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取締役CFOの大矢俊樹氏(右)と、プロダクト事業部長の林森太郎氏(左)
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各部門を縦断する業務の効率化アップや、日本版SOX法への対応による内部統制強化を背景として、全社システムの最適化は待ったなしだ。そんな中、基幹系業務パッケージとして注目されているのがERPである。
Enterprise Watchでは2007年11月に、「失敗しないERP導入術」と題した特集を公開。ERP選びの第一歩ということで、導入の際の目的の明確化や成功事例を紹介した。今回は、その時に取材協力をいただいた株式会社クレオの基幹業務パッケージ「ZeeMシリーズ」の特色とそのメリット、および導入のポイントを探ってみた。
ZeeMシリーズについては、公認会計士でもあり最高財務責任者としてジャスダック上場企業クレオの内部統制対応に取り組むとともに、ZeeMシリーズのプロダクト戦略を推進する立場でもある取締役CFOの大矢俊樹氏と、プロダクト立ち上げ以来十数年にわたり、システム開発から多数の企業へのZeeM導入を成功させてきたプロダクト事業部長の林森太郎氏に話をうかがった。
■ 中堅・中小企業をメインに1700社以上の実績を誇る
クレオでは現在、「筆まめ」に代表されるコンシューマ向けパソコンソフトの開発と販売とともに、企業向けのシステム構築を行うシステムインテグレーション事業、会計や人事給与などの業務ソリューションと法人向けプロダクトを提供するZeeM事業、そしてモバイルコンテンツ・ソリューションを提供するモバイル事業と、4つのビジネスを展開している。
「ソフトウェアおよびシステム開発からスタートした当社が、コンシューマプロダクトを経て、ERPプロダクトビジネスを始めたのが1993年。法人向けのシステム構築のなかで、すべての企業がスクラッチ開発や自社オリジナルのシステム開発をする必要があるだろうか、一般的な業務に関してはあらかじめテンプレートみたいなものを展開してシステム構築をしていくほうがメリットがあるんじゃないだろうか。ERPの概念もそこから始まっているんですが、国内的にはわりと早い段階で参入した」と林氏は語る。
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ZeeM 会計ソフトの画面例
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当初、「CBMS」ブランドとしてリリースされたクレオのERPはUNIXをベースにし、1995年のVer.2からはプラットフォームがWindowsベースに進化。その後、新しい業務システム要件の高まりや新しいインフラへの対応といった環境の変化から、2004年12月にアプリケーションおよびインフラを完全リニューアルしたZeeMシリーズが誕生。15年にもおよぶ歴史の中で、導入された企業は1700社以上。その特長は、業務のプロも納得する「優れた操作性」と現場に適合する「柔軟な拡張性」、経営ニーズに応えられる「強力な経営支援機能」。この、「使いこなせる」ERPであるということに加えて、導入支援や保守サービスなどの企業環境の変化にも応える「サービス力」がZeeMシリーズの大きなアドバンテージとなっている。
■ 使いやすさとともにサービス体制の充実が導入と運用のカギを握る
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取締役CFOの大矢俊樹氏
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先にあげた4つの利点をもつZeeMシリーズは、中堅・中小企業にこそ導入がやさしいERPだというのが大きな特色である。代表的な統合ERPパッケージには、高い導入コスト、大がかりな業務改善の必要性の後に、必ずしも実務とマッチングしない危険性もはらむ、というイメージがつきまとうのではないか。
「前提条件として、中堅企業がより大きくなるためには組織力を高めなくてはいけない。では、その組織力はどうやって高めればいいか。経営者は経営方針を作り、そのもとで現場が各業務をキチンと回せることが重要になる。その手助けをして現場を支えるツールがITで、ITは使いこなすことに価値がある」と大矢氏は断じる。
各部門の効率化を図り、事業を遂行する人間が考えるゆとりを持つための道具であるシステムの導入について、大矢氏が重視するのはやはり「コスト」である。
「作業の効率化が目的なので、コストは最小限にしたい。初期コスト、ランニングコスト、システムへのコストというよりは、会社を運営していくコストを最小限にしたい。経理や人事などパッケージがカバーする部門は、四半期ごとの決算や年末調整や昇給・昇格など、季節的に非常に波がある業務。できるだけその波を、少ない人数で吸収してオペレーションするということを可能にしたい。あるいは、会社の規模が大きくなったり、M&Aなどで業種や業態が変わったりする場合でもシステムは変えたくない。システムの変更はベンダーに支払うコストはもちろん、社内的にも負荷がかかるため柔軟に対応できる形にしたい」と大矢氏は力説する。
そのため、ZeeMシリーズが目指したのは、見た目の操作性や使いやすさにこだわった現場が容易に作業できるパッケージであるとともに、短期間で導入を可能にするサービス体制の拡充である。
