クリエイティブユニット“オガワカズヒロ”が語る、「ソーシャルメディア時代のマーケティング」
約3年間にわたって続けてまいりました本連載も今回で最後となりました。最後を飾るのは、商品企画、販促支援、パッケージデザイン、広報戦略、商品あるいは企業全体のブランディングなどを手がけるクリエイティブユニット オガワカズヒロです。
hiro ogawa(小川 浩) creative directer 商社にて東南アジアを中心に活躍後、96年マレーシアにて独立。帰国後、日立製作所にてイントラブログシステムなどの企画を手がけた後、サイボウズ(株)のネット関連子会社フィードパス(株)のCOOを務める。 2008年1月にモディファイ設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)など。 | |
kazu ogawa(小川 和也) marketing directer 慶応義塾大学法学部卒業後、大手損害保険会社勤務を経て、グランドデザイン&カンパニー株式会社を創業。 モバイルインターネットを基点とした新しいサービスやマーケティングモデルの創造に取り組んでいる。モバイルマーケティングソリューション協議会理事などを務める。 |
■会社の座組を超えたクリエイティブユニット
―オガワカズヒロとは何ですか?
hiro
オガワカズヒロは、商品企画、販促支援、パッケージデザイン、広報戦略、商品あるいは企業全体のブランディングなどを手がけるクリエイティブユニットです。マスメディアそのものを使うことはあまり考えていませんが、限られた予算内で最大限の効果をもたらすために、ソーシャルメディアやモバイルの活用をおススメすることが多いです。
kazu
僕たちはそれをファストマーケティングと呼んでいます。
―オガワカズヒロは会社組織ではないんですよね。それと名前の由来も教えてください。
hiro
法人ではないです。僕は主にWebアプリケーションの開発を手がけるモディファイのCEO、kazuさんはモバイルを軸としたマーケティング支援を行うグランドデザイン&カンパニーのCEOです。オガワカズヒロは二つの企業のリソースを効率的に生かしながらお客さまに提案を行うために作ったユニットです。
kazu
オガワカズヒロは、たまたま二人の名字が小川であったことから、互いの名前を組み合わせて作りました。
―異なるベンチャー企業の社長が協業するというのは、あまり聞いたことがないですね。
kazu
ないでしょうね。業界は違いますけど、藤子不二雄くらいなものですね(笑)。
■ファストマーケティングとは
―先ほどファストマーケティングという言葉がありましたが、意味を教えてください。
kazu
もちろんファストファッションやファストフード同様、速いマーケティングという意味にはなります。
ファストマーケティングは、「いまを敏速にとらえ、それを敏速に体現するマーケティング」を示しています。
1. 情報の鮮度
2. 計画・実行・評価・改善のサイクルスピード
3. 判断・意思決定のスピード
を重要視する考え方です。
思うに、Twitterの登場によってソーシャルメディアは、よりリアルタイムの領域にシフトし始めたんですね。その速度に呼応するマーケティングの新しい概念を、ファストマーケティングといっています。
hiro
この言葉を最初にkazuさんが使ったとき、正直僕は「ん?」と思っていたんです(笑)。英語的にちょっとおかしいぞと。ただ、マーケティング(のコンセプトや戦略・戦術、あるいはテクノロジー)という商品をわれわれが提供するとすれば、われわれ自身がファストマーケティング企業であると考えられるかもしれないとは思いました。
キャッチーな手法を選択し、アイデアをまとめ、企画立案する。そしてそれを支えるテクノロジーを素早く提供する。それはファストマーケティングと呼んでいいだろうと。
―お二人はソーシャルメディアマーケティング専門業者ではない?
