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中小企業向けサーバースイート「EBS 2008」「SBS 2008」を見る


EBS 2008とSBS 2008のカバー範囲

 Windows Server 2008がリリースされ半年ほど経ち、Windows Server 2008の派生製品が登場してきた。その中で注目されているのが、OSと各種サーバーアプリケーションをパッケージ化した「Windows Essential Business Server 2008(以下、EBS 2008)」だ。

 EBS 2008は、OSのWindows Server 2008に電子メールサーバーのExchange Server、データベースのSQL Server、管理ツールのSystem Center Essentialsなどをパッケージ化したサーバースイート製品だ。

 マイクロソフトはこれまでもWindows Small Business Server(以下、SBS)というサーバースイート製品を提供していたが、これは75人までの小規模企業向けのパッケージだった。しかし、今回新たに追加されたEBS 2008は最大300ユーザーと、SBSよりも規模が大きい企業をターゲットにしている。

 また、SBSでは1台のサーバーにすべてのアプリケーションを搭載する構成であったが、EBS 2008ではOSのライセンスが3つ(Premiumでは4つ)用意されているため、電子メールサーバーなど機能別にサーバーを構成することができる。企業において実際に必要とされるサーバー構成になっているといえるだろう。

 EBS/SBSのメリットは、複数のサーバーが運用されていて、EBS/SBS用のCALで、Exchange ServerやSQL Serverなどさまざまなアプリケーションを一括して使用できる点が挙げられる。アプリケーションごとのCALを用意しなくてもEBS/SBS用のCALさえ用意されていれば、EBS/SBSがカバーしているアプリケーションは一括してライセンスを運用することができる。

 また、EBS 2008では、大企業のように、充実したIT管理部門がなくても、少数のIT管理者でシステムを運用することができるように管理自体も容易になっている。SBSでも、特に専従のIT管理者がいなくても、簡単にサーバーが展開でき、運用できるようになっている。


EBS 2008の構成

EBS 2008のシステム構成

EBS 2008の特徴

EBS 2008のハードウェア構成
 EBS 2008は、StandardとPremiumの2つのエディションが用意される。

 EBS 2008 Standardは、管理サーバー、メッセージングサーバー、セキュリティサーバーの3つのサーバーが用意されている。EBS 2008 Premiumでは、EBS 2008 Standardにデータベースサーバーがプラスされている(計4つ)。すべてのサーバーには、Windows Server 2008 x64のOSライセンスが入っている。

 ちなみに、EBS 2008は64ビット版しかリリースされない。これは、同梱されているExchange Server 2007が64ビット版しかリリースされていないため。

 管理サーバーは、Windows Server 2008 Standard x64上にActive Directory、DHCP、DNS、ファイル&プリント機能以外に、System Center Essentials 2007が用意されている。

 System Center Essentials 2007は、サーバーやクライアントPCの管理を行うSystem Center Operations Manager 2007とサーバーやクライアントPCのアップデートを行うWindows Server Update Serviceが同梱されている。

 メッセージングサーバーは、Windows Server 2008 Standard x64上にExchange Server 2007とExchange ServerのアンチウイルスソフトとなるForefront Security for Exchange Serverが搭載されている。なお、メッセージングサーバー上にバックアップのActive Directoryも構築される。

 セキュリティサーバーは、Windows Server 2008 Standard x64上にファイアウォールやインターネットアクセスに関する監査を行うForefront Threat Management Gateway(新バージョンのInternet Security & Acceleration Server)が入っている。Forefront Threat Management Gatewayは、Stirlingというコード名で開発されているForefront製品の一部だ。メッセージングサーバーにインストールされるForefront Security For Exchange Serverは、Stirling世代のアンチウイルスソフトになっている。

 なお、セキュリティサーバーには、インターネットなどからExchange Serverにアクセスできるよう、エッジ部分のExchange Serverがインストールされる。

 EBS 2008 Premiumで追加されるデータベースサーバーは、Windows Server 2008 Standard x64上にSQL Server 2008 Standardがインストールされている。

 マイクロソフトでは、EBS 2008は200名ぐらいの企業をターゲットにしている。システム管理者も専任者が最低一人ぐらいは存在すると考えている。EBSは、少ない人数で簡単に管理でき、企業にとって必要なデータベースやメッセージングシステムが構築、運用できるシステムを目指している。


SBS 2008の構成

SBS 2008のシステム構成

SBS 2008の特徴

SBS 2008のハードウェア構成
 Windows Small Business Server 2008(SBS 2008)も2エディション用意される。

 SBS 2008 Standardは、以前のSBS 2003と同じく1台のサーバーで運用される。構成内容としては、Windows Server 2008 Standard x64上に、電子メールサーバーのExchange Server 2007 Standard、ドキュメント共有サービスのSharePoint Service 3.0、アンチウイルスソフトのForefront Security for Exchange ServerのSmall Business Edition、Windows Server全体を保護するアンチウイルスソフトのWindows Live OneCare for Server、Windows Server Update Servicesが用意されている。さらに小規模企業に向けたOffice Live Services Small Businessのライセンスも入っている。

 SBS 2008 Premiumでは、SBS 2008 Standardにプラスして、データベースサーバーが追加される。データベースサーバーは、Windows Server 2008 Standard x64上にSQL Server 2008 Standardが搭載されている。

 以前のSBS 2003では、1つのサーバーにすべてアプリケーションが搭載されることになり、サーバーのパフォーマンス的に問題となっていた。このため、SBS 2008 Premiumでは、データベースサーバーを別サーバーとして運用することにしている。

 なおSBS 2008では、SBS 2003でサポートされていたライセンス管理機能はサポートされていない。このため、厳密にCALでのユーザー数をチェックしているわけではない。マイクロソフトでは、SBSは専任のシステム管理者がいない20~30人ぐらいの規模の企業をターゲットにしている。このため、システムのインストールも管理も非常に簡単になっているようだ。


EBS/SBSのライセンス価格は?

