


貝畑氏
 モバイルとしては後発だから、ほかの会社がやった失敗はしたくないですね。基盤をしっかり作って、たくさんサービスを作っていかないと。そのためにサービス間の連携や、会員IDなどの統合など、プラットフォームはしっかりつくったつもりです。結局公式モデルでないとお金を稼ぐことができないので、その間の勝手サイトでスマッシュヒットをあげながら、公式サイトにひっぱっていく。その一つがコンチです。

 コンチがもっと盛り上がると、カヤックそのものがGREEのコンペティターのような色合いがつくかもしれないですけど、そのときはまた別のサービスが立ち上がっていると思います。


小川氏
 分かりました。モディファイがカヤックの対抗サービスを出すことはなさそうですが、モバイルビジネスについてはまた何か情報共有させてください。

 今日はありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2009/7/1/ 09:00