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日本オラクル新宅社長、「UNIXでも、Windowsでも、Linuxでも、選択肢増やすのがオラクルの使命」


 日本オラクルが攻めの姿勢で市場への訴求をはかっている。10月6日には、「Oracle 10g」の製品発表会を開催したが、実はこの製品が実際に発売になるのは来年(2004年)の1月29日。10月時点では価格など明らかになっていないことも多いものの、「3年ぶりにOracle World Tokyoを開催し、Oracle 10gの詳細についても少しずつ明らかにしていく」(代表取締役社長 新宅正明氏)と発売まで時間をかけて、市場を盛り上げていく計画だ。同社が早い時期から市場の盛り上げを狙うのはどういう戦略からなのか、新宅正明社長に聞いた。


今は来年度の需要を拡大するための仕掛け作りの段階

代表取締役社長 最高経営責任者 新宅正明氏
―昨年は厳しい市況が続いたエンタープライズ市場ですが…。

新宅氏
 ハード、ソフト、システム開発と細かく見ていけばバラツキはありますが、2年間続いたマイナス成長が底を打ったという感じはします。

 ただし、それでは即、2年前の状況に戻れるのかといえば決してそうではありません。新規のIT投資といっても、既存システムの更改する需要が出てきたというところで、企業が積極的に新規システム投資を再開するようになったわけではないんです。既存システムの更改、一部追加といった需要が出てきているというのが正直なところでしょう。それを考慮すれば、「エンタープライズシステムが底を打った」といっても、IT業界から積極的に、「陳腐化したシステムはこう変えていけばよりよいIT武装ができますよ」と道具立てしていってあげなければ市場は活性化しない。まあ、少し前の、「新規投資は一切駄目だ」と言われていた頃に比べれば、状況は好転しているわけですが。


―日本オラクルのビジネスに限ってみると、現在の状況はいかがですか。

新宅氏
 ソフト事業については、昨年後半から底を打ったと考えています。データベース事業については、前年比横ばいから増加に転じていますし、新規投資についてもようやく需要が再開したというところです。


―すでに、来年1月発売の「Oracle 10g」の発表会が開催されましたが。

新宅氏
 Oracle 10gの需要が本格化するのは来年度からだと考えています。今年度は来年度、需要を拡大していくための仕掛け作りをしている段階です。

 とはいえ、製品や当社からのメッセージという点では、オラクルという企業がきちんとしたビジョンとテクノロジーをもっていることで、ユーザーの皆さんには安心感をもってもらうことができると考えています。2000年問題の時期にシステム投資をしたユーザーさんにとっては、2005年、2006年がシステム更改の時期にあたりますし、ちょうどいいタイミングで非常に強力な製品をリリースすることができると考えています。


―データベース市場では、日本IBMの「DB2」が、オラクルの競合としてアピールを強めていますが。

新宅氏
 DB2に攻められているということはまったく感じていないですねえ。パートナーさんの多くが「DB2を売っても儲からない」と、ビジネスから足を洗ったという話も聞きますし、わかりやすいところでいえば、IBMのUNIX OSであるAIXベースの当社製品のシェアが落ちたという話も聞かない。もし、オラクルの売れ行きが落ちているということであれば、当然AIXベースでのビジネスに影響が出ているでしょう。12月に開催する「Oracle World Tokyo」にも日本IBMさんには出展いただきますし、決して日本でのオラクルの売れ行きが落ちているということはないと思いますね。


―日本オラクルという会社の歴史からいって、ライバルが強い時期ほどアピールが強力になる傾向があるので、今回は対日本IBMということでアピールが強化されたのかと思いましたが。

新宅氏
 いや、むしろきちんとウォッチしていかなければいけないのは、.NETだったり、テクノロジーの進化の行方といったところだと思っています。

 マイクロソフト環境においても、Oracle 10gはきちんと動くというところがベースになって、テクノロジーとしてはこんな進化を遂げていきますよということをアピールしていくことをユーザーは望んでいると思います。


オラクルを選んでおけば、プラットフォームなどその後の選択肢は何でもある

―10月6日に開催されたOracle 10gの発表会でも、Windows環境での動作という点を強調していましたね。

新宅氏
 IAサーバーにおけるOSのシェアを見れば明らかですが、Windowsは非常に伸びていますよ。もちろん、Linuxにじわじわと変えていく努力は続けていきますが、Windowsベースのデータベース市場の規模が大きいことは間違いない。しかも、Windowsベースのデータベースでは、SQL Server、Access、フリーソフトとライバルは多い。そういう競合製品から、オラクルにシフトしてもらって、さらにLinuxにもシフトしてもらうという試みもしていきたいですが、ユーザーも「次のシステムをどうするのか」、検討している最中だと思うんです。おそらく、「システムすべてWindowsで十分」というユーザーばかりでなく、Javaも含め、さまざまな選択肢の中から選ぶというのが一般的でしょう。

