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Hyper-Vはどの程度使えるか【第二回】

Hyper-Vを動かしてみる

 Hyper-Vの基本的な要件は前回紹介した。今回は、実際にHyper-Vを動作させる方法を紹介する。


Hyper-Vの動作要件

 Hyper-Vを動かすためには、CPUが64ビット、仮想化機能、データ実行防止機能をサポートしている必要がある。Intel、AMDともに、サーバー向けやメインストリーム向けCPUでは、これらの機能はサポートされている。なので、現在リリースされているサーバーやデスクトップ用のCPUでは、Hyper-Vは使用できる。ただし、モバイル用やエントリー向けの低価格CPUなどでは、一部機能が削られているため、Hyper-Vが動作しないこともあるので注意が必要だ。

 もう一つ重要なのが、マザーボードのBIOSだ。マザーボードのBIOSをチェックして、仮想化機能やデータ実行防止機能をオンにしておく必要がある。もし、BIOSにこういった項目がなければ、メーカーのWebサイトから最新のBIOSをダウンロードして、アップデートしてほしい。BIOSにこういった項目がない場合は、CPUが対応していてもHyper-Vを動かすことはできない。

 メモリに関しては、Windows Server 2008と同じく最小512MB、推奨2GB以上だ。しかし、ゲストOSを複数動かすことを考えれば、最低でも4GBはほしい。あとは、いくつゲストOSを動かすかによって、メモリ容量も変わってくるだろう。ハードウェアにより、搭載できる最大メモリ容量が異なるため、もし最大限メモリを搭載するときは、こういった項目もチェックしよう。

 HDDに関しては、特に制限はない。単なるテストだけなら、ペアレントパーティションのOSをインストールするCドライブだけで十分。ただし、きちんとしたテストをするなら、ゲストOSの仮想HDDのファイルを保存するドライブは別に用意した方がいい。使い方に応じた容量のドライブを用意しよう。

 HDDのインターフェイスに関しては、テストをするならSATAで十分だ。Hyper-Vを本番環境で利用するなら、iSCSIなどのネットワークストレージを用意した方がいい。最悪、USB 2.0の外付けHDDを使うことも可能だが、ディスクパフォーマンスが落ちてしまう。できれば、RAID 0を使うなど、ディスクのアクセスパフォーマンスをアップした方がいいだろう。


Hyper-Vのインストール

Windows Updateで更新プログラムを選択するのが簡単
 Hyper-Vを利用するには、まずペアレントOSとしてWindows Server 2008 x64(64ビット版)をインストールする必要がある。x86(32ビット)版では、Hyper-Vは動作しないので注意が必要だ。ペアレントOSのWindows Server 2008は、フルインストールでもServer CoreでもどちらでもOK。

 Windows Server 2008のインストールが終わったら、次はHyper-Vをインストールする。注意が必要なのは、Windows Server 2008のDVDに入っているHyper-Vはベータ版であるという点。RTM版のHyper-Vは、Windows Updateで[推奨]で表示されている更新モジュール「KB950050」をインストールするか、マイクロソフトのWebサイトからダウンロードしてインストールする。Windows Updateを使う方が確実なので、そちらからインストールしよう。

 なお、フルインストールのWindows Server 2008をペアレントOSとしてインストールした場合、余分なアプリケーションやドライバを入れないようにしよう。

 実は、テスト環境(P35マザーボード、Intel Core 2 Quad、8GBメモリ、500GB HDD)にWindows Vistaの64ビット版のグラフィックドライバをインストールしたら、Windows Server 2008の再起動、ログインなどが急に遅くなった。また、いくつかのレポートをみると、ペアレントOSにインストールした常駐型ソフトが、4GBあたりのメモリ空間を使用しているため、Hyper-Vがきちんと動作せず、ブルースクリーンが表示されることもあるようだ。ペアレントOSにいろいろなアプリケーションやドライバをインストールしたり、動かしたりするとHyper-V環境ではトラブルになりやすいので、標準状態で使用することが好ましい。