 日本国内での価格に関しては、正式に発表されてはいないが、米国でのライセンス価格は発表されている。

 SBS 2008 Premiumは5CAL付きで1899ドル(追加1CALあたり189ドル)、EBS 2008 Premiumは5CAL付きで7163ドル(追加1CALあたり195ドル)となっている。

 SBS 2008 Premiumと同じ構成をばらばらに買うとすると、Windows Server 2008 Standardが999ドル(5CAL付き)×2、Exchange Server 2007 Standard(5CAL付き)は699ドル、Forefront Security for Exchange Serverは1ユーザーあたり年間15ドル(5ユーザー分としてトータル年間75ドル)、Windows Live OneCare for Serverは価格未定、SQL Server 2008 Standardは1849ドル(5CAL)となっている。OneCare for Serverは価格未定だが年間サブスクリプションで200ドルほどになるようだ。これをすべて合わせると、4821ドルとなる。

 また、EBS Premiumと同じ構成をばらばらに買うと、Windows Server 2008 Standardが4つ(999ドル×4)、Exchange Server 2007 Standard(5CAL付き)が2つ(699ドル×2)、Forefront Security for Exchange Serverは1ユーザーあたり年間15ドル(5ユーザーとして75ドル)、System Center Essential 2007は2022ドル、Forefront Threat Management Gatewayは価格未定、SQL Server 2008 Standardは1849ドル(5CAL)となる。

 Forefront Threat Management Gatewayは価格未定だが、以前のInternet Security & Acceleration Serverと同じ価格とすれば1499ドルとなる。これを合わせれば、1万839ドルとなる。

 だいたいSBS 2008 Premiumにおいては、ばらばらに購入するよりも2922ドルほど安くなる。EBS 2008 Premiumにおいては、3676ドルほど安くなる。また、サーバーメーカーがプリインストールモデルをリリースしたり、ソリューションプロバイダーから購入する場合はもう少し安くなるだろう。このように考えれば、SBSやEBSは非常にお得なパッケージということができる。


 SBS/EBSの問題としては、SBSやEBSの場合、最大ユーザー数を超えた場合どうなるかということだ。現状では、SBSの場合75ユーザーを超えた場合は、SBSというCALでは利用できない。SBSのままでは、ユーザー数を拡張することができない(ライセンス管理はされていないが、75ユーザー以上で利用するのはライセンス違反となる)。

 もし、拡張するには、新たにOSやアプリケーションのライセンスを購入し直さなければならない。こうなると、50から51ユーザーに拡張するのに、1CALだけの追加のために、膨大なコストがかかる。

 マイクロソフトでは、SBSからEBSへのアップグレードを行うアップグレートパックのリリースを計画している。このアップグレードパックでは、SBSからEBSにアップグレードするためのライセンスと移行ツールなどがパッケージ化されている。

 マイクロソフトとしては、こういったことを考えてEBSという300ユーザーまでのスイートを用意したのだろう。

 しかし、SBSであと10ユーザープラス(合計85ユーザー)して使いたいという企業もあるだろう。確かに、SBSで考えられているユーザー数を超えているため、75ユーザー以上は対応できないとマイクロソフト側はいうが、SBSを導入している小規模企業にとっては、あと10ユーザーを追加するために、EBSへのアップグレードパックを購入したり、まったく新たにOSやアプリケーションのライセンスを購入しなければならないのでは、コストも手間もかかってしまう。

 今回のSBS 2008では、厳密なライセンス管理サーバーは入っていないが、75ユーザー以上が利用するのはライセンス違反となる。また、SBS 2008 Standardは、1台のサーバーで動作するため、あまりユーザー数が増えるとサーバー自体に負荷がかかることになる。

 こういうハードウェア的な問題やライセンス的な問題はあるが、できれば、SBS 2008でも、75ユーザー以上のCALを発行することができれば、急場はしのぐことができるだろう。例えば、75ユーザーを超える場合は、増加するユーザー数に従って、CALの価格が上昇していくといった仕組みにして、EBSなどへのアップグレードを促進すればいい。

 できれば、SBSとEBSは、サポートするユーザー数の違いやサーバー数の違いだけで、用意されているサーバーアプリケーションが同じであれば、SBSからEBSへの移行を計画する場合でも、それほど運用が異なることもないだろう。マイクロソフトには、こういった施策を考えてほしい。


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  ・ 米Microsoft、中堅・中小企業向けサーバースイート「SBS 2008」「EBS 2008」(2008/11/07)


( 山本 雅史 )
2008/11/14 00:01

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