kazu
拙書『ソーシャルメディアマーケティング』をよく読んでいただけると、ブログをどう書けとか、Twitterでどうつぶやけといったようなノウハウはほとんど書いてないことに気づかれると思います。本の中では、ソーシャルメディアマーケティングとは、ソーシャルメディアを利用するマーケティングと書きましたが、いまではむしろ、ソーシャルメディアを使わずとも、十分にその存在や影響力を理解したうえで行うすべてのマーケティングを、ソーシャルメディアマーケティングといっていいと思っています。
hiro
ソーシャルメディアマーケティング時代の最高のマーケティングの事例を二つ挙げるとすれば、オバマ政権を成立させた選挙チームと、Appleになるでしょう。
前者が積極的なソーシャルメディア活用の事例であるとすれば、後者はソーシャルメディアにまったく参加せずにソーシャルメディアに愛される、珍しい事例になると思います。
―もう少し詳しく。
hiro
オバマの選挙チームは、ありとあらゆるソーシャルメディアに参加し、独自のSNSも構築し、とにかく積極的に消費者とソーシャルメディアを介して会話をしました。ここまで徹底してソーシャルメディアを利用している企業や団体はまだ他にありませんが、今後は包括的か断片的かにかかわらず、オバマ選挙チームが示した戦略と戦術を多くの企業がコピーしていくと思います。
反面、Appleはソーシャルとかオープンという言葉とは無縁の会社です。しかし、彼らは巧みなブランド戦略と、肝心な情報は徹底的に隠して期待値を精いっぱい高めておいてからサプライズを与えるという手法を一貫して行い、ソーシャルメディアにインパクトを与えて大きな好意的な反応を発生させることに非常にたけています。
今後、ありとあらゆる企業や団体は、ソーシャルメディアを使うか使わないかは別にして、マーケティングを行ううえで、ソーシャルメディアの存在を強く意識していかねばなりません。その意味で、僕たちはソーシャルメディアマーケティングの戦略立案者であろうとしていますが、ソーシャルメディアを使うかどうかはケースバイケースであるともいえると思います。
kazu
ソーシャルメディアとモバイルは、どんなマーケティングにも必須であるのは間違いないですから。
■革新的なマーケティングテクノロジー企業を目指して
―最後に、これまでの成果と、今後の展開を教えてください。
kazu
まず、面白い事例を一つ挙げると、TOKYO MXで4月9日(金曜)23:00からスタートした「IJP イジュウインパーク」(@ijp2010)という番組の企画に最初から携わり、技術支援をさせていただいていることがあります。女性をTwitterに積極参加させるメディアとして運営しているガールズログのメンバーである一木美里さんもアシスタントとして番組に出演しています。
この番組はTwitterやUstreamといったソーシャルテクノロジーとテレビというメディアを、どう連携させていくかの面白い試みであり、ホストである伊集院光さんのセンスが光る番組です。単にテレビでTwitterやってみようよという番組とは一線を画しており、僕たちもお手伝いさせていただくこと自体を楽しんでいます。
hiro
他には、ゴールデンウィーク明けくらいに公開を予定していますが、ある一部上場の大企業のブランディングのお手伝いをさせていただいています。現在多くの学生が就職活動をしており、厳しい状況が伝えられていますが、企業側からすると、学生に伝えたい自社ブランドの在り方と、学生側から見たブランドの印象が異なることが多くて、満足するマッチングが行われていないことも多いそうなんです。
そこで、企業側のリアルな情報をストレートにソーシャルメディアに公開していくことと同時に、学生とのコミュニケーションを直接図っていこうという試みをすることになったわけです。そうしたお手伝いをさせていただく予定です。
―今後の展開はいかがでしょう?
kazu
今進めているのはスポーツマーケティングにおけるソーシャルメディアの活用支援です。世界に発信できる面白い事例になると思います。
hiro
ネット公職選挙法の成立も間近のようですし、和製MyBO(mybrakobama.com=オバマ大統領のSNSサイト)の成功事例も作りたいところです。
kazu
あとは、ソリューションやサービス、マーケティングの戦略・戦術をもっと短期間に提供できるようなパッケージ化をしていきたいですね。ファストマーケティングは、ソリューションをある程度メニュー化して、選びやすくしてさしあげることも大事だと思います。
hiro
ですね。その意味で、マーケティングという形のみえづらいサービスやソリューションを支える技術を確立したい。マーケティングテクノロジーとでもいったらいいですかね。
kazu
マーケティングテクノロジー。それいいですね。僕たちはそれぞれマーケティングテクノロジー企業を目指していくべきなんでしょうね。
2010/4/20/ 06:00