Hyper-Vを動かす

 RTM版のHyper-Vをインストールしたら、サーバーマネージャの[役割]から[Hyper-V]をインストールする。ウィザードが起動するので、指示にしたがって操作しよう。イーサネットカードはあとで設定できるので、ウィザードでは特に追加しなくてもOKだ。


[役割の追加ウィザード]で[Hyper-V]を選択 イーサネットカードはあとで追加できるので、ここでは何もしないで次に進める Windows Server 2008の再起動後、このメッセージが表示されればOK

Hyper-Vマネージャ。コンピュータ名が表示されているので、それをクリックして操作を行う
 再起動するとサーバーマネージャに[Hyper-V]という項目が表示される。この下の階層には、Hyper-Vを管理するためのHyper-Vマネージャが用意されている。以後、このHyper-Vマネージャを使って仮想化サーバーを管理する。

 まずはHyper-Vの環境を設定する。初期設定では、Hyper-Vの仮想マシンや仮想ディスクはシステムドライブに作成するようになっている。可能であれば、Hyper-V専用のドライブを用意し、そちらに保存するようにしよう。


バッファローのiSCSI対応HDD「TeraStation IS(TS-I1.0TGL/R5)」
 今回は、バッファローのiSCSI対応HDD「TeraStation IS(TS-I1.0TGL/R5)」を試すことができたので、TeraStation ISをHyper-Vのデータドライブとして利用した。iSCSI対応HDDといっても、TeraStation ISには専用の接続ツールが用意されており、iSCSIの複雑な設定も自動的に行ってくれるので、内蔵ドライブと変わらない使い勝手で利用できる。今回のようなテスト目的で利用するにはぴったりだ。

 仮想HDDと仮想マシンの保存先を変更するには、Hyper-Vマネージャからサーバー名を指定して、右クリックで[Hyper-Vの設定]を選択する。[サーバー]に[仮想ハードディスク]と[仮想マシン]という項目があるので、ここで変更先を指定する。

 なお、この設定画面では、仮想マシン上でのキー割り当ての設定や、仮想マシンからペアレントOSに切り替えるときに使うマウスリリースの設定なども行える。


Hyper-Vマネージャの右側にある[Hyper-Vの設定]をクリックすると、この画面が表示される 仮想HDDのファイルの保存先を指定。ここではEドライブにVHDというフォルダを作成し、そこを指定した 仮想マシンのファイルの保存先を指定。ここではEドライブにVMというフォルダを作成し、そこを指定した

仮想ネットワークの作成方法

 仮想マシンを作る前に確認したいのが、[仮想ネットワーク]だ。仮想ネットワークは、仮想マシンが利用するネットワークで、「外部」「内部」「プライベート」の3つから設定できる。「外部」は、物理ネットワークアダプタへの接続を作成するもの。仮想マシンから物理ネットワークを通じて外部ネットワークへのアクセスを可能にする。「内部」は、ペアレントOSと仮想マシンとの間の通信だけを提供するもの。「プライベート」は、仮想マシン間のみの通信を提供するもの。仮想マシンが外部のインターネットにアクセスする場合は、「外部」を使用することになる。

 サーバーに複数のイーサネットカードを接続している場合、「外部」ネットワークがどのイーサネットカードに接続しているのかを確認しておこう。また、どのイーサネットカードに接続しているかわかりやすい名前をつけておくと便利だ。


仮想ネットワークマネージャ。「外部」「内部」「プライベート」から接続方法を選択できる [追加]をクリックすると、ネットワークの種類などを指定できる。ここでは、名前を「外部」にし、接続先も外部を選択した

仮想マシンの作成方法

 仮想マシンを新規に作成するには、Hyper-Vマネージャの右パネルにある[新規]から[仮想マシン]を選択する。ウィザードにしたがって設定すると、実行可能な仮想マシンが作成できる。


