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日本IBM・堀田常務執行役員、「ソフト事業はスピードアップで実績拡大へ」


 昨年7月、別会社となっていたLotus、Tivoliを統合し、DB2、WebSphereを含めた4つのブランドを揃えた日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)のソフトウェア事業部は、今年8月1日付けで日本ラショナルソフトウェアを加え5つのブランドを揃えた。ソフトウェア事業の指揮を執る常務執行役員の堀田一芙氏も、「ラショナル統合は従来にはないスピードで実現できた」と自信を見せる。日本IBM側の体制確立とともに、米国ではDB2がオラクルを抜いてデータベースシェアトップを獲得するなど、IBMブランドのソフトウェア事業の実績は着実にあがってきている。日本のソフトウェア事業部の実績はどうなっているのか、堀田氏に聞いた。


ユーザーの認知度が高まってきたソフトウェア事業

常務執行役員 ソフトウェア事業担当 堀田一芙氏
―2002年7月に堀田常務がソフトウェア事業部のトップになってから、1年3カ月たちました。ソフトウェア事業部の現状をどのように分析されていますか。

堀田氏
 昨年の7月の時点で別会社となっていたLotus、Tivoliを統合したわけですが、LotusについてはIBMが買収を行うと発表してから実に7年、Tivoliについても5年かけて会社の統合を実現したんです。ところが、今年8月1日に統合した日本ラショナルソフトウェアは、買収を発表してから8カ月と、従来にはない短時間に統合しているわけです。非常にスピード感があがっているわけですね。このスピード感は、ソフトウェア事業部の現状を象徴しているんじゃないかと思います。

 日本IBMがもつソフトウェアのキーワードのひとつがオープンですが、UNIX、Linux、Windowsとあらゆるプラットフォームへの対応も実現していますし、従来に比べて各製品の知名度もあがってきている。各ブランドの責任者も若返りをはかっていますし、変わってきていると思います。

 変わってきているといえば、ユーザーさんと話していても、昨年と今年では注目ポイントが変わってきていると思いますね。昨年は、「オラクルとDB2は、どこが、どう違うのか」といった競合との機能比較の質問が多かった。ところが今年は、「長期的なビジネスの変更に対して、日本IBMのミドルウェアはどう助けてくれるのか、どういう新しいサービスを作ることができるのか」といったことを質問されるCIOの方も増えてきました。そういった疑問に対し、回答をもっているのが日本IBMの強みだと思っています。


―確かにCIOのような立場にある人は、製品の機能ではなく、自社ビジネスにどういったメリットを与えてくれるのかを注視するようになったという指摘がありますね。

堀田氏
 そうです。経営者層になると、ビジネスへの価値をどれだけ与えてくれるのかを気にされます。だから、経営者層に対しては、日本IBMがソフトウェアのブランドに統合したというメッセージよりも、それらのソフトがビジネスに何をもたらすのかという点についてアピールする必要があります。

 その一方で、エンジニアに対しては、日本IBMのソフトウェアの技術的な価値、他社との違いといったことをもっとよく知ってもらう必要もある。特に自社開発から、パッケージへの依存度があがる傾向が出ていますから、エンジニアには各ブランドの製品を熟知してもらう必要があります。IBMブランドの製品に慣れたエンジニアを増やしていく必要がありますから、昨年は東京、今年は大阪にソフトウェアコンピテンシーセンターもオープンしましたし、システムインテグレーター、エンジニアの皆さんへのサポートは今後も強化していく方針です。


草の根活動の成果が出たWebSphere

―堀田常務から見て、各ブランドをどう評価しますか。

堀田氏
 WebSphereはダントツで合格点をあげていいと思います。大企業ユーザーばかりでなく、中小企業向けなど規模の大きなビジネスから、規模の小さなビジネスまで幅広く、きめ細かく市場を攻めている。これはJavaが未成熟だった3-4年前から、草の根のアピール活動を続けてきた成果だと思います。そういう意味では、前担当の大古の功績でもあるんですが、いつもの日本IBMらしからぬ(笑)地道な戦略があったからこそ、多くの開発者から支持を受けるブランドになったのだといえるでしょう。

