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早期導入企業に聞く、Windows Server 2008の魅力


 マイクロソフト株式会社は4月15日、IT技術者などを対象としたプライベートカンファレンス「the Microsoft Conference 2008」を開催した。同カンファレンスにおいて、Windows Server 2008やSQL Server 2008の早期導入を行っている各企業に話を伺えた。今回は、各社のインタビューを通して、リリースされたばかりのWindows Server 2008やこの夏にリリースされるSQL Server 2008の実状を紹介する。


VMwareからHyper-Vに乗り換える-栗山米菓

 株式会社栗山米菓は、新潟県でせんべいを製造・販売している会社だ。多くの人が、スーパーやコンビニで販売されている「ばかうけ」や「星たべよ」などの商品を食べたことがあるだろう。

 栗山米菓では、昨年リリースされたWindows Server 2008のRC版から、自社のシステムをWindows Server 2008上に移行し始めている。栗山米菓のグループ本社 総合企画担当 チーフリーダーの武田勇人氏に話を伺った。


栗山米菓 グループ本社 総合企画担当 チーフリーダーの武田勇人氏
―栗山米菓では、Windows Server 2008をどのようなシステムに使っているのですか?

武田氏
 今までもWindowsサーバー上に経理や在庫システムなどを構築していました。今回は、これらのシステムをWindows Server 2008上に移行しました。わが社では、ITシステムの開発は、内製するというのがポリシーになっています。実際に社内には特別なIT部門はありません。スタッフ部門の中の2名がITを担当しています。会社全体としては、コスト意識は非常に高いですね。やはり、販売している製品が「せんべい」ですから、1枚何銭という利益しか出ませんので、あまり高額なシステムを入れることはできません。

 このため、昔からコストを考えて、Windowsサーバー上に経理や在庫管理など、さまざまなシステムが構築されています。また、ハードウェアのコストもばかにはなりませんから、5年前から、仮想化システムのVMwareを導入しています。


―今回、Windows Server 2008に移行された理由は、なぜなんでしょうか?

武田氏
 ずばり「Hyper-V」ですね。VMwareのESXを使っていたのですが、VMwareは年間のサポートコストが非常に高かったんです。確かに、ハードウェアを仮想化することで、ハードウェアコストは抑えられたのですが、「せんべい屋」にとってはVMwareは高かったです。Windows Server 2008の仕様を見て、仮想化の「Hyper-V」というシステムが入っているので、これはいいと思って、飛びつきました。現状では、Hyper-VがRC版なので、正式版になるのを待って移行する予定です。


―栗山米菓さんは、IT投資に関しては非常に積極的なんですね。

武田氏
 大企業のようにコストをかけられないので、逆に自社で開発したり、新しいテクノロジーを導入することで、低コストでITシステムの開発・運用を行うようにしています。

 Windows Server 2008では、読み取り専用のドメインコントローラなどは、大阪やさいたま市にある支社に置くことで、社員が出張したときでも、現地のプリンタなどが簡単に利用できるように設定できます。2人しかいないIT担当者に電話がかかってくる件数が少なくなります。これだけでも、便利になったと思います。

 中小企業では、それほどITに人数を割くことはできません。新しいシステムの開発や運用・管理までを、少ない人数で行わなければなりません。こういった時にWindowsサーバーは最適なものだとおもいます。

 わが社では、マイクロソフトのプレミアなどのサポートメニューには入っていませんが、北関東支店でわが社を担当している営業の阿部さんに、いろいろとアドバイスをもらったり、技術的にもできる限りのサポートをもらっています。


SQL Server 2008のパフォーマンスは折り紙付き-東芝セミコンダクター社

 株式会社東芝 セミコンダクター社では、早期評価プログラムとして、SQL Server 2008の評価を行っている。今回は、東芝セミコンダクター社の技術企画グループ 技術プラットフォーム構築担当グループ長の伊藤篤生氏、および実際にシステムの開発・運用を行っている東芝情報システム株式会社 第二SIソリューション事業部CIMソリューションセンターの中塚誠也氏に話を伺った。


東芝セミコンダクター社の技術企画グループ 技術プラットフォーム構築担当グループ長の伊藤篤生氏

東芝情報システム 第二SIソリューション事業部CIMソリューションセンターの中塚誠也氏
―東芝セミコンダクター社では、どうしてSQL Server 2008の早期評価プログラムをされているのですか?

伊藤氏
 手っ取り早くいえば、マイクロソフトから、テストをしてみませんかといわれたからですね。まあ、われわれ自身も新しいSQL Serverが気になっていたというのが本当のところかもしれません。

 現在、SQL Server 2005は、半導体の設計図を管理しているシステムのデータベースエンジンとして使っています。パフォーマンスとしては、SQL Server 2005で満足なレベルに達しています。ただ、今回、テストしてみて、SQL Server 2008のデータベースの暗号化や監査機能は気になる機能ですね。

 日本版SOX法の施行などもあり、アクセスログがきちんとしているのはいいですね。誰が、どのデータにアクセスしたのか? どのような改変を加えたのかといったことがわかれば、半導体設計上のトラブルも防げると思います。自社のルールとしては、半導体設計のルールなどは、紙でドキュメント化はしていますが、エンジニア達はよかれと思ってルールから逸脱したりすることもあります。また、途中で設計上のミスに気がついて、勝手に直してしまったりすることがあります。こういう小さなミスやルールの逸脱が、製品化されたときに大きなトラブルになってくるのです。

 こういったことが、SQL Server 2008で用意されている監査機能を利用すれば、防げるのではないかと思っています。

 また、SQL Server 2008のBI(ビジネスインテリジェンス)機能は、さまざまなデータを可視化してくれるので、システムを利用している人たちにとってわかりやすくなると思っています。


―SQL Server 2008をテストされてみてどうでしたか?

