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富士通黒川社長、「2225(=富士通GO)で、元気で健康な企業を目指す」


 富士通が、黒川博昭社長体制となって目指すのは「元気で健康な富士通」。黒川社長が掲げる「お客様起点」の考え方の浸透と、2年連続となっている赤字体質からの脱却が、今期の大きな目標といえる。果たして、富士通は、どう変化しているのか。富士通の黒川社長にご登場をいただき、いまの富士通を聞いた。


お客様の本当の要求を知ることに尽力

代表取締役社長 黒川博昭氏
―社長就任から4カ月目に突入しました。就任会見で掲げた「元気で健康な富士通」はどこまで現実のものになっていますか。

黒川氏
 富士通は、少しずつ元気になってきていると思いますよ。財務体質も、当初計画に掲げた数字からは外れていませんから、健康という点でもまぁ、予定通りには進んでいる。ただ、私は、社長に就任した6月末から約9カ月で、1年分の仕事をやると宣言していますから(笑)、現場にはかなり無理をお願いしている。幹部、社員にお願いしているのは、利益を出すということ、有利子負債を圧縮するといった点もあるが、まずは受注を増やすことだと。そのためには、全社がお客様起点ということを徹底し、その視点で仕事をすることが必要なのです。私は入社して30年以上、現場でSEをやってきました。ここに私の原点があります。SEは、常にお客様との接点で仕事をしていますから、お客様が富士通になにを期待しているのか、富士通はなにをすればお客様は喜んでくれるのか、ということがわかるのです。しかも、現場は、抽象論が通じない。ところが富士通全体を見ると抽象論ばかりが先行したり、お客様の本当の要求がわかっていないということも実際にあります。ここは改善していかなくてはならない課題です。


―お客様の要求がわかっていない、という具体的な事例とは。

黒川氏
 例えば、ハードウェアを作っている人は、連続稼働がこれぐらいできます、あるいはダウンタイムはこれぐらいですといった数値を引っぱり出してくる。だが、現場は、もっと現実的な解を要求している。「データが失われたら困るんだ、それが回避できるならば年間に1-2分ダウンしても構わない」とさえ話すお客様もいる。たまにしか壊れないが、そこでデータが壊れてしまったら、お客様にとっては死活問題になる。極端な言い方になるが、なんど止まってもいいが、データが壊れない方が喜んでいただけるお客様もいらっしゃる。お客様が求める信頼性の本質はなにか、ということを知った上で設計、開発、製造をしなくてはならないのです。いま、「黒さんホームページ」というものを社内で立ち上げています。私が、お客様を訪問して話したこと、感じたことをここで記しています。これも、お客様起点の考え方を全社に徹底するための取り組みですね。


黒川社長にはビジョンがないのか?

―「黒さんホームページ」では、黒川社長のビジョンも明らかにするのですか。今年3月に社長に就任したNECの金杉社長は就任直後に具体的な数値を盛り込んだ事業計画を発表しましたし、5月に就任した日本HPの樋口社長も、11月には大幅な組織改革を予定しています。そろそろ黒川体制としての中期計画が発表されてもいいタイミングですね。

黒川氏
 私は「戦略がない」、「ビジョンがない」と社員からも指摘されるんですよ(笑)。しかし、富士通のビジョンは何かと聞かれたら、やはり、秋草(=現会長)が掲げた「エブリシング・オン・ザ・インターネット」なんです。IT、IP、サービスをコンバージェンスした形で提供しようという方針ですね。これは技術の方向性や、社会の流れを一緒にとらえた上で定義したもので、この方向には間違いがない。私は、社長就任の要請を受けた時に、秋草にこう言ったのです。「私は現場で事業を推進しますから、秋草さんは方向性を考えてください」と。グループを含めて16万人の社員を抱え、10万件以上のお客様をもつ企業ですから、一人で両方なんてできませんよ。それを、今年6月までは秋草が一人でやってきたわけですから。私は現場での業務執行と、数字をあげること、そして、お客様に喜んでいただけるためにはどうするかということを考える役目なのです。いまは、大幅な組織改革や新たな中期計画を発表するということは考えていません。とにかく、私は、徹底的にお客様に近づいていくことに力を注ぎます。