 DB2については、直接的な競合であるオラクルと比べ、1000個のCPUでの動作など技術的に圧倒している部分はあるものの、「それはメインフレーム環境でやったから実現できたことなんじゃないか」とか、「DB2はIBM製ハードのユーザーのためのもの」とか、まだまだ理解されていない部分も少なくないというのが現状です。


―米国では、オラクルを抜いてシェアトップになったという調査会社の発表もありましたが。

堀田氏
 日本でも、もっとシェアをとっていいと思いますよ。しかし、日本は世界で一番オラクルの知名度が高い国ですからね。そこに迫るにはもう少し、地道な努力が必要というところでしょう。今年、ブランドマネージャの若返りをはかりましたから、これからどんどん攻めていくと思いますよ。


―その他のブランドはどうですか。

堀田氏
 Lotusはよく頑張ってますよ。当社の大和事業所のソフト開発エンジニアとの協力体制が整いましたので、ユーザーリクワイアメントにあわせてユーザーインターフェイス部分の変更をはかるといった作業ができるようになりましたので、ユーザー満足度をさらにあげていくことができると思っています。

 Tivoliについては、従来の監視ツールという位置づけから、アイデンティティ・マネージャというディレクトリの世界で利用されるものへと変化している最中です。今、企業システムについては、ウイルス騒ぎがあったり、ソフトウェアのアップグレードをどう管理して進めていくのかといった点に注目が集まっていますから、Tivoliにとっても追い風が吹いているといえる状況だと思います。

 ラショナルについては、社員が欠けることなく8カ月で統合を実現することができました。富士通、NECといったメーカーからも、「IBMブランドになったのだから、もうおつきあいしません」なんてことは言われることなく、「従来通りにおつきあいします」と言ってもらっていますし。

 今後については、これまでは直販で販売されることがほとんどだった製品ですが、今後はエンジニアを増員し、コンサルティングができるような人員も増やしていきたいと思います。ラショナルはJavaにも、.NETにも組み込みと3つ側面で利用できる開発ツールですから、もっとビジネスを拡大していくことができる可能性は十分にあると思っています。各ブランドともに、これからチャレンジしていくべきこともたくさんありますが、非情に前向きに新しいことに取り組んでいける状況ですよ。


エンジニア向けにインパクトのある製品を準備中

―そろそろ、シェアを含め、ソフトウェア事業における成果が求められる段階だと思いますが。

堀田氏
 売り上げを申し上げることはできませんが、着実に売り上げはあがっていますよ。

 確かにエンタープライズ事業は競争も激しく、その割にビジネス規模が小さい(笑)、といった側面もありますが、将来に新しい展望があります。例えば、グリッドコンピューティングへの対応については、「日本IBMという会社は、オラクルよりももっといいものが作れます」とかね(笑)。そういう技術的な将来展望があることは日本IBMならではの強みだと思っています。こうした強みが、ユーザーの皆さんにも理解してもらえるようになった。ソフトウェア事業は、かなりいい状態にあるといえるのではないでしょうか。


―大歳社長は、ソフトウェア事業部の成果についてどういう評価なんですか。

堀田氏
 大歳は厳しいからね、60点という評価ですよ。


―厳しい採点ですね。どの辺りがマイナスポイントとなっているんでしょう。

堀田氏
 もっと早くって思っているんではないですか。


―最後に、Enterprise Watchの読者へのメッセージがあれば、お願いします。

堀田氏
 実は今度、エンジニアの皆さんに非常にインパクトある製品を提供する準備をしています。これまでの常識を超えるような製品ですので、期待してください。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/


( 三浦 優子 )
2003/10/08 10:07

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