伊藤氏
 まだ、パフォーマンスくらいしかテストできていませんが、性能としては満足のいくモノです。ただ、SQL Server 2005と比べて、性能が高いといって、すぐにSQL Server 2008に切り替えるというわけではありません。現状のシステムでも、ある程度満足のいくパフォーマンスが出ているので、すぐにSQL Server 2008が必要というわけではありません。

 ただ、東芝情報システムと一緒にテストしてみて、ベータ版だけど、トラブルもほとんどなく、パフォーマンスに関してもきちんとしているということがわかりました。まだ、SQL Server 2008は正式版にはなっていませんが、現段階でも信頼度は高いですね。

 データベースとしての一般的なテストしか行っていませんが、先ほど話した監査機能やBI機能は非常に興味があります。SQL Server 2008を導入するなら、こういった機能を使うようにしないとわが社にとっては意味がないですね。

 わが社では、オープンシステムを採用して、マルチベンダー化したことで、いろいろなトラブルがありました。こういった経験から、私自身はマイクロソフトの製品で固めている方がいいと考えています。WindowsサーバーとSQL Serverなら、どちらもマイクロソフトの製品ですから、何かトラブルがあれば、マイクロソフトに文句も言えますし、トラブルの修正に関してもきちんとカバーしてくれます。マルチベンダーにしていたときは、各社がそれぞれミスのなすりつけあいをしていて、収拾がつかなくなって大変でした。すべてをマイクロソフトの製品にしてしまって大丈夫かといわれますが、マルチベンダーの時の大変さを思えば、非常に楽になりました。


WindowsもCTCといわれるようになる-伊藤忠テクノソリューションズ

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)といえば、UNIXやSunのシステムを担いでいたソリューションベンダーという印象が強い。しかし、Windows Server 2008からは、よりWindowsサーバーに対してもコミットしていくという。そこで、CTCのプラットフォーム推進部サーバ技術課の杵島正和氏に話を伺った。


CTC プラットフォーム推進部サーバ技術課の杵島正和氏
―CTCといえば、UNIXやSunといったイメージが強いのですが?

杵島氏
 確かに、外部から見るとそうかもしれません。しかし、われわれはオープンなインテグレータですから、別にWindowsはやらないといっていたわけではありません。実際、Windows Server 2003がリリースされてから、Windowsを利用したシステムのインテグレーションも行ってきています。

 Windows Server 2008は、Windows Server 2003以上に信頼性も向上していますので、よりミッションクリティカルなシステムでも利用できるようになるでしょう。こう考えて、わが社でも、Windows Server 2008がリリースされる前に、二百数十名に上るエンジニアにWindows Server 2008の認定技術者資格(MCTS)を取得させています。これは、MCTSの3分の1にあたる数です。


―今後は、UNIXはやめてWindowsシステムを提案するということですか?

杵島氏
 そういうことではなく、われわれはお客さまにとって、一番メリットのあるシステムを提案したいのです。ただ、Windows Server 2008が発表され、今までUNIXで行っていたミッションクリティカルなシステムもWindowsで構築しても、何ら問題がなくなってきているというのも事実です。だからこそ、お客さまにとって、最も使いやすく、メリットがあるものを提案していきたいと考えています。やはり、UNIXとWindowsの両方を知っていないと、コストパフォーマンスの高いシステムは提案できません。

 CTCではすでに、HPとアライアンスを組んでいますから、今回マイクロソフトとタッグを組むことで、「WindowsもCTC」と言われるようになりたいと考えています。


―Windows Server 2008においては、特に何かの分野に特化されていきますか?

杵島氏
 Windows Server 2008では、NAP(Network Access Protection)や仮想化に注目しています。NAPに関しては、サーバー本体やOSだけで、完結するものではありません。802.1X認証のスイッチや検疫をサポートするさまざまななソフトウェアが必要になってきます。いろいろなソフトやハードがある中から、さまざまな企業に最適なシステムを提案できるのは、ネットワークやWindowsを知っているCTCならではでしょう。

 仮想化に関しても、Hyper-Vという新しいテクノロジーがWindows Server 2008で採用されているので、いち早くキャッチアップして、お客さまに提案していきたいと思っています。



URL
  株式会社栗山米菓
  http://www.baka.ne.jp/
  株式会社東芝 セミコンダクター社
  http://www.semicon.toshiba.co.jp/
  伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
  http://www.ctc-g.co.jp/


( 山本 雅史 )
2008/04/25 00:01

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