 オラクルを選んでもらえれば、その後の選択肢は何でもありです。エンタープライズマーケットにおいては、1社のベンダーが成功すれば全部うまくいくということはあり得ない。複数の企業の成功があってこそ、ユーザーにとっては使いやすいシステムが実現するわけです。


―これまでオラクルのプラットフォームといえば、UNIXという印象が強かったわけですが、WindowsとUNIXのどちらが本命だと考えますか。

新宅氏
 現在の当社のビジネスの7割がUNIXベースのものです。ユーザーが最も多いのもUNIXです。Oracle 10gについても、一番最初に出てくるのはUNIXベースのシステムです。

 しかし、5年、10年というスパンで考えると、現在のUNIXのシェアが下がるのは間違いないでしょう。オラクルとしては、UNIXプラットフォームのユーザーに対しても、次の選択肢としてUNIX以外のものにも対応するというのが重要なわけです。次の選択肢がないというのは、ユーザーにとっては最悪のシナリオですから。

 現在のUNIXベースのユーザーが、明日から急に他のプラットフォームに変わるということはあり得ないでしょう。しかし、新規にシステムを導入するというユーザーにはUNIXだけでなく、Windows、Linuxと複数の選択肢を用意する必要があります。

 Linuxだってそうでしょう? 「まだ、駄目ですね」とベンダー側が言い続けていたら、ユーザーだってLinuxという選択をしなくなりますよ。日本オラクルがきちんとLinuxにコミットすることで、ユーザーにもLinuxへの信頼感が生まれるわけです。


―Windowsと共に、Linux需要も伸びているのですか。

新宅氏
 着実に伸びていますよ。当社の子会社であるミラクル・リナックスについても、2年連続赤字から、3年目の今年は黒字化を実現していますし。まだ大規模なものではないですが、Linuxでも収益をあげることができることは実証できるようになってきました。


外資系・日本企業の両方のよさを生かせるのが日本オラクル

―一方、シェアアップを公言していたアプリケーションサーバー事業についてはどうでしょうか。

新宅氏
 「2003年はアプリケーションサーバー事業を立ち上げます」と昨年からアピールしてきたわけですが、確かに昨年に比べて売り上げは倍増しています。BEAのアプリケーションサーバーから、オラクル製品への変更を促す、スイッチングプログラムも順調に伸びています。

 その一方で、.NETだけでなく、Javaベースの成功事例を作っていく必要もあると思っています。


―Javaの成功事例を作るという点でいえば、日本BEAは競合ベンダーではなく、同じJavaを推進する仲間同士にもなってくるわけですね。

新宅氏
 (笑)日本オラクルは、握手をしながらけんかをするというのも慣れていますから。ただ、これは当社だけではなく、マイクロソフトからOracle 10gに対してコミットメントをもらうということもあるわけですからね。


―ところで、日本オラクルは、外資系ベンダーでありながら、日本で株式を上場する企業でもある。外資系ベンダーの中では特殊な位置づけにある会社なわけですが。

新宅氏
 外資系企業、日本企業、両方のよさを生かすことができるのが、日本オラクルだと思っています。

 日本企業としては、これまで培ったアセットを生かして中国に拠点を作り、中国進出している日本企業を、日本法人のスタッフが支援するといったサービスを提供できます。中国人で日本企業向けにビジネスをしたいという人に対して、日本のORACLE MASTERの資格をとってもらって、日本企業向けビジネスを支援するといった試みもできる。

 その一方で、テクノロジーとしてはグローバルな企業だからこそできることもあるわけです。是非、Enterprise Watchの読者の皆さんにも、「グローバルな視野を持っていきましょう」とアピールしたいですね。ORACLE MASTERの資格取得者が日本に10万人にいるという事実を、「10万人しかいない資格だから、十分に役に立つ」と考えるのか、この資格取得者の数を、ワールドワイドで考えるとどれくらいの人数がいるのか、自分はその中でどの程度のレベルなのかと視野を広げて考えるのとでは、大きく違うと思うのです。

 2005年には市場はどう変わっているのか、2010年はどうなっているのか。2010年まではあと7年ですが、2005年まではあと2年しかない。ユーザーでも、サプライヤーでも、マーケットを大きく揺り動かすのは一人一人の力です。そのことを認識してもらいたいですね。



URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/


( 三浦 優子 )
2003/10/15 09:26

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