Hyper-Vマネージャの右のパネルにある[新規]を選択し、[仮想マシン]を選択し、仮想マシンを構成する 仮想マシンの作成では、ウィザードで簡単に行える 仮想マシンの名前と仮想マシンを保存する場所を指定する

仮想マシンが使用するメモリ容量を指定する 仮想ネットワークの構成では、あらかじめ作成した仮想ネットワークを選択する 仮想HDDの作成を行う。仮想HDDのファイル名と場所、サイズを設定する。サイズは、デフォルトでは127GBとなっている

OSのインストールオプションを設定する。ここでは、Hyper-Vが動作しているサーバーの物理ドライブを使用する 仮想マシンの作成オプションを確認する。仮想マシン作成後に、仮想マシンを起動するというチェックボックスをONにすると、続けて仮想マシンが起動する 仮想マシンが起動したときには、仮想マシンのウィンドウが表示される

 OSがインストールされたら、絶対に行う必要があるのが、「統合サービス」のインストールだ。Hyper-Vの特徴といえるVMBusを使用するためには、統合サービスをインストールする必要がある。統合サービスをインストールしないと、ネットワークやチップセットなどはレガシーとしてインストールされることになる。パフォーマンス的にも、レガシーモードよりも、統合サービスが使われている場合の方が高くなるので必ずインストールしよう。

 また、統合サービスがインストールされていない場合は、マウスやキーボードをゲストOSとペアレントOSとで切り替えるのも、キー入力が必要になる。統合サービスがインストールされていれば、マウスはゲストOSの画面外にでれば、自動的にペアレントOSのコントロール下に切り替わる。

 統合サービスをインストールするには、ゲストOSが動作している状態で、ゲストOSのウィンドウにあるメニューから、[操作]→[統合サービスセットアップディスクの挿入]を選択する。すると、自動的に「統合サービス」がインストールされる。


統合サービスをインストールしていない状態。正常に動作していないため、タスクトレイのネットワークアイコンを見ると接続できない表示になっている [操作]→[統合サービスセットアップディスクの挿入]をクリック プログラムを実行する

[OK]をクリックして、統合サービスをインストールする ゲストOSを再起動すれば、統合サービスが正しく動作する タスクトレイのネットワークアイコンが正常に動作している表示になっているのがわかる

 Windows Server 2008には、インストールメディアに統合サービスが入っているがベータ版なので、やはり最新版の統合サービスをインストールする必要がある。

 Windows Server 2003やWindows 2000、Windows Vista、Windows XPなどもレガシーモードでインストールされるために、統合サービスをインストールする必要がある。なお、統合サービスをインストールするためには、各OSでSPが当たっている必要があるので注意が必要だ。

 SUSE Linuxの場合は、Hyper-Vに標準で入っている統合サービスはインストールできない。このため、SUSE Linuxをインストール後、XENカーネルをインストールし、そのあとでマイクロソフトのベータサイト(https://connect.microsoft.com/default.aspx)からダウンロードしたSUSE Linux用の統合サービスをインストールする。

 もう一つ注意が必要なのは、通常OSのログイン画面で使用する[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーは、ゲストOSでは[Ctrl]+[Alt]+[End]キーに変更されている。ゲストOS上で、[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーを押すと、ペアレントOSの[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーとして認識されるので注意が必要だ。


 次回は、Hyper-Vの仮想マシンの詳細設定の説明とゲストOSウィンドウやHyper-Vマネージャの操作に関して説明していく。



URL
  Microsoft Hyper-V
  http://www.microsoft.com/japan/windowsserver2008/hyperv-home.mspx

関連記事
  ・ Hyper-Vはどの程度使えるか【第一回】(2008/09/19)
  ・ Hyper-Vはどの程度使えるか【第三回】(2008/10/03)


( 山本 雅史 )
2008/09/26 00:00

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