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Windows 7で用意される6エディションの違いを見る


 米Microsoftは2月3日(米国時間)、Windows 7のSKU(エディション)の詳細に関して発表を行った。

 Windows 7では、「Starter」「Home Basic」「Home Premium」「Professional」「Enterprise」「Ultimate」の6つのエディションが用意される。いくつかのWebサイトなどでも報じられているが、ブログではわからないことが多い。今回、マイクロソフト(日本法人)の広報に詳細を伺ったので、番外編としてWindows 7各エディションの特長を紹介する。


Windows 7 Starter

 Starterは、ネットブックなどの限られた用途で利用される小型ノートPC向けのOSとなる。いってしまえば、ULPCやネットブック向けのWindows 7といえるだろう。

 機能としては、最大3つまでのアプリケーションを同時に起動して、利用できる(つまり、アプリケーションの同時起動が3つに制限されている)。新しいネットワークのHome Groupをサポート。新しいタスクバーとジャンプリストもサポートされるが、新しいサムネイル表示機能などはサポートされない。


Windows 7 Home Basic

 新興国市場向けに機能を限定したWindows 7。インターネットアクセスや基本的なアプリケーションの使用を目的としている。

 ライブサムネイル機能、アドホック・ワイヤレスネットワーク、インターネット接続共有、モビリティセンターがサポートされている。なお、Home Basicは、新興国市場をターゲットとしているため、日本や米国などでは流通しない。


Windows 7 Home Premium

 コンシューマ向けのWindows 7。日本や米国などで販売されるPCのほとんどが、Home Premiumがプリインストールされることになる。

 Aero Glassなどの高度なUI機能をサポート。複数のPCやデバイスとのネットワーク機能、共有機能。H.264などのコーデックをサポートし、Blu-ray Discメディアにも対応する。また、DLNA 1.5をサポートし、家庭内のメディアプレーヤーに音楽やビデオなどの配信を行うことができる。マルチタッチや手書き機能もサポートされている。


Windows 7 Professional

 ビジネス向けのWindows 7。Windows Vista Businessにあたるエディション。Professionalは、中小企業、高度なネットワークやバックアップ、セキュリティなどがサポートされている。Home PremiumではサポートされていないActive Directory環境(ドメイン参加)への対応、ファイルシステムの暗号化、Location Aware Printing機能により、Active Directory環境からHome Group環境にPCを持ち込んでも簡単にプリンタを見つけて、印刷できる機能をサポートしている。


Windows 7 Enterprise

 企業向けのWindows 7で、ソフトウェアアシュアランス契約者にのみ提供されるエディション。

 内蔵/外付けドライブへのBitLockerによるデータ保護や、Direct Access(新しいVPNシステム)による社内ネットワークへの接続、Branch Cacheによる支社/支店からのサーバーアクセスの高度化(Direct Access、Branch Cacheは、Windows Server 2008 R2と組み合わせた場合の機能)、AppLockerによる無許可ソフトの起動停止機能などがサポートされている。

 また、Windows Vista Enterpriseが持っていた仮想化ライセンスは、Windows 7 Enterpriseでも引き継がれている。


Windows 7 Ultimate

 Ultimateは、多言語パックを含むEnterpriseの機能+Home Premiumに登載されたすべての機能が包含されている。つまり、全部入りのWindows 7だ。とはいえ、EnterpriseとUltimateでは、ほとんど機能に差はないようだ。また、Windows Vista Ultimateで提供されていたUltimate Extrasなどは、Windows 7では存在しないという。

 EnterpriseとUltimateの違いは、Enterpriseはライセンスのみ、Ultimateはプリインストールとアップグレードのみと、機能よりも提供形態の差といえる。

Starter Home Basic Home Premium Professional Enterprise Ultimate
提供形態 プリインストール プリインストール パッケージ/プリインストール/アップグレード パッケージ/プリインストール/アップグレード/ライセンス ライセンス プリインストール/アップグレード
同時起動アプリケーション 最大3つ 無制限 無制限 無制限 無制限 無制限
Home Group機能
新しいタスクバーやジャンプリストによる操作性の向上
ライブ サムネイル プレビューや視覚的エクスペリエンスの向上 ×
アドホックワイヤレス接続やインターネット接続の共有 ×
モビリティセンター ×
Aero Glassおよび高度なユーザーインターフェイス × ×
複数のPCやデバイスとのネットワーク接続、共有機能 × ×
メディア フォーマットのサポートを拡大し、新機能Play toを含むWindows Media Center やメディア ストリーミングの強化 × ×
マルチタッチや手書き認識機能の向上 × ×
ドメイン参加機能を含むネットワーク管理機能 × × ×
高度なネットワーク バックアップや、ファイルシステムの暗号化によるデータの保護 × × ×
Location Aware Printingによる家庭や職場での適切なプリンタでの印刷 × × ×
内蔵および外付けドライブのBitLocker データ保護 × × × ×
DirectAccessによる社内ネットワークへのシームレスな接続 × × × ×
BranchCache による、支社/支店からのネットワーク上のファイルへのアクセス時間の削減 × × × ×
AppLockerによる無許可ソフトウェアからの防御 × × × ×
多言語パック × × × ×


 Windows 7のエディションの特長は、StarterからEnterprise/Ultimateまで、シンプルに機能が拡張されている点にある。

 Windows Vistaでは、コンシューマ向けとビジネス向けでは、搭載されている機能そのものに差があった。しかしWindows 7では、Starterがもっとも機能が制限されたエディションになり、Enterprise/Ultimateにはすべての機能が入ったエディションになる。例えば、Home Premiumに入っているWindows Media Centerの機能は、Professionalにも搭載されている。つまり、上位のエディションには、一つ下のエディションの機能が必ず包含されることになる。

 もう一つ重要なのは、6つのエディションが用意されてもインストールされるプログラムは1つという点だ。つまり、Windows 7では、プロダクトキーで機能のオン・オフをコントロールすることで、6つのエディションが作られている。

 マイクロソフトでは、Starterを使用しているユーザーが、Home Premiumのアップグレードコードを購入し、StarterのOS環境に入力すれば、すぐにHome Premiumとして使用できると説明している。Windows Vistaとは異なり、ユーザーは上位エディションに移行する時には、いちいちOSの再インストールなどを行わなくてもよくなった。


 日本でのエディション展開に関しては、まだ未定だが、コンシューマ向けのプリインストールOSがHome Premium、ビジネス向けのプリインストールOSがProfessionalと、この2つのエディションがマーケットの中心となるだろう。また、パッケージで販売されるのは、この2つのエディションだけとなる。

 StarterとUltimateは、プリインストールとしてPCにバンドルして販売される。Ultimateに関しては、アップグレードという選択肢も用意されている。Enterpriseは、ライセンスのみでの提供となるため、企業以外ではあまりお目にかからない。なお、Home Basicは、日本国内では提供されることはないだろう。

 Starterに関しては、ネットブックなどにプリインストールされるが、機能の制限などを考えると、いくつかのメーカーでは、Home Premiumをインストールして販売することもあるのではないか。


 Windows 7の発売日や価格に関しては、まだ未定だ。しかし、次のテスト版がRC(リリース候補版)となるため、夏ごろには正式発表になり、秋にはプリインストールPCが発売されることになるだろう。


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( 山本 雅史 )
2009/02/06 18:00

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