「パッケージを導入するにあたり、ユーザーの作業や負担は大変なものです。人事・経理だけではなく情報システム部など、社内調整の負荷も大きなコスト負担です。当社では、それらをいかに減らすかを念頭においた提案を行って、ユーザーの手間を省きながら短期間での導入を実現しています。最短で2カ月間くらい。導入に1年も2年もかけていると会社も変化する。システムが稼働し始めたとたんに合わない部分が出てくる。短期間でいちはやく使ってもらって、その過程で使いこなしていけば、ユーザーの変化に応じてクレオがサポートしていきます」と大矢氏。つまり、業務や経営の環境を機敏にとらえ、すばやくシステムを導入。その後は、環境の変化を見極めながらステップバイステップでのアプローチでERPを構築していく方法もあるのではないかという見解だ。場合によっては、必要な部分だけの小規模スタートも可能なのがZeeMシリーズの特長である。
「導入後、運用を開始してからの拡張や変更も容易なように、製品もサポート体制も十分に配慮されている」と大矢氏は、プロダクトだけにとどまらないクレオのサービス力を力説する。
■ 導入の目安は? 規模に応じて手ごろなパッケージも
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プロダクト事業部長の林森太郎氏
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「使いこなせる」ということをキーワードに、導入支援、業容や規模の変化による変更や拡張にも柔軟に応ずるというサポート力を両輪として中堅・中小企業に最適な提案を行うZeeMシリーズ。ERPパッケージの導入はまだ、という企業にとってタイミングはどのあたりになるのだろうか。
「ある規模から、経営者が会社のお金と人が見えなくなるレンジがある。人の管理でいえば100名を超えたあたり、お金の管理だと数十億といったところからスピーディにとらえられなくなる。あるいは、IPOを意識し始めるころ。そうなると、いくつかの業務を連携するERPを検討したほうがいい」と林氏はアドバイスする。
「社長レベルでコントロールできなくなったら早めに手を打ったほうがいい。無理をすればできなくはなくても、無理をし続けるメリットはまったくない。ZeeMには拡張性があるので、人の規模が1000~2000人、売上が2000~3000億の規模になっても耐えられる。会社が大きくなってからシステムを変更するのはそれだけで一大イベントだから、早め早めの段階で導入すれば後が楽」と大矢氏も賛同する。
導入するとなると億単位のイメージがあるERPパッケージだが、小さく導入することも可能なZeeMシリーズなら、会計のみの「IPOパック」などはサービス込みで500万程度から可能。それまで、単体業務パッケージを使っていた企業でも社内的な理解が得やすいのではないだろうか。
■ 進化し続ける情報システムとして「ZeeMワールド」を展開
導入しやすく、使いやすく、企業の環境変化にも柔軟に対応できる拡張性とカスタマーサービスを持つことで、中堅・中小企業を中心に1700社以上の導入実績をもつZeeMシリーズ。テンプレートベースのアプリケーションによる拡張ソリューションの数々も追加されており、ヤフー株式会社を始め、株式会社サイゼリヤ、株式会社ジャパネットたかたなどへの採用実績も誇っている。
さらに今後は、ワンストップソリューションとしてラインアップの拡充を図っていくという。
「ラインアップの拡充というのはひとつの方向性。販売管理、購買管理、原価管理など日本版SOX法を意識した会計に直結するデータを、パッケージとはいわないまでもテンプレート群を用意してユーザーのニーズに対応したい。さらには情報系のサービス。ポータルサイト的な、例えばSFAとかCRMとか情報システム部門が使えるような、システムの運用管理ができるポータルを展開して、情報系のサービスもワンストップで展開していきたい。モバイルのZeeMの中で、モバイルソリューションも勤怠管理などの場面で活用できるはず。クレオのあらゆるシナジーを生かして、ZeeMシリーズをワンストップソリューションとして脱皮させていきたい」と大矢氏は抱負を語る。
さらには、ZeeMブランドとしてアウトソーシングの受託やパッケージライセンスの提供以外にも、ASPやSaaSの提供も視野に入れているという。
「クレオといえば、コンシューマ向けでは『筆まめ』が抜群の認知度。対して、法人向けのサービス全般を『ZeeM』で総称したいと思っている。これまでのERPパッケージとしては『使いこなせるERPです』というのがキャッチフレーズだが、生涯顧客に向けたワンストップソリューソンの展開ということでは、『ZeeMワールド』というイメージ」と大矢氏。
業態や規模に応じた柔軟な運用が可能なERPパッケージとして、そして会計をコアにした情報システムとして進化し続けるZeeMシリーズ。今後その動向から目が離せそうもない。
■ URL
ZeeM
http://www.zeem.jp/
株式会社クレオ
http://www.creo.co.jp/
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( 前野 公彦 )
2008/05/19 12:00
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