Windows Server 2008で新たに用意されたのが「Server Core」だ。Server Coreは、Windows Server 2008の中核機能のみで構成されるが、どんな機能が使えるのか、また利用する上での制限はなんなのか、気になるところであろう。今回はServer Coreの基本的な機能を紹介する。
■ Windows Server 2008のインストールオプションのひとつがServer Core
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Server Coreの特長
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Server Coreは、DNS、DHCP、Active Directoryなど特定のシステムアプリケーションだけを動かすためのWindows Server 2008のインストールオプションといっていいだろう。このため、Server Coreの画面には、Windowsであれば必ず見られるスタートボタンやタスクバー、デスクトップアイコンなどがまったく表示されない。Server Coreでは、各種操作はコマンドプロンプトを通して行うことになる。
Windows Server 2008にあってServer Coreにないものの代表が、ファイルやドライブを操作するエクスプローラだ。また、HTMLエンジンもインストールされないため、WebブラウザのInternet Explorerもインストールされない。Server Coreは、アプリケーションを動かすプラットフォームではなく、純粋なサーバーOSといっていいだろう。たとえば、ネットワークを経由して、アップデートファイルを送ってくるWindows Updateも、Windows VistaやWindows XPのようなGUIも用意されていない。このため、システム管理者がコマンドラインから、自動更新をオンにしたり、ダウンロードした更新ファイルを明示的にインストールしなければならない。
またServer Coreでは、アプリケーションが必要とするモジュールなどが用意されていないために、Officeなどのアプリケーションをインストールしようとしても、インストールできない。これは、Server Coreが基本的にシステム管理者がアプリケーションを新たにインストールして利用することを考慮していないことを意味している。このことからも、Server Coreはサーバーのシステムアプリケーションを動かすプラットフォームといっていいだろう。
■ Server Coreで動作するシステムアプリケーション
Server Coreで動作するシステムアプリケーションは、DNSやDHCP、Active Directoryなど、Windowsネットワークを構築するのに必要なシステムが基本となっている。そのほか、フェイルオーバークラスタやネットワーク負荷分散、Windowsバックアップなどの機能もServer Core上で動かすことができる。
Server Coreにインストールできる役割
・Active Directoryドメインサービス(AD DS)
・Active Directoryライトウェイトディレクトリサービス(AD LDS)
・DHCPサーバー
・DNSサーバー
・ファイルサービス
・印刷サービス
・ストリーミングメディアサービス
・IIS 7.0
・Hyper-V
Server Coreにインストールできる機能
・フェールオーバークラスタリング
・ネットワーク負荷分散
・UNIXベース アプリケーション用サブシステム
・バックアップ
・マルチパスI/O
・リムーバブル記憶領域
・BitLockerドライブ暗号化
・簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)
・Windowsインターネットネームサービス(WINS)
・Telnetクライアント
Server Coreで動作するシステムは非常に限定されている。このため、Server Core自体もこれらのシステムさえ動作すればいいように、通常のWindows Server 2008からさまざまなモジュールが省かれている。実際、.NET Frameworkはインストールされていないため、C#などのマネージコードのプログラムは動作しない(Server Core上で実行するコマンドは、ネイティブWin32コード)。また、PowerShellは、.NET Framework上に構築されているため、Server Coreでは使用できない。そのほか、Internet Explorerが利用できないため、HTMLヘルプが使用できないといった制限もある(将来的には、.NET FrameworkをServer Core上で動かせるようにする予定)。
また、注意が必要なのは、Server CoreはWindows Server 2008のインストールオプションのひとつではあるが、完全インストールとServer Coreインストールを相互に行き来することはできない。つまり、Server Coreとしてインストールしたサーバーを完全インストールしたサーバーにするには、OSを再度インストールすることになる。このため、Server Coreとして構築した設定などは、インストールしなおした環境に引き継ぐことはできない。
■ ハードウェアにやさしいServer Core
Server Coreは、Windows Server 2008の最小セットでもあるので、動作させるために必要なハードウェアリソースは小さい。Windows Server 2008では、最新のサーバー用プロセッサを搭載したマシンの方が動作がきびきびしているが、Server Coreの場合、サーバーOS自体が単機能化しているため、一世代前のプロセッサでも、パフォーマンスは悪くならない。メモリも完全インストールの半分(推奨で1GB)、Server Coreが動作するのに必要なHDD容量も10GB(完全インストールは40GB)と非常にコンパクトだ。仮想化や64ビットのサーバーOSなどを動かさないのであれば、一世代前のPentium MやCore Duo(Centrinoブランド)などを使ったノートPCでもServer Coreは十分使い物になるだろう。
この特長を活かすと、データベースサーバーやアプリケーションサーバーなどは最新ハードウェアのWindows Server 2008で運用し、Active DirectoryやDNS、DHCPなどは、ベーシックな構成のハードウェアのServer Core上で動作させるといった使い分けもいいだろう。
■ Server Coreで動作するアンチウイルスソフト
Server Coreには、マイクロソフトが標準で添付しているファイアウォールが入っている。しかし、アンチウイルスソフトは入っていない。このため、セキュリティを高めることを考えれば、ユーザー自身がServer Coreにアンチウイルスソフトをインストールする必要がある。
ただ、Server Coreには、GUIがないため、Server Coreに対応したアンチウイルスソフトが必要になる。マイクロソフトでは、次世代のForeFrontでServer Coreに対応するとしている。また、シマンテックでは、Symantec Endpoint Protection11.0において、Server Coreをサポートしている。Endpoint Protectionでは、管理サーバーでアンチウイルスソフトのコントロールを行うため、GUIがないServer Core上でも動作するのだ。また、アンチウイルスエージェントのインストールも管理サーバーから行うため、Server Core上のコマンドラインからインストールを行う必要もない。
次回は、Server Coreのインストール直後に必要となる基本的なコマンドを中心に紹介する。
■ URL
Windows Server 2008
http://www.microsoft.com/japan/windowsserver2008/
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( 山本 雅史 )
2008/07/17 08:50
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