―秋草会長が、ソフト・サービス事業を主軸に掲げるといっていたのに対して、黒川社長は、プラットフォーム事業を重視するという発言をしていましたね。方針が大きく変わったように見えますが。

黒川氏
 ソフト・サービス事業は極めて重要な事業ドメインです。この戦略は正しい。しかし、これを推進するためには、プラットフォーム事業としての基盤が極めて重要になるということを示したのです。ですから、方針が大きく変わったというものではありません。ソフト・サービス事業を推進するためには、半導体事業や、サーバー、ペリフェラルなどのプラットフォーム事業の強みをしっかりと訴えなくてはならないと考えています。


―お客様に近づくには、どんなことをやりますか。

黒川氏
 富士通の営業、SEが、お客様の事業目標を主眼に入れた提案や活動を行うことを徹底します。お客様の事業目標を富士通が共有して、それに最適化したITをご提案をする。これまでは、ともすればプロダクトを納入することが主眼になってしまい、ITを事業にどう活用するかということが後回しになってしまったのではないか、という反省もあります。お客様の事業目標を達成するためには、SCMが必要だと考えれば、そのために取引先に対してどんな提案をすべきか、物流や生産はどう変えるべきか、そんなところまで踏み込んだご提案をすることが、富士通が目指すお客様起点の形です。


―成果主義の導入が社員の数値偏重型の傾向を助長し、むしろ、プロダクト納入先行の傾向を加速させたのではないでしょうか。

黒川氏
 確かに成果主義にはいくつかの問題点がありました。ひとつには、すべての社員にチャンスが平等に与えられていたのかという点。そして、もうひとつは、公平に評価されていたのか、という点です。両方のプロセスを見直すべきだと考えています。もともと成果主義は、売り上げや損益という数値に置き換えると評価しやすいですから、それに固執しすぎた嫌いがあった。例えば、システムを納期通りに納入したということは大変重要な要素ですが、これが従来の成果主義のなかではなかなか反映されなかった。ここを変えました。もちろん、いまでも数値目標は持っていますが、なんでもかんでも数値だけで判断する「数値偏重」のやり方はやめる方向ですすめています。


受注を増やせば、富士通全体が活気づく

―話は戻りますが、「元気になった」という評価はどのようにするのですか。

黒川氏
 健康という指針が通期の黒字や、有利子負債の圧縮だとすれば、元気の指針は受注です。受注で前年実績を超えること、関連会社も含めて受注を増やすことが重要です。受注が増えれば、当然、営業は活気づきますし、それによって、開発、生産、サービス部門も活気づく。品質もあげることができる。では、そのためになにをするか。何度も繰り返しになりますが、やはり顧客起点の考え方が重要です。それとスピードですね。私は、全国の工場などを見て回っているのですが、ディスクの事業が今年は好調なんです。ただ、話を聞くと、過去10年でディスクの事業で利益が出たのは1回だけ。それはいつかと聞くと、MRヘッドで先行したときなのです。ヘッドの開発のタイミングと、市場の変化や要求のタイミング、そしてそれにあわせた製品投入のタイミングがあって、収益が出る。そのためには、スピードが重要なんだと。こうした社内の成功事例をわかりやすい言葉や具体例をあげて共有することも大切です。


―上期の決算発表が今月末にあるので、このタイミングではなかなか言及しにくいとは思いますが、赤字の計画である上期の状況、そして一気に黒字転換を予定している下期の見通しはどうですか。

黒川氏
 上期は、ほぼ予定通りにすすんでいます。なかでも、海外事業が伸びていますね。その一方で、国内の金融市場、ネットワーク関連が厳しい状況にあります。一方、下期の見通しについては、まだなんともいえませんね。しかし、事業下期に集中するわけですから、ここでがんばらないとどうにもならない。いま、社内では「222」と書いて、富士通と呼ぶ計画が遂行されています。IAサーバーのPRIMERGYを2割増、UNIXサーバーのPRIMEPOWERを2割増、そしてストレージのETERNUSを2倍にしようと。そして、最近では、これに「5(=GO)」という数字をつけて、ミドルウェアのInterstageを2倍に、Systemwalkerを2割増にし、あわせて5つの製品を重点的に拡販しようという計画も走っている。こうした数値をしっかりと達成することが元気な富士通につながってくると考えています。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/


( 大河原 克行 )
2003/10/